著者
杉本 厚子 堀越 政孝 高橋 真紀子 齋藤 やよい
出版者
北関東医学会
雑誌
The KITAKANTO medical journal (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.123-131, 2005-05-01
被引用文献数
2 5

【目的】患者の異常を察知した時に, 看護師が捉えた事象と臨床判断の特徴を明らかにすることである.【方法】外科系病棟に勤務する看護師15名の患者の異常を察知したエピソードを, グループディスカッションを通して抽出し, 内容分析した.【結果】看護師が捉えた事象は, 異常な眠気, 表情の変化, 反応の鈍さ, 活動の低下, 予測外の症状, つじつまの合わない会話, 違和感のある臭気であり, 多くの看護観察にもとづく非言語的サインであった.異常を察知した臨床判断には, 【今までとは違う感覚】, 【通常とは違うという感覚】, 【情報に矛盾があるという感覚】であり, 「その患者」のデータや経験の分析的判断と, 「そのような患者」の看護経験にもとづく非分析的判断の両者を活用していた.【結語】看護師は患者の微妙な非言語的サインにより異常を察知し, 論理的分析と経験によって培われた直観的分析を駆使して臨床判断を行っていた.
著者
TSUNEHIRO ISHIDA NORITAKA SUGAMATA YOSHIKI TAKAI JUN HORIGUCHI YUKIKO KOIBUCHI TAKAO YOKOE YUICHI IINO YASUO MORISHITA TETSUNARI OYAMA TAKASHI JOSHITA
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
The KITAKANTO Medical Journal (ISSN:00231908)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.519-524, 1993-09-01 (Released:2009-10-21)
参考文献数
16

甲状腺癌術前診断における穿刺吸引細胞診の有用性を検討した.1975年から1992年間に穿刺吸引細胞診を施行し, 病理組織診断が判明した結節性甲状腺腫1,540例 (甲状腺癌580例, 良性腫瘍943例, 橋本病17例) を対象とした.穿刺吸引細胞診の診断能は, sensitivity 85%, specificity 93%, accuracy 90%であった.甲状腺癌では乳頭癌の正診率が90%と高く, 濾胞癌で60%と不良であった.1.0cm以下以下の微小癌にも高い正診率 (89%) が得られた.良性腫瘍の正診率は高いが, 橋本病で偽陽性が多くみられた.甲状腺癌の各種診断法の正診率を比較すると, 穿刺吸引細胞診は触診法や超音波検査に比べ良好な成績であった.以上, 穿刺吸引細胞診は甲状腺結節の良悪性診断のみならず, 組織型の推定, 微小癌の診断に有用かつ信頼度が高く, 初診時の必須検査法とすべきである.
著者
内田 陽子
出版者
北関東医学会
雑誌
The KITAKANTO Medical Journal (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.105-111, 2006
被引用文献数
1

<B>【背景・目的】</B> 本研究の目的は, ケアマネジャーからみた自立支援, 介護予防の条件を明らかにすることである. <B>【対象と方法】</B> 対象は群馬県主催のリーダー研修に参加したケアマネジャー 67人に対して, 自立支援, 介護予防ができたと判断された事例の調査表の記入を依頼した. 分析対象はそのなかで同意を得られた35事例とした. 方法は利用者背景条件, アウトカム, 利用サービス, ケアプランの内容から構成する調査表をもとにケアマネジャーに条件分析のグループワークを行った. <B>【結 果】</B> 自立支援・介護予防できたとケアマネジャーが判断した事例は, 寝たきりになる前の認知症が軽度の者が多かった. また, 主疾患は筋骨格疾患が多く, 主介護者の健康状態や本人との人間関係も良好なものが多かった. サービスは全員福祉用具を利用し, アウトカムの内容には本人の介護度, 歩行, 閉じこもり, 入浴, 意欲, 在宅生活の継続, 排泄, 転倒の改善が記述されていた. その条件の占める割合で高かったものは(1)ケア提供者, (2)本人・家族, (3)ケアマネジャーの条件の順であった. ケア提供者の条件ではサービスの工夫, 状態に合わせた福祉用具の活用, スタッフの声かけ, 訪問介護やリハビリが適切であった. 本人・家族の条件には家族の協力, 本人の意欲があった. ケアマネジャーの条件には, 本人・家族及び事業所との連絡, 効果的なサービスの組み合わせ, 量の調整をした等が明らかになった. <B>【結論】</B> 今後, これらの条件を考慮したケアマネジメント, サービス提供を行う必要がある.
著者
沼田 加代 根岸 恵子 平良 あゆみ 佐藤 和子 飯野 理恵 中山 かおり 佐藤 由美 齋藤 泰子
出版者
北関東医学会
雑誌
The KITAKANTO medical journal (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.25-32, 2006-02-01

