著者
福田 直也 小林-吉中 美湖 鵜生川 雅巳 高柳 謙治 佐瀬 勘紀
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.509-516, 2002-07-15
参考文献数
19
被引用文献数
5 17

数種人工光源の光質がペチュニアの生育に及ぼす影響について, 光強度, 照射期間などの関連する要因とともに評価した.環境制御室に設置したメタルハライドランプ(MH), 高圧ナトリウムランプ(HPS)および青色光ランプ(B)下でわい性中輪咲ペチュニア'バカラブルーピコティ'を栽培し, 生育の比較を行った.実験では, 光質, 光強度および照射期間などの光環境要因と, 各要因との相互作用が生育に及ぼす影響を調査した.さらに, GA<SUB>3</SUB>およびウニコナゾール処理を行い, 光質がペチュニアの生育に及ぼす影響とジベレリンとの関連について考察した.1. MHやB下に比べて, HPS下で栽培したペチュニアは, 草姿がわい化する傾向があった.HPS下の最大側枝長はMHやB下よりも約30%わい化し, 節間長も短くなった.HPS下において草姿がわい化したのは, HPSの赤色/遠赤色光比(R/FR)が高いことから, フィトクロム反応が原因であると考えられる.2. MHおよびHPSの両光源下では, 光強度が低いほど草丈が高くなった.しかし, いずれの光強度においても, HPS下で生育した植物体の草丈はMHよりも低かった.3. 生育期間中に植物体をMHからHPS下に移動したところ, 草丈の伸長速度が低下した, このことから, ペチュニアの草丈は生育後半に受けた光質の影響を大きく受けること, ならびにペチュニアの草丈に及ぼす人工光源の光質の影響には残効性がないことが示された.4. HPS下の植物体ではGA<SUB>3</SUB>処理により草丈の著しい増加が認められたが, ウニコナゾール処理による茎伸長抑制効果はほとんど観察されなかった.以上のことから, R/FRが高い光環境下では, 内生ジベレリン濃度が低下し, その結果として草丈が短くなる可能性が示唆された.
著者
斎藤 岳士 福田 直也 西村 繁夫
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.415-419, 2006 (Released:2006-12-27)
参考文献数
20
被引用文献数
2 9

NFTにおける2段摘心トマト栽培において,塩ストレス処理時期,栽植密度および果房直下の側枝利用を総合的に組み合わせた実験を行い,収量ならびに品質に及ぼす影響について評価した.塩ストレス処理は,開花期から行なうと,果実糖度は増加するものの平均果実重量が40%程度減少した.一方,第1花房開花20日後の果実肥大中後期から行うことにより,果実糖度は9.0前後に増加するが,果実肥大抑制は30%程度に抑えられた.高栽植密度条件下(約950株・a−1)では,低栽植密度(約670株・a−1)と比較して,果実品質に大きな影響を及ぼさずに果実収量が34%増加した.果房直下の側枝利用によって,塩ストレス処理下においても,栽植密度にかかわらず糖度を向上させる効果があることが示された.以上の結果から,NFTにおける2段摘心トマトでこれらの栽培技術を総合的に組み合わせることが高糖度トマト生産に有効であることが示された.
著者
池田 英男 田上 恵子 福田 直也
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.839-844, 1996 (Released:2008-05-15)
参考文献数
15
被引用文献数
2

培養液を流動させない水耕法である培養液静置法(パッシブ水耕) は, 栽培中の培養液管理が不要とされるが, 栽培法は十分には確立していない、本研究においては, 栽培装置を地表面下に設置して春, 秋にそれぞれ施与培養液の濃度を変えてメロンを栽培し, 好適培養液濃度を検討した.メロンは本栽培法で良く生育し, 十分に大きな果実が収穫できたが, メロン植物体の生育や果実の収量,品質からみた好適培養液の濃度は, 栽培時期によって異なった. 春作では園試処方標準濃度の3倍でのみ高糖度の果実が得られたが, 秋作では培養液の濃度の影響は少なかった. 栽培装置を地表面下に設置したために, 根圏の温度は気温の高くなる夏では比較的低く,冬は逆にあまり低下せず, 日変化も少なかった. 本装置は, 簡易な水耕法として, メロン生産には有効であると考えられた.
著者
斎藤 岳士 福田 直也 西村 繁夫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.392-398, 2006-09-15
参考文献数
30
被引用文献数
8

NFTを用いた養液栽培トマトにおいて,異なる塩ストレスの処理開始時期,処理期間および栽植密度が,義液栽培トマトの果実収量ならびに果実品質に及ぼす影響について調査した.塩ストレス処理は,培養液にNaClを添加し,ECを8.0dS・m^<-1>に調節することによって行った.NaClを添加しない対照区は,EC 2.5dS・m^<-1>とした.平均果実重量は,塩ストレス処理を行わなかった場合と比較して,塩ストレス処理を開花後の果実生育の全期間に行うと約49%,前半のみの処理で約73%,後半のみの処理で約63%となった.可溶性固形物含量(Brix%)は,対照区で6.1,全期間処理で9.7,前期処理で7.9,後期処理で8.6となった.尻腐れ果発生率は,全期間処理と前期処理で30%以上であったのに対して,対照区では0%,後期処理では16%であった.果実生育期の中後半から塩ストレス処理を開始することで,対照区より品質が向上し,全期間処理より収量が増加し,尻腐れ果発生率も低くなった.また,塩ストレス処理下では,低栽植密度区(1m^2当たり6.7個体)と比較して中栽植密度区(1m^2当たり8.3個体),高栽植密度区(1m^2当たり9.5個体)において大きな品質低下を伴わずに,単位面積あたりの収量が増加した.
著者
片桐 孝志 軽部 潔 菅原 慶子 福田 直也
出版者
筑波大学
雑誌
筑波大学農林技術センター研究報告 (ISSN:09153926)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-10, 2000-03

茨城県が育成したイチゴ新品種'はやみのり'を供試材料にロックウール栽培を行い、'女峰'を標準品種として比較しながら、その生育および収量特性を調査し、養液栽培における適応性を検討した。両品種とも1997年9月18日に非循環型ロックウール栽培システムのスラブ上に定植した。定植後は大塚ハウス水耕用培養液A処方(EC=0.6~1.2dS/m)をかん液した。培養液はマイクロチューブにより与え、マイクロチューブの数により2段階の給液量を設定した。草勢は、気温の高くなる春期には、'はやみのり'が旺盛であった。ロックウール栽培法で'はやみのり'は、'女峰'と比較して開花、収穫開始が早く、早期収量、総収量、一果重ともに上回ったが、収量の時期別変動が大きかった。給液量を2倍にした場合、さらに開花、収穫開始は早まり、早期収量、総収量ともに上回ったものの、収穫の中休み現象を生じ、さらに収量の変動が大きくなった。また、'女峰'では見られなかった裂果が、給液量には関係なく多く発生した。以上の結果から、'はやみのり'は'女峰'と比較して、特に早期収量が多い点や、一果重が大きい点で、収益性からも有望な品種と思われる。しかし、収量に時期的な変動が見られ、'女峰'より安定性は見られなかった。また、給液量の増加により生育はより早まり、収量も増加したが、収穫の中休みが生じたことから、給液量の調節を十分に行う必要がある。さらに'はやみのり'には裂果の症状が多く見られ、品質的にも問題が残り、今後さらに、培養液管理、栽培方法などについて調査研究することが必要と思われる。