著者
高橋 英孝 山門 実 中館 俊夫
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
健康医学 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.38-49, 2001-05-31 (Released:2012-08-27)
参考文献数
7
被引用文献数
3

QOL向上のためのED治療薬に対するニーズを知ることを目的に,人間ドックを受診した男性665人を対象として性機能に関する調査を実施した。回答者は474人(回収率71.3%)であり,年齢の記載がない者を除外した465人(平均年齢は54.7±9.9歳)を対象として解析した。ED治療薬を使用したいと回答した者は92人(20%),使用してもよいと回答した者と合わせると129人(28%)であり,人間ドックでの処方を希望する者は28%であった。日本男性人口に当てはめると,積極的希望者は733万人,消極的希望者を含めると1,025万人と推計された。
著者
山門 實 山本 浩史 菊池 信矢 新美 佑有 谷 瑞希 戸田 晶子 山本 麻以 石坂 裕子
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.681-688, 2017 (Released:2017-06-27)
参考文献数
23

目的:がん患者と健常人の血漿中アミノ酸濃度の違いを「アミノインデックス技術」を用いて統計解析し,がん罹患の確率を評価し,精密検査対象者を抽出するがん検診法アミノインデックス®がんリスクスクリーニング(AminoIndexTM Cancer Screening:AICS®,以下.AICS)は,7種のがんに対する検査として実用化されている.既報では,AICS受診者799例中の精密検査対象となるランクCの割合,精密検査結果等を報告したが,本報では,より大規模な受診者5,172例のランク分布,ランクC判定者の精密検査結果,各種AICSの陽性的中率を報告する.方法:三井記念病院における2011年9月~2015年12月のAICS受診者5,172例(男性2,757例,女性2,415例)のランク分布,ランクC判定者の精密検査結果を検討し陽性的中率を算出した.結果:ランクC判定者の精密検査により,肺がん1例,胃がん3例,大腸がん3例,前立腺がん6例,乳がん4例が発見された.各種AICSの陽性的中率は,AICS(肺):0.37%,AICS(胃):0.75%,AICS(大腸):1.19%,AICS(前立腺):1.80%,AICS(乳腺):3.57%,AICS(子宮・卵巣):0%であった.AICSによるがんの発見率は0.33%と,2015年度人間ドック全国集計成績報告の0.26%より高頻度であった.結論:これらの成績は,AICS®の新規がん検診としての有用性を推察させた.
著者
鈴木 信次 乾 和郎 朝内 京華 上田 かおる 加藤 明香 愛知 葉子 大橋 理恵 高島 東伸 福田 吉秀 廣瀬 光彦
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.856-862, 2013 (Released:2013-07-01)
参考文献数
29
被引用文献数
2 1

目的:人間ドックの受診者に対する生活指導のため,人間ドックで発見された胆石保有者の特徴について非保有者と比較検討した.方法:2009年に当施設の人間ドックを受診した23,848名を対象とし,胆石保有者1,062名の年齢,性別,BMI,糖尿病(HbA1c),脂質代謝,他の血液検査所見,生活習慣,生活習慣病,超音波検査所見について,非保有者22,786名と比較検討した.なお,BMI,血液検査所見,生活習慣病に関しては,年齢により40歳以下,41歳~59歳,60歳以上の3群に分けて比較検討した.結果:胆石の頻度は4.5%であった.胆石保有者の平均年齢は非保有者と比べて有意に高かった.BMIは,非保有者よりいずれの年齢群でも有意に高値であった.HbA1c(JDS)は,全体では有意差を認めなかったが,年代別では,中高年2群で有意に高値であった.脂質代謝では,胆石群で中性脂肪が有意に高く,HDLコレステロールが有意に低かった.他の血液検査所見(肝機能,膵機能,貧血)には差を認めなかった.生活習慣の検討では,飲酒しない人の胆石保有率は飲酒家と比べて有意に高かったが,他は認められなかった.生活習慣病について年代別にみると,40歳以下では十二指腸潰瘍の既往歴においてのみ有意差を認め,41歳から59歳の年代では,高血圧,脂質異常症,糖尿病,痛風に,60歳以上の年代では,高血圧,脂質異常症,糖尿病に有意差が認められた.胆石以外の超音波所見は胆嚢腺筋腫症と胆嚢壁肥厚に有意差が認められた.結論:胆石にならないための指導として中性脂肪,肥満の改善,適度な飲酒が有効な可能性であることが示唆された.
著者
勝木 美佐子 中村 雄二 平野 正憲 野本 一臣 今井 道代
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.715-718, 2012 (Released:2013-04-01)
参考文献数
12

