著者
渡辺 秀臣 大沢 敏久 饗場 佐知子 鈴木 秀喜 長谷川 仁 黒沢 一也 高岸 憲二
出版者
北関東医学会
雑誌
The KITAKANTO medical journal (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.137-142, 2004-05-01
被引用文献数
1

【背景】少年期から青年期のスポーツには成長期の傷害が発生する.【目的】高校球児の障害発生予測因子の解明を目的とした.【対象と方法】群馬県高校野球連盟に登録された投手122名を対象にメディカルチェックを行い,疼痛の発生に関係する因子を解析した.【結果】肩関節の可動域は投球側で有意に内旋角度が減り,外旋角度が拡大していた.疼痛を訴えた球児は28名,23.0%であった.疼痛の発生に有意に関連を有したものは,球速,烏口突起の圧痛,肩インピンジメント徴候,肩上方関節唇損傷検査項目であり,肩関節不安定症の検査には影響を受けなかった.X線検査には痛みに関連した異常は見られなかった.【結語】高校球児の投手の疼痛には肩インピンジメント症候群とSLAP損傷が大きな誘因となっていることが示唆され,これらを示唆する検査の陽性生徒には理学療法の指導が必要であることが示唆された.
著者
内田 陽子 上山 真美 富沢 順 石川 徹
出版者
北関東医学会
雑誌
The KITAKANTO medical journal (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.207-212, 2006-08-01

【背景・目的】現在,寝たきり患者などの移動の際にバスタオルを使用している所が多い.本研究の目的は,バスタオルにかわる患者仰向け体位からの移動兼療養用ウールボアマットを開発し,その評価を行うこととした.【対象と方法】10人の健康学生を対象にバスタオルとウールボアマットの強度・耐性と体圧,主観的評価を行った.【結果】ウールボアのほうがバスタオルよりも長さ・幅方向で高い強度を示し,伸び率も高かった.また,何も敷かない場合とウールボアマットを敷いた場合では,右踵部と左肘関節部において後者の方が体圧は低かった(p<0.05〜0.01).また,バスタオルとウールボアマットの比較でも後者のほうが左肘関節で低い値が得られた(p<0.05).被験者はウールボアのほうが肌さわり,寝心地,暖かさの面でよいと評価し,首の安定感,身体の痛み等もよいという者が多かった.また,看護者側も持ちやすいという評価をしていた.反面,ウールボアのほうが滑りやすいという意見もあった.【結語】移動用兼療養においてはバスタオルよりウールボアマットのほうが適している.
著者
大竹 弘哲 長嶋 和明 田中 聡一
出版者
北関東医学会
雑誌
The KITAKANTO medical journal (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.49-52, 2007-02-01

症例は73歳女性.左上肢の筋力低下にて発症.歩行障害が現れ,筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断後に構音障害と嚥下障害が現れ,進行した.患者本人とその家族共に延命治療を希望されなかった.左上肢を中心に疼痛を訴えるようになり,緩和ケアとしてリン酸コデインを開始して45日目に永眠された.日米の神経学会治療ガイドラインで,ALS末期の疼痛緩和にオピオイドの使用を勧めている.筋萎縮に伴って体重が減少するALS末期で,欧米に比べ体格の小さい本邦の患者において,強オピオイドではなくリン酸コデインから緩和ケアを開始することを検討すべきである.
著者
堀越 政孝 杉本 厚子 齋藤 やよい
出版者
北関東医学会
雑誌
The KITAKANTO medical journal (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.115-122, 2005-05-01
被引用文献数
1

【背景と目的】電子カルテ導入による看護情報への影響を明らかにするために, 電子カルテ導入前後に用いられた看護記録をもとに, 情報量と内容を評価した.【対象と方法】全面的に電子カルテシステムを導入した病院で調査を行った.分析対象は属性をマッチングさせた術後患者のSOAP形式の看護記録とし, 電子カルテ導入前後それぞれ13名の術後患者のデータを比較した.【結果】電子カルテ導入前後の看護診断・関連因子・看護計画・経時的問題の量的比較において, 有意差はなかった.NANDA13領域の分類では, 導入前のデータは4領域に有意に集中した.関連因子は, 導入前に統一された表現であったが, 導入後では様々な表現が用いられていた.【結語】導入による診断のワンパターン化が懸念されたが, 候補リストの表示や, 判断を伴う選択は, むしろ論理的な思考を広げ, データベースを重視した計画の立案に有用であると考えられた.