【背景・目的】高齢化率(50.7%)の高い山間過疎地域において, 40歳以上の住民に健康・生活に関する調査を行った.【対象と方法】40〜64歳は, 968人全住民を対象とし, 自記式質問紙調査を実施した.65歳以上には, 1/10年齢別層化無作為抽出による156人を対象に, 聞き取り調査を実施した.【結果】回答率は, 40〜64歳は87%, 65歳以上は98%であった.40〜64歳の特徴として, 喫煙者は3割おり, ブリンクマン指数600以上が喫煙者の半数であった.また, 飲酒者のうち毎日の飲酒が半数であった.肥満は3割おり, 男性の肥満の割合が高かった.65歳以上の特徴として, 罹患率は7割であった.また, 受診や買い物は「村外」が8割であった.将来は「今の自宅で暮らしたい」と望んでいる者は8割であった.【結語】喫煙・飲酒などの嗜好品への対策, 肥満対策, 住み慣れた自宅で生活するための体制整備など成人・老年期における健康づくりや介護予防事業の重要性が示唆された.
著者
白石 卓也 竹島 太郎 小谷 和彦
出版者
北関東医学会
雑誌
The KITAKANTO Medical Journal (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.207-211, 2017

<b>目 的:</b>ミネラルの豊富な温泉水を飲む飲泉は温泉療法のひとつである. 群馬県上野村にあるしおじの湯の温泉水はケイ酸を豊富に含んでいるため, 健康保持・増進に寄与すると思われて地域住民に飲用されている. そこで, この飲泉による健康関連指標に関する調査を行い, その効果について検証した.<br><b>方 法:</b>飲泉習慣のない成人に対して飲泉試験への参加を公募した後, 飲泉群 (80名) と飲泉しない対照群 (31名) で比較検討した. 飲泉群は, しおじの湯の温泉水500 mLを, 4週間に渡って1日3回 (食間) の頻度で飲用した. 飲泉期間前後で自己記入式質問票ならびにGastrointestinal Symptom Rating Scale (日本語版) を用いて健康関連指標の変化について評価した. 対照群にも飲泉群と同様に調査した.<br><b>結 果:</b>飲泉群と対照群を比較したところ, 飲泉群には脱毛および便臭で有意なスコアの改善がみられた.<br><b>結 語:</b>ケイ酸を含む温泉水 (しおじの湯) の飲泉は, 脱毛や便臭のような健康改善に寄与する可能性はあるが, これは予備試験の結果に過ぎず, ランダム化比較試験を行ってさらに検討していきたい.
著者
野田 大地 佐藤 尚文 尾形 敏郎 五十嵐 清美 井上 昭彦 良永 康雄 茜部 久美 飯島 広和 前原 康延
出版者
北関東医学会
雑誌
The KITAKANTO medical journal (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.221-227, 2008-05-01
被引用文献数
1 1

子宮広間膜異常裂孔ヘルニア2例を経験した.【症例1】51歳女性.14歳時,虫垂切除.上腹部痛,嘔気出現し近医受診.症状改善せず,第3病日に当院紹介受診.腹部膨満し腹部全体に圧痛を認めたが反跳痛や筋性防御なし.CT,USで拡張した小腸を認めたが腹水なし.イレウス管を挿入し第4病日に造形した.右骨盤内で小腸の完全閉塞を認め手術適応と判断した.右の子宮広間膜に約1.5cmの裂孔があり,回腸が約20cm陥入,壊死していた.小腸切除と裂孔閉鎖を行い,術後15日目に退院.【症例2】53歳女性.開腹歴なし.朝から腹部違和感,気分不快あり.症状改善せず夕方当院受診.腹部全体の膨隆を認めたが自発痛,圧痛,嘔気なし.CTで拡張した小腸と軽度の腹水を認めた.保存的に経過をみたが嘔吐を繰り返したため第2病日にCT再検.小腸拡張の悪化,腹水増加を認めたため緊急手術を行った.左の子宮広間膜に約2cmの裂孔を認めそこへ回腸が約5cm陥入していた.用手的に整復し,裂孔閉鎖した.術後9日目に退院.
著者
岡野 孝雄 大和田 進 清水 公裕 須納田 豊 川手 進 浜田 邦弘 岩波 弘太郎 菅野 雅之 佐藤 啓宏 高木 均 小山 佳成 青木 純 森下 靖雄
出版者
北関東医学会
雑誌
The KITAKANTO medical journal (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.113-118, 2004-05-01

