著者
杉田 倫明
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
Geographical review of Japan, Series B (ISSN:02896001)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.74-82, 1985-04-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

森林蒸発散に影響を与える因子について,夏季のアカマツ林における熱収支・水収支の観測結果にもとづいて議論した。潜熱フラックスは,渦相関・熱収支法によって得た。樹冠の濡れの程度は,樹冠に付けたウェットネスインディケーターによって求めた。また,遮断量はスルーフォール,樹幹流,林外雨量の値から算出した。さらに,アカマツ林と隣接した牧草地の蒸発散量をアカマツ林の対照データとして利用した。これらのデータの解析の結果,以下の結論が得られた。1)濡れた樹冠の蒸発散速度は,乾いた樹冠のそれと比して,30%程度大きい。したがって,短い時間スケールでは樹冠の濡れは蒸発散量決定における重要な因子である。2)日蒸発散量に対しては,樹冠の濡れは重要な因子ではない。これは,一日中樹冠が濡れていることがまれだからである。3)アカマツ林の日蒸発散量は草地のそれより平均して35%多い。この差は,基本的には両者の有効エネルギーの差に起因する。
著者
青木 正敏 千村 隆宏 石井 健一 開發 一郎 倉内 隆 虫明 功臣 仲江川 敏之 大手 信人 ポルサン パンヤ セマー スティーブ 杉田 倫明 田中 克典 塚本 修 安成 哲三
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.39-60, 1998-01-05
参考文献数
23
被引用文献数
6 7

アジアモンスーンエネルギー水循環観測研究計画(GAME)の予備的な観測が,地表面フラックスと土壌水分を測定するためのプロトタイプ自動気象ステーションの性能の評価といくつかのフラックス測定法の相互比較を目的に1996年の夏,タイ国スコタイ付近において行われた.使用された3つの観測システムで得られたデータに渦相関法,バンドパスコバリアンス法,ボーエン比法,プロファイル法,そしてバルク法を適用することで地表面フラックスが得られた.乱流統計量やフラックスの相互比較の結果,統計量そのものは正確に得られているものの,潜熱フラックス評価のためのバンドパスコバリアンス法のアルゴリズムには改良の余地があることが示された.また,熱収支的な方法を利用する場合,水田の水体の貯熱量変化の正確な評価が重要であることがわかった.全体としてステーションは短期間の高温度高湿度下の運用に満足のいくものであったが,長期運用のためにはこの地域特有の強い雨に対する備えが必要であることがわかった.
著者
杉田 倫明
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

霞ヶ浦を対象に,水面フラックスを5年間にわたって求め,水面の交換過程のパラメタリゼーションを行った.結果として得られたバルク係数は,中~高風速域では既存の結果と同様であったが,弱風時には,風速減少とともに係数が大きくなる結果が得られた.さらに,蒸発量の空間分布を湖面温度と霞ヶ浦周辺の気象観測所の気象データから推定した.湖心部で蒸発量が多く,湖岸は小さいことが分かった.湖心の強風域が主要因であった.
著者
樋口 篤志 近藤 昭彦 杉田 倫明 機志 新吉
出版者
筑波大学
雑誌
筑波大学農林技術センター研究報告 (ISSN:09153926)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.19-32, 1999-03

水田は農業的な側面のみだけではなく、モンスーンアジアを代表する土地被覆という観点から、水文学的・気候気象学的側面でも重要な土地被覆である。また、リモートセンシング技術は非接触で地表面の状態を連続的にモニターできる唯一のツールである。本研究では水田の大気-陸面過程のより深い理解のために、地表面フラックスと分光反射特性の連続的な観測を行った。地表面フラックスはボーエン比熱収支法を用いて算出し、分光反射特性に関しては近赤外波長域まで撮影できるビデオカメラを用いて"面"的な観測を行った。結果は以下に要約される; 1)地表面フラックスは、日変化レベルでは成長期には有効エネルギーの多くを水体の貯熱量変化に使われ、成長後はそのほとんどが顕熱に消費されていた。 2)地表面フラックスの季節変化では、稲キャノビーの成長期に有効エネルギー(Qn=Rn-G:RnとGはそれぞれ正味放射、地中熱流量)中、顕熱(IE)に消費される割合(IE/Qn)に明確な上昇傾向がみられ、"Ageing effect"(植物体の成長期の違いによって気孔コンダクタンスが変化する)に伴う、植物生理学的な要因が影響していると考えられた。 3)分光反射特性の季節変化は、近赤外波長域のそれはアルベドのそれに類似し、赤色域は成長初期に減少、収穫期に増加傾向が認められた。植生指標の季節変化は稲の活性度を比較的反映していた。