目的:ビリルビンは,強力な抗酸化物質であり,動脈硬化予防に作用している可能性があると報告されていることから,生活習慣と総ビリルビン値に関連性があるかを検討した.方法:対象は平成22年に当クリニックを受診し,体質性黄疸が考えられる総ビリルビン値2.3mg/dL以上を除外した21,166名(男性12,622名,女性8,544名)である.生活習慣に関しては,喫煙習慣,飲酒習慣,運動習慣,ストレス,睡眠時間について,自記式問診票にて確認した.体格については,body mass index(BMI)を18.5未満(やせ群),18.5以上25.0未満(標準群),25.0以上(肥満群)の3群に分け,それぞれ総ビリルビン値の平均値について検討した.総ビリルビンは酵素法にて測定した.成績:喫煙習慣について,総ビリルビン値は男女ともになし群,やめた群,あり群の順に有意に高値であった.飲酒習慣については,飲酒習慣のない者が男女とも総ビリルビン値が有意に低値であった.運動習慣については,運動習慣のない者が男女とも有意に低値であった.ストレスと睡眠時間については,男女とも総ビリルビン値と関連を認めなかった.体格については,男女ともに,やせ群,標準群,肥満群の順で有意に高値であった.結論:喫煙習慣,飲酒習慣,運動習慣,体格(BMI)において総ビリルビンとの関連がみられた.今後,ビリルビンと生活習慣病の発症・進展における役割についての検討が必要と思われる.
著者
高澤 円 須澤 満 奥脇 淳夫 中川 優子 永嶋 康夫 笹森 斉 笹森 典雄
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.602-607, 2015 (Released:2015-12-22)
参考文献数
12

目的:血管迷走神経反応(vaso-vagal reaction:以下,VVR)は,採血副作用のなかでは発症頻度が高いため,採血現場では万全な予防対策や適正な事後処置が求められる.今回,我々は,当健診センターで経験したVVR症例の現状を調査した.方法:2012年12月~2014年9月の期間中,当施設で採血を行った男性41,076人(45.7±11.3歳),女性22,217人(44.0±12.3歳)のうち,VVRを発症した男性29人(34.8±10.2歳),女性18人(33.4±11.8歳)を対象とし,年齢,性差,BMI,睡眠時間,VVR重症度,回復までの対応について調査した.結果:29歳以下の若年層で発症したVVRは19例(発症頻度0.30%)であった.また,VVRは女性や低体重者に多く発症し,睡眠時間が短い受診者がリスクとして認められた.VVR重症度は,軽症例が多かったため,回復までの対応は安静臥床・下肢拳上で改善が可能であった.結論:VVR発症低減に向け採血環境の整備は重要であり,さらに,睡眠不足を含む高リスク群の受診者には特に注意を払い,臥床採血を勧め,積極的に不安を取り除くような声掛けが必要である.
著者
末廣 史恵
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
健康医学 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.148-151, 1997-08-30 (Released:2012-08-27)
参考文献数
8

当施設を受診し,著者が検診した延べ35,682名(男/女:19,695/15,987名)の被検診者について,甲状腺疾患の発見率を集計した。専門医へ受診するよう指示した率(精査指示率)は3.0%で,そのうち約75%が受診した。精査の結果,甲状腺腫瘍および嚢腫679名,機能充進症41名,機能低下症23名が発見された。甲状腺腫瘍のうち222名が手術を受け,甲状腺癌が85名(男/女:25/60名),良性腫瘍が137名(男/女:42/95名)で,甲状腺癌の発見率は全検診受診者の0.24%(男/女:0.13/0.38%)であった。
著者
福井 敏樹 山内 一裕 松村 周治 丸山 美江 岡田 紀子 佐々木 良輔
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.578-585, 2020 (Released:2021-03-31)
参考文献数
21