【背景と目的】肝細胞癌に対する経皮的なラジオ波焼灼術(以下RFA)は,局所療法として有効な治療法の一つである.しかし,横隔膜直下の肝細胞癌は,経皮的に超音波での描出や経皮的な穿刺が困難な場合がある.そこで我々は,胸腔鏡下に超音波プローブを用いてRFAを行い,その有効院と安全性を検討した.【対象と方法】2001年3月から2003年12月までに5症例,7回の胸腔鏡下ラジオ波焼灼術(以下TRFA)を行った.方法として,分離肺換気下に,胸壁の2ヵ所にトロカールを挿入し,それぞれ胸腔鏡と超音波プローブを挿入し,経横隔膜的に腫瘍を描出する.超音波プローブにほぼ垂直になるようにPTCD外套針を経皮的に挿入し,これをガイドとして,RF針を経横隔膜的に腫瘍内に穿刺し焼灼する.【結果】全例がHCV(+)の肝硬変であった.Child-Pughスコアは5〜7点であった.平均腫瘍径は2.4(2.0〜3.0)cm,セッション数は症例1の初回TRFA時に6回施行した他は,各3回であった.平均手術時間は180(90〜280)分,出血量は18(0〜50)mlで,平均術後在院日数は10.4(4〜22)日であった.合併症として,ポート部の熱傷を1例に認めた. RFA術後のダイナミックCTでは,全例で低吸収域となり,治療は有効であると判定した.5症例の平均観察期間は21(7〜33)ケ月であった.1例で術後の局所再発が疑われ,同部に2回同様の手技で治療した.1例に,異所性の再発を認め,動脈塞栓療法(以下TAE)を行った.脳梗塞で24ヶ月目に死亡した1例の他は,全例が無病生存中である.【結語】TRFAは,2つのportで行うことが出来,低侵襲で,繰り返し安全に施行可能であった.経皮的なRFAが困難な症例に対して,新しい治療法になりえる.
著者
柳 奈津子 小池 弘人 小板橋 喜久代
出版者
北関東医学会
雑誌
The KITAKANTO medical journal (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.29-35, 2003-02-01
被引用文献数
11 6

【背景・目的】本研究の目的は,呼吸法によるリラックス反応について明らかにすることである.【対象と方法】リラクセーション技法の練習が初めての健常女性79名(実験1:35名,実験2:44名)を対象とした.実験1では,被験者全例が呼吸法を行う実験群と安静のみの対照群の両群を実施した.5分間の呼吸法または安静の実施を実施中とし,実施前後の脈拍,血圧を測定した.実験2では,無作為に22名ずつ実験群と対照群の2群に分け,実施前,実施中,実施後に各3分間の脳波を測定した.【結果】実験群では,実施後に脈拍数は有意に減少したが,対照群では変化はなかった.血圧は両群ともに変化はなかった.α波は,実施後に実験群では増加し,対照群では低下し両群間に有意差が認められた.β波は,実施後に実験群では低下し,対照群では増加したが有意差はなかった.【結論】呼吸法は安静に比べて脈拍数を減少させ,α波を増加させることが明らかとなった.呼吸法は初回練習者でも他のリラクセーション技法と同様の反応が得られると考えられた.
著者
Shinozaki Tetsuya Fukuda Toshio Watanabe Hideomi Takagishi Kenji
出版者
北関東医学会
雑誌
The KITAKANTO medical journal (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.147-151, 2004-05-01
被引用文献数
1 8

A seventeen-year-old boy was referred to our hospital, complaining of continuous pain of his left wrist joint. Plain roentgenogram showed an osteolytic lesion at the distal end of the radius. An operation in which the tumor was curetted was performed suspecting giant cell tumor. Pathological diagnosis was of a giant cell tumor. One month after the operation, radiological findings showed local recurrence with an expanded lysis. Wide resection of this tumor followed by a vascularized fibular graft was performed. Six months after the second operation, soft part swelling suggesting local recurrence was again prominent. Upper arm amputation was performed because of the bad local condition. The pathological diagnosis of these operative specimens was of giant cell tumor similar to that of the initial specimen. Multiple metastases appeared eight months after the third operation. In spite of intensive treatment, the patient died of respiratory failure. Autopsy revealed that pathological features from metastatic specimens were similar to those of osteosarcoma, not giant cell tumor. When we encounter patients presenting with a giant cell tumor, especially when they are younger than the age at which such lesions usually occur, we should bear in mind the possibility of an osteosarcoma and perform intensive chemotherapy and surgery.
著者
辻村 弘美
出版者
北関東医学会
雑誌
The KITAKANTO medical journal (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.129-136, 2006-05-01

