著者
大谷 泰照 河合 忠仁 竹内 慶子 林 桂子 平尾 節子
出版者
一般社団法人大学英語教育学会
雑誌
JACET全国大会要綱
巻号頁・発行日
vol.40, pp.246-247, 2001-09-10

JACET関西支部「海外の外国語教育研究会」は、諸外国・諸地域の外国語教育の現状や政策を調査研究し、国際的な視点から、日本の外国語教育のあり方を点検し、新しい時代の展望をきり拓く目的をもって発足した。その後約10年を経過した1999年、蓄積された研究成果のうち、東アジア地域 (韓国、中国、香港、台湾、マレーシア) を取り上げ、それらの地域の外国語教育政策を検討することによって、日本の外国語教育の問題点を指摘した^※。これらの地域の多くは、地理的にも日本に近く、言語・文化的にも日本と多くの類似点をもつ。それらの地域との対比を通じて、日本の外国語教育のあり方と数々の問題点が浮き彫りにされた。現在では、研究の焦点を欧米に移し、いわゆる「先進諸国」の外国語教育に注目している。今日のグローバル化の進む社会では、一見、外国語教育が不要に見える「先進国」でさえも、自国語の運用能力だけでは不充分であるという事実に直面しているからである。本シンポジウムでは、連合各国の言語を公用語とし、母語以外の言語教育を早期から開始しようとしているヨーロッパ連合 (EU)、その一メンバーであり高い英語運用能力を誇るオランダ、長年にわたり外国語に関心を示そうとしなかった英語本国のイングランド、国を二分する緊迫した言語問題をかかえるカナダなどの国々を取り上げ、その言語教育政策、教育制度の特徴などをふまえて、特に最近の顕著な傾向である「早期外国語教育」の取り組みに焦点を当てながら、日本の外国語教育政策に与える示唆を考える。
著者
田中 慎也 岡戸 浩子 河原 俊昭 中尾 正史 長谷川 瑞穂 藤田 剛正 松原 好次 三好 重仁
出版者
一般社団法人大学英語教育学会
雑誌
JACET全国大会要綱
巻号頁・発行日
vol.39, pp.50-51, 2000-11-01

21世紀を迎えるに当たり、日本社会も国際化が進み、多言語社会へと徐々に進みつつあるように思われる。このような時代の中で、さまざまな言語問題が顕在化している。それにつれて、国際化時代の言語教育のあり方や、多言語社会における言語のあり方に関して、さまざまな議論が行われるようになった。具体的には、小学校から英語を導入すべきかどうか、英語教育の中心をコミュニケーション重視の授業にすべきかどうか、大学教育で第2外国語は必要かどうか、新しい移民(ニューカマー)への日本語教育・母語保持教育はどうあるべきか、などである。また、最近では、「21世紀日本の構想」懇談会による「英語の第2公用語化」の提唱がマスコミをにぎわしている。これらの国際化と多言語社会化から生じてきた問題は、日本にとっては、比較的近年になって顕著になった問題であるが、世界の各地では、すでにこの問題に取り組んできている国が多い。日本社会が、言語問題の解決の手がかりを得ようとするときは、世界各地における言語の実態と言語政策を探ることで、有益なヒントを得られると思われる。例えば、アメリカにおける先住民族、その母語保持の活動は、日本における先住民族の母語維持活動にもヒントを与えるに違いない。また、カナダのimmersion planは、日本でも多大な関心をよび、その研究者も多い。EU諸国は、世界語として強力な英語と自国の言語を、ほどよくバランスさせようと苦慮している。また、EUには、中欧・東欧からの移民をはじめとして、移民が増加しているが、彼らの言語がどのように取り扱われているか興味深い。アジアには、多言語国家が多いが、フィリピンでは、英語とフィリピノ語(タガログ語)の2言語政策が推進されており、シンガポールでは、英語公用語政策、Speak Mandarin運動などがあり、それぞれ注目されている。オセアニアでは、移民と先住民族の言語を、優勢な英語と、どのように共存させてゆくか、さまざまな試みがなされている。また、多言語国家がほとんどを占めるアフリカにおいても、さまざまな言語政策がおこなわれているが、従来の日本では、ほとんど関心をよぶことはなかった。しかし、アフリカでは、多民族国家の求心力を保つために、各言語に配慮した言語政策が欠かせないと認識されており、さまざまな工夫がなされていて、我々にとって参考になる点も多い。日本では、時代の要請に応えた言語対策が打ち出される必要性があるが、これら、世界の各国で行われている言語政策はおおいに参考になるだろう。
著者
林 規生
出版者
一般社団法人大学英語教育学会
雑誌
JACET全国大会要綱
巻号頁・発行日
vol.35, pp.152-155, 1996-09-21

