著者
冨樫 剛
出版者
フェリス女学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

Carpe diem(今日の花を摘もう=今という時間を楽しもう)という古代ローマ以来の思想・文学的主題が16-17世紀のイギリスにおいて受容され、流行した際の政治・社会的背景を明らかにした。その背景とは、宗教改革以降英語聖書・祈祷書の広まりとともに厳格化したキリスト教信仰、カルヴァンらの予定神学とともに広まった来世に対する関心や不安、ローマ・カトリック教会を悪と見なす黙示録的終末論であり、またこれらを手段としてなされた社会論争・闘争であった。詩人たちは、来世でなく現世の、正しさではなく楽しみの重要性を説くべく、カルペ・ディエム詩を書いたのである。