著者
松田 君彦 林 紋子
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要 (ISSN:09175865)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.149-156, 2005

子どもが叱られる場面だけに注目するのではなく、その前後、つまり、叱られる様な事態に至った経緯、更には、叱られた子どもが示した反応に対して大人がどのように応答することが望ましいかということに焦点を当てた研究を行った。その結果、叱られるような事態を招いた原因に関する認知が明確に現れるのは児童後期であること、子どもが自己責任を感じている場合では、親の叱り方にかかわらず、受諾反応が多く、また親の叱りの背景に肯定的な信念を感じ取る傾向が強いことが明らかになった。
著者
八田 有子 八田 明夫
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要 (ISSN:09175865)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.37-50, 2010

筆者等は,中国の都市部や周辺の小都市や農村において環境問題の存在を散見してきた。近年,中国において環境教育に関する取り組みが進んでいることを示す文献(Yu & Qing, 2005, etc.)が,多くなってきたため,中国の環境政策や環境教育の論文を紹介し,環境教育への取り組みの現状を明らかにすることにした。1973年,中国は第一回国家環境保護会議を開催した。中国で環境教育が本格的に取り上げられたのは80年代初めごろからであり,1983年の「第2回全国環境保護大会」では環境保護が中国の基本的国策であることを示した。1992年の「第1回全国教育環境会議」では,「教育が環境保全の原点である」と指摘した。1993年の新学期からは環境教育が独立教科として,9年生義務教育のカリキュラムに導入された。中国政府は1997年に「計画生育及び環境保護会議」で環境保護が中国の国策であることをアピールし,同じ年に刑法の中に「環境破壊及び資源保護罪」という罰則も追加した2000年より全国緑色学校の創建に関する活動が活発になった。2003年11月に《中小学環境教育実施指南(試行)》が出された。2005年12月,全国人民大会常任委員会40回委員長会議は,循環経済法を立法計画に加え入れた。2007年6月,国務院は,「省エネ・汚染物質排出削減総合業務実施案に係る通知」を出し,「節能減排」の徹底を示した。この通知は,立ち遅れた生産設備の淘汰,責任体制と問責制度を明確にした。地方政府の責任者の成績評価に「一票否決」制を導入した。「一票否決」とは,ほかの成績が高くとも「節能減排」の目標一つが達成できていなければその指導者・幹部の評価は不合格になるというものである。2007年に江蘇省では省級の「緑色学校」として165校を認定している。緑色学校に認定される基準を紹介したが,非常に厳しい基準であることがわかる。こうした認定制度は,学校に対して組織的で持続性のある環境教育の実行を求めており,中国が本気で環境教育に取り組んでいることを理解できる。急速に工業化した地域で大気や水の汚染が進む中で,学校関係者が環境教育の必要性を感じ,活発に緑色学校を目指すようになった。本論文では,こうした内容を紹介し中国の環境教育がじわじわと大きなうねりとなってきていることを紹介した。The authors have noticed many environmental problems in urban, suburban, and rural districts in China. In recent years, several reports show the progress of environmental education in China (Yu & Qing, 2005, etc.), so we disscuss Chinese environmental policies, reports on environmental education, and the current circumstances of China's approach to environmental education. The Chinese government called The First National Environmental Protection Meeting in 1973. They proclaimed environmental protection as one of China's national policies at the Second National Environmental Protection Meeting in 1983. It was in the early 1980's that environmental education began. In 1990, they announced environmental protection at the First National Environment and Education Meeting. Environmental Education became part of the curriculum of the nineyear compulsory education course as a subject, and the Chinese government set penalties for environmental destruction. In 2000's at school in China, "Green School" activities started and have been prosperous. In 2003, an epoch-making guidance on environmental education was proclaimed for junior high school and elementary school students. In 2005, the Recycling Economy Law was added to the legislative plan by the National People's Congress Standing Committee. In 2007, the State Council addressed the policyof "Saving Energy and Reducing Pollutant" and announced the elimination of old-fashioned production lines, responsibility declaration, and a new system of administrative censure. "One Issue Rejection System" is a strict law in which civil servants can refuse a leader who cannot meet the environmental goal even if other work is good. In Jiangsu, 165 schools were authorized as "green schools" in 2007. We discuss the standard authorized for green schools, but understand that it is a very severe standard. Such an authorization system demands the practice of the durable environmental education in schools, and we understand that China wrestles with environmental education. People concerned with schools realized the necessity of environmental education through the pollution in rapidly industrializing areas. This article discuss the progress in Chinese environmental education.
著者
丸山 敦夫 晴永 清道 竹下 公博 MARUYAMA Atsuo HARUNAGA Kiyomichi TAKESHITA Kimihiro
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要 (ISSN:09175865)
巻号頁・発行日
pp.87-95, 2007

離島複式学級における体育授業の特徴を理解する基礎資料を得るため、複式学級の3・4年生の児童を対象に、体格・体力を測定すると共に各児童の体育授業の運動量を把握した。さらに、1年後、4・5年生になった同じ児童を対象に体格・体力や体育授業の運動量を縦断的に追跡し測定し、加えて、教師に体育授業の課題を調査した。その結果は以下の通りである。 1)複式学級の児童の形態発育は、身長の伸びに対して筋肉や骨などの除脂肪体重の充実度が4-5年生より3-4年生で低い傾向であり、個人差が非常に大きかった。 2)離島の複式学級および一般学級の児童たちの有酸素能力は同年代の児童に比べて高かった。しかし、複式学級では3-4年生の有酸素能力の伸びはほとんどなかった。この学年では体格と筋力や持久力との不均衡が体力低下につながったと思われる。これは個人的な発育と体力の関係であろう。 3)5日間の学校生活活動量を心拍数で測定した結果、体育の授業や昼休み時間において心拍数は平均で130拍/分ほどになった。06年度の中程度および比較的高い運動強度別出現時間や割合が05年と比較して少なくなった。運動量低下は教材選択に依存するだろう。 4)体育授業の課題をアンケート調査した結果、学年差や体力差で児童の序列ができあがり、少人数であるため競争心の発揚や発育差による指導の視点について課題が多かった。 以上の結果から、複式学級での体格・体力の実態と学校生活活動量や体育授業の運動量を把握し、今後の複式学級における体育授業の展開に工夫していかなければいけない内容を探ることができた。