【目的】中国で整体看護普及のために看護過程学習会を開催し,その理解度や関心度などを検討した.【方法】河北省唐山市の病院で働く,臨床経験5年以上の看護師23名を対象に,質問紙調査を行った.【結果】講義内容の項目の中で最も理解度が高かったのは,「看護過程の5段階」で23名中18名(78.3%)であり,「臨床で活用できる」と回答したのは16名(69.6%)であった.「看護診断」と「情報関連図」に関しては最も理解度が低かった.また,「臨床で看護過程を用いることの利点」に関しては16名(69.6%)が良く理解できたと回答しているものの,「臨床で活用できる」と回答したのは5名(21.7%)だけであった.【結語】看護過程の概論的なことは理解できていても,実際に看護過程を事例に展開することは困難である.
著者
内田 陽子 梨木 恵実子 小玉 幸佳 河端 裕美 鈴木 早智子 高橋 陽子 斉藤 喜恵子 滝原 典子
出版者
北関東医学会
雑誌
The KITAKANTO medical journal (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.25-31, 2009-02-01
被引用文献数
1

【背景・目的】病院スタッフからみた老人看護専門看護師臨地実習の評価を明らかにすることである.【対象と方法】調査協力に同意が得られた病院スタッフ74名に対して,自記式質問紙法を行った.【結果】実習生の関わりとCNSの6つの役割に対する評価は「学生のケアプランは良かった」「スタッフに対する意見,アドバイスは良かった」等について高得点を示した.その他,「根気よく関わる大切さがわかった」等のスタッフ自身への良い変化の回答もみられた.しかし,これらの得点は,看護師とそれ以外のスタッフでは差がみられた.【結語】学生はスタッフに実習や役割を理解してもらうことが必要であり,そのためには,他職種に対する積極的な関わりが必要である.
著者
岡田 慶一
出版者
北関東医学会
雑誌
The KITAKANTO Medical Journal (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.9-14, 2009
被引用文献数
1

<B>【背 景】</B> 介護老人保健施設で認知症高齢者が急増. <B>【目 的】</B> その摂食・嚥下障害の対策と結果を報告する. <B>【対象と方法】</B> 当施設の摂食・嚥下障害は56例. 平均年齢84.2歳. 医師, STの所見の対策と効果を検討. 効果を4段階評価した. <B>【結 果】</B> (1)食思の問題(2)嗜好の問題(3)食物認知の問題(4)拙劣な摂食動作の問題(5)咀嚼から嚥下運動の問題5項目に分類. 更に14中項目, 23小項目で対策を立て, 実施評価した. 食思の発動性の低下, 異常な確信, 固執は効果があり. うつ状態や食事健忘, 食欲の異常な亢進・盗食は効果は小. 甘い物, 飲み物, 汁物のみ口にするは効果あり. とろみ, ミキサー食の拒否は効果は少ない. 食物認知で注意の問題は効果あり. 摂食スピードの異常は効果あり. 拙劣な摂食動作は一部効果あり. 咀嚼から嚥下への移動困難は効果少であった. <B>【結 語】</B> 認知症高齢者摂食・嚥下障害の対策は約50%が有効であった.
著者
井上 映子 峯 馨 齋藤 やよい
出版者
北関東医学会
雑誌
The KITAKANTO medical journal (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.225-234, 2005-08-01
被引用文献数
1

【目的】臨地実習による学習活動の効果を評価するために, 学生が意味化した実習経験の特徴を明らかにする.【方法】看護系短期大学3年次に在学する学生5名が記録した, リハビリテーション看護実習課題レポートを分析対象とし, 質的帰納的研究技法によって抽出した390の経験を内容分析した.【結果】学生が意味化した実習経験は44のサブカテゴリに分類され, 意味内容の類似性によって, [患者に対する生活者としての好奇心][患者理解への志向とその混乱][混乱の沈静化とひらめき援助][未熟な分析的思考によるお試し援助と意味の模索][分析的思考による援助と自己の振り返り]の5つのコアカテゴリに統合された.【結語】意味化した経験は, 学習活動への意識を軸とした, 生活者から学習者, さらに援助者への自己意識の発展を示すものであった.