著者
河合 めぐみ 佐藤 恵 川嶋 修司 大城 宏之 臼田 多佳夫 吉川 裕之 大篠 浩
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
健康医学 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.66-70, 2004-06-25 (Released:2012-08-27)
参考文献数
12

聖隷予防検診センターにおけるヘリコバクターピロリ(H.pylori)除菌治療の現状と今後の展望について報告する。まず上部消化管内視鏡検査にて潰瘍の診断と,迅速ウレアーゼテストを行った。除菌治療を先行させた後,潰瘍の深さ,大きさに応じて抗潰瘍薬を投与した。そして再度内視鏡検査を施行し潰瘍治癒を確認した後,尿素呼気試験を施行した。2000年11月より,2003年10月までに尿素呼気試験を終了した症例は計193例,平均年齢54.0歳,男性158例,女性35例で,症例のうちわけは胃潰瘍73例,十二指腸潰瘍91例,両潰瘍合併29例であった。除菌成功率は85.5%で,副作用は下痢が最も多かったが,いずれも軽度であった。アルコールや喫煙の生活習慣と,除菌治療の成功率とは相関を認めなかった。除菌成功後の潰瘍再発率は3.2%と非常に低率であったが,除菌失敗後の潰瘍再発率は47.4%と高率であった。除菌治療は,成功すると潰瘍再発が少ないため,有効な治療法である。しかし,失敗すると再発率が47.4%と高率であった。潰瘍はストレスやアルコール,喫煙などの因子も関与するが,基本的に主因はH.pyloriであることを再認識した。1日も早い2次除菌治療法が確立され,保険適応になることが望まれる。
著者
草務 博昭 志村 俊郎 寺本 明
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
健康医学 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.325-327, 1998-11-30 (Released:2012-08-27)
参考文献数
10

症例1:28歳女性。頭痛を主訴にMRIを施行,両側側脳室前角付近を中心にほぼ左右対称的に広がる脂肪腫,さらに同時に合併する脳梁形成不全症と診断された。神経学的異常所見は認められなかった。症例2:29歳女性。頭重感を主訴として頭部MRIを施行,左側脳室拡大と脳梁形成不全症と診断された。これらの症例はいずれも手術の適応はなく経過観察としている。これら2症例について若干の考察を加え報告する。
著者
福井 敏樹 山内 一裕 丸山 美江 佐藤 真美 高橋 英孝 山門 實
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.29-35, 2012 (Released:2012-10-03)
参考文献数
13

目的:人間ドック健診は,生活習慣病の発症予防と早期治療,がんの早期発見と早期治療を大きな目的としている.しかしながら人間ドック健診と一般健診受診者の医療費について比較検討した報告はこれまでほとんどない.したがって今回我々は,通常の健診を毎年受けている集団(一般健診群)と毎年人間ドックを受け続けている集団(ドック健診群)における医療費の経年変化を比較検討し,毎年人間ドック健診を受け続けていれば,本当に一般健診以上の医療費削減効果があるのかを検討した.方法:対象は四国エリアの40歳代および50歳代のNTTグループ社員.平成15年度から17年度までの3年間連続での一般健診群と3年間連続でのドック健診群における年間医療費を,平成18年度から22年度まで5年間前向きに追跡した.結果:男性については,40歳代および50歳代の一般健診群では経年的に年間医療費が増加する傾向が見られた.5年間の累積医療費の両群の差は,40歳代は,男性約14.3万円,女性約-6.9万円であった.50歳代は,男性約33.0万円,女性約4.0万円であった.男性においては40歳代,50歳代共に両群の差が年々大きくなっていった.結論:50歳代男性では,人間ドック健診と一般健診との費用差額を考慮しても,毎年人間ドック健診を受けることに医療費削減効果があることが示された.
著者
宮本 祐一 木村 美樹 柿本 陽子 福岡 直美 水城 比呂子
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.36-40, 2012 (Released:2012-10-03)
参考文献数
20

目的:40歳以上の緑内障有病率は5.0%である.その78%が広義の原発開放隅角緑内障であり,その92%が正常眼圧緑内障,normal tension glaucoma(以下,NTG)である.このNTGの発見へのfrequency doubling technology (FDT)視野計の有用性を検討した.方法:2010年5月17日より2011年1月31日までのFDT実施4,014名の中のFDT陽性者235名(5.9%)中108名が眼科を受診した.その診断結果を検討した.結果:NTGが56名,原発開放隅角緑内障が5名,原発閉塞隅角緑内障が1名,続発緑内障が1名であった.FDT陰性で眼底検査,眼圧検査で精査となりNTG,原発開放隅角緑内障と診断された5名を含めると68名の緑内障が発見された.FDTのみの異常者172名,精査受診者68名,発見緑内障49名,眼底,眼圧のみの異常者88名,精査受診者48名,発見緑内障19名,特に,発見緑内障68例中3例のみが眼圧での陽性者であった.すなわちFDT検査がなければ68例中49例の緑内障が発見できず,眼底,眼圧のみでは19例の発見であり,FDT導入によって,発見率は3.6倍に増加した.2009年度の眼底,眼圧のみでは4,313名中10名の緑内障が発見されたのみであり,発見率は0.23%であったが,FDT導入後の眼底,眼圧,FDTのいずれかを行った総数は4,051名であり,緑内障発見率は1.68%と有意に増加した.結論:人間ドックにおいて,NTGの発見にはFDT視野計がきわめて有用である.