目的:我々はこれまで種々の生活習慣病関連因子と大血管のスティフネス指標である上腕足首間脈波伝播速度(brachial-ankle pulse wave velocity: baPWV)の関連について報告を続けてきた.喫煙は動脈硬化の危険因子であるが,baPWVに対する喫煙の影響についての縦断解析的な報告はまだほとんどみられない.方法:これまでbaPWVを測定した男性7,251名,女性2,707名のなかで,10年間の喫煙状況の推移を把握し得た非喫煙継続者(非喫煙群)および10年間喫煙継続者(喫煙群)である男性419名,女性38名を抽出した.女性は抽出された喫煙者が非常に少なく,今回は男性のみを対象とした.そして,10年の経過中で禁煙を開始した者,禁煙と喫煙を繰り返していた者は除外し,さらにbaPWVに最も影響を与える血圧の影響を除外するために,10年間の経過のなかでの高血圧治療薬服用者を除外した男性274名を今回の解析対象者とした.結果:解析対象者男性274名のうち非喫煙群は181名,喫煙群93名であった.両群の初年度および10年後の年齢,BMI,血圧,生活習慣病関連因子のなかで,有意差を認めたものはHDLコレステロールと中性脂肪のみであった.10年間のbaPWVの変化量は,非喫煙群128cm/sec,非喫煙群200cm/secと喫煙群の方が有意に大きかった.また初年度,3年後,5年後,7年後,10年後のすべての測定結果がそろっている者による解析では,3年後以降の喫煙群においてbaPWV変化量が有意に大きかった.結論:喫煙による大血管の動脈硬化の進展への影響を,経年的なbaPWV変化量で把握できることが初めて示された.
著者
福井 敏樹 安部 陽一 安田 忠司 吉鷹 寿美江
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.70-76, 2008-06-30 (Released:2012-08-20)
参考文献数
11
被引用文献数
2

目的:血圧脈波検査装置による上腕足首間脈波伝播速度(brachial-anklepulse wave velocity:baPWV)は非侵襲的な動脈硬化検査として定着してきているが,測定の問題点のひとつである血圧の影響を少なくした装置が最近開発され,その有用性を示す結果が増えてきている.今回は2つの脈波伝播速度測定装置の測定結果を比較することを目的とした.方法:対象は当院の人間ドックを受診し,オムロンコーリン社製のform ABI/PWVとフクダ電子社製のVaSeraの両者で測定した471名で,各々の測定値baPWVと心臓足首血管指数(cardio-anklevascular index:CAVI)について比較検討した.結果:血圧の影響はCAVIではbaPWVより減弱したものであったが,統計的には有意であった.動脈硬化の危険因子重積における測定値の増加はbaPWVの方が強い相関を示した.ただし動脈硬化の危険因子である肥満や喫煙の影響については両者ともその相関を示すことはできなかった.メタボリックシンドロームの該当者と非該当者での測定値の比較ではbaPWVは該当者で有意に高値を示したが,CAVIでは有意な差を認めなかった.結論:これらの結果より,baPWVもCAVIも共に血管の動脈壁硬化度を反映すると考えられるが,やはりCAVIにもbaPWVで認められた問題点は存在し,それらを把握した上で使用することが重要である.また,baPWVやCAVI値を動脈硬化の危険因子との関連から考えることの意義についてはさらに検証を必要とすると思われる.
著者
福井 敏樹
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.809-821, 2016 (Released:2016-06-28)
参考文献数
92

我々日本人の死因の1位はがんであるが,動脈硬化性疾患である心および脳血管病変を合わせると,その割合はがんに匹敵する.そのため人間ドック健診や日常診療の最大の目的はがん対策と動脈硬化対策であるといえるが,どのような検査を動脈硬化対策の基本検査として実施するべきかについてはまだ明確になってはいない.2008年に出版された健診判定ガイドライン改訂版では,動脈硬化健診のあり方についての試案を作成した.その際に,最も意図したことは,人間ドック健診の標準検査として動脈硬化検査を定着させていくことであった.エビデンスがある程度確立されていることに加えて,施設間の機器や測定手技の精度の違い,検査にかかる時間や費用なども考慮に入れ,全国の施設で取り入れ可能な検査であることを重視した. 動脈硬化対策において実施するべき検査については,自由診療という枠組みが利用できることも考慮しながら,一方で,任意型健診といえどもその大多数が自治体等の補助や企業・会社等の福利厚生のもとで実施されている現実も含めて考える必要もある. 現在有用であると考えられる検査について,血管機能や形態的変化を調べる検査法を中心に,動脈硬化リスクを評価するバイオマーカー検査もあわせて,最近の動向と我々の施設でのこれまでの検討を含めながら概説する.
著者
小坂 加麻理 小野寺 麗佳 柳田 貴子 山田 毅彦 相馬 明美 腰山 誠 田巻 健治 大澤 正樹
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.539-544, 2021 (Released:2022-03-01)
参考文献数
15

目的:日本人一般住民の年齢階級別心房細動有病率と罹患率を求めること.対象・