英語学習は生涯学習の観点でとらえると, 初期学習段階から年齢推移にともなう英語能力の変化は, 学習者はもとより, 英語教育に携わる者にとっては興味のある重要な問題である。財団法人日本英語検定協会が主催する実用英語技能検定試験と児童英検の被験者は, この問題に関する貴重なデータを供給する。項目反応理論(Item Response Theory) に基づく垂直等化(vertical equating) が1歳から70歳までの日本人受験者約46, 000名に応用された。項目反応理論に基づき作成された児童英検と, 異なる級それぞれ独立に標準化が行われている実用英語技能検定試験は, 項目反応モデルにより結合され, 同じ単位と原点を持つ統合された尺度が確立された。それぞれの被験者は, 児童英検と実用英語技能検定試験の成績により, この共通尺度上に位置づけることが可能となった。共通尺度上で評価された各被験者の成績は, 各年齢段階ごとに集計され, 年齢推移に伴う一つの英語能力成長曲線として描かれた。この曲線は日本人英語学習者の幼児期から高齢期までの, 平均的英語能力の変化の様子を示した。
著者
中林 真佐男 乾 展子
出版者
一般社団法人大学英語教育学会
雑誌
JACET全国大会要綱
巻号頁・発行日
vol.43, pp.83-84, 2004-09-01

一般的にmotivationは教育概論において「動機づけ」と訳されているが、「動物の行動を喚起し、ある目標へ方向づけ、維持する課程」と定義されている。この「動機づけ」を児童生徒に対して如何に図るかは授業展開上の重要課題である。佐藤(2003)は「学習の動機づけには、競争や賞罰などの外発的動機づけと学習自体に興味や面白さを感じさせる内発的動機づけがある。学習意欲を高めるためにはこのうち内発的動機づけが重要であるが、児童生徒の興味や面白さに個人差があり、また教育価値をともなわないこともあるので、常に内発的動機づけを重くみることは望ましくない。」と指摘している。関西外国語大学短期大学部の約半数以上の学生は、海外留学、4年制大学(他大学を含む)への編入や専門学校への進学を希望している。編入の審査にあたってTOEFLスコアも参考にされるので、学生の関心が極めて高い。また、1年生の成績も条件となるために、編入という内発的動機づけがあるので学習態度は良好であり意欲的にクラスに参加している。果たして、編入希望学生(以下編入)と就職希望学生(以下その他)との間に、英語学習において動機づけの差はあるのか興味深い課題である。英語の四技能を習得する「コンプリヘンシブ・イングリッシュ」を受講する64名の短大生を被験者として、TOEFLではなく使用テキストの「TOEIC模擬ミニテスト」を使い編入とその他に分けてmotivation learning(動機づけ学習)の成果を調査した。2003年度前期末にpre-testを実施し、約5ヶ月後の後期末にpost-testを行った。それぞれ模擬ミニテスト(1)と(2)を使ったが、問題数は同じで内容は違うものであった。この間に、編入希望の多い2クラスには「TOEIC頻出英単語」(250語)のテストを実施したが、就職希望の多いクラスには実施しなかった(統制群)。編入・その他のTOEICスコアを比較し、同じ授業を受けていても編入という動機づけと目標のある学生はその他の学生よりも成績が向上すると考えられる。また、TOEICスコア向上というtask-based learningの結果にも注目される。仮説として、「編入希望学生は短大から大学へ進むという動機づけがあるので、就職希望学生よりもTOEICスコアが高く、全般的に成績が向上する」ことを掲げた。今回は3クラスだけの予備的な調査であったが、編入という目標からMotivation Learningは如何にして学習効果を高め、成績向上に資するかを検証して行く。