著者
濱田 真由美
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.4_75-4_87, 2016-09-20 (Released:2017-03-18)
参考文献数
33

目的:授乳支援を行う助産師の経験を明らかにすることである。方法:助産師6名に参加観察および半構成的面接法を行い,得られたデータを質的帰納的に分析した。結果:助産師は授乳支援を行うなかで【授乳支援に対する信念が揺れ動く】【授乳支援に不確かさや迷いがつきまとう】【母親の実情に沿い,かつ母子の利益が最大限になる授乳支援を開拓する】【授乳支援のむずかしさのなかから母親との隔たりを埋める手がかりを感じとる】【組織の円滑な運営のために個人的な不満や見解は差し控える】という経験をしていた。結論:本研究の結果から,先行研究で浮かび上がった母乳育児推進を前提とした授乳支援の問題状況が研究参加者の世界にも内在することが見出された。母親の多様性を考慮した豊かな知識を構築するためには,助産師の経験を正当な知識として認め,蓄積していく必要が示唆された。
著者
谷津 裕子 佐々木 美喜 千葉 邦子 新田 真弓 濱田 真由美 山本 由香 芥川 有理
出版者
日本赤十字看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

20代女性の出産に対するイメージを当事者への聞き取り調査を通じて明らかにした。20歳代未婚女性33名に非構成的面接法を行い、得られたデータを質的に分析した結果、20代女性の出産イメージを示す10の特徴が抽出された。20代女性が出産に現実味を感じにくい背景には、就労状況の過酷さや職場や地域社会における家族中心施策の未整備,ロールモデルの不在、ライフデザイン教育の不十分さ等が存在し、これらの問題に取り組むことが少子社会における出産環境の創出に向けた喫緊の課題と考えられた。
著者
濱田 真由美 佐々木 美喜 住谷 ゆかり 鈴木 健太 仁昌寺 貴子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.5_875-5_889, 2018-12-20 (Released:2018-12-21)
参考文献数
75

目的:授乳を行う母親の体験に関する質的研究結果を統合する。方法:質的研究40件を抽出し,メタ・サマリーを行った。結果:授乳に必要とされる自律性を発揮する体験,意思をもって授乳方法を選択する体験,母乳を与えようと努力する体験,母乳に母子関係を投影する体験,母乳に「母親」を投影する体験,断乳・卒乳・離乳と折り合いをつける体験,授乳に対する否定的体験,支援に満足した体験,支援に不満を抱いた体験の9トピックと30の結果に統合された。出現頻度が高かった結果(effect sizes 20~38%)は,母乳育児や搾乳に伴う身体的・精神的苦痛,「母親」としての自己価値が揺るがされる体験,母親の自律性や意思を示す体験であった。結論:母乳を与えることに伴う母親の身体的・精神的苦痛や自己価値が揺るがされる問題状況に取組み,母親の自律性や意思を尊重した支援創出に向けた研究が必要である。
著者
濱田 真由美
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.28-39, 2012 (Released:2012-08-31)
参考文献数
18
被引用文献数
5 2

目 的 本研究は,妊娠後期の初妊婦に焦点を当て,授乳への意思に影響する社会規範を明らかにすることを目的とした。対象と方法 初妊婦の授乳への意思に影響する社会規範のバリエーションを明らかにするために質的記述的研究デザインを用いて,東京都内の1総合周産期母子医療センターに通院する妊娠経過が正常な妊娠後期の初妊婦17名に対して1人につき1回の半構造化面接を行い,データを得て質的に分析した。結 果 研究参加者は,全員が母乳で育てる意思を示し,「絶対母乳で育てたい」,「『絶対母乳で育てたい』と『できれば母乳で育てたい』の中間」,「できれば母乳で育てたい」という授乳への意思の違いを示した。そして初妊婦の授乳への意思に影響する社会規範は【「自然」志向】,【望ましい「母親」】,【責任ある「母親」】,【自己防衛する賢い「母親」】,【ミルクと「母親」に関する正当性の主張】,【「母親」がもつべき環境や情報の望ましさ】の6つのテーマから構成されていた。結 論 本研究で示された初妊婦の授乳への意思に影響する社会規範は,母性イデオロギーや子どもの「健康」を守る責任ある望ましい「母親」を規定する社会規範と,それとは反対に母乳育児の失敗や育児ストレスへの危機感に対処したり,「母親」として逸脱していると見なされない為に正当化を行うことに価値をおく社会規範が示された。
著者
濱田 真由美
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.5_749-5_761, 2022-01-20 (Released:2022-01-20)
参考文献数
33

目的:日本国内全国紙版の看護系学術誌に発表された論文から「母乳育児」を構築している言説を探求する。方法:92文献について言説分析を行った。結果:主要な言説として規範性と不確実性が示された。規範性には,母乳育児が社会にとっても母子にとっても優れた栄養法であるとする【良いもの】,母乳育児と「良い母親」を結合する【母親の規範】,母乳育児推進を医療者の義務とする【専門家の規範】が含まれた。一方,不確実性には,母乳育児が母親を破綻させかねない【リスク】,母乳育児の成否や支援方法を裏付ける根拠の【曖昧さ】が含まれた。なかでも,【母親の規範】【専門家の規範】【リスク】は5割以上の頻度で出現した。結論:医療者は母乳育児に付随する母親への偏った見方がないか内省するとともに,母乳育児の不確実性と対峙し,「母乳か人工乳か」の単純な二項対立を乗り越えて授乳支援の知を開発していく必要があると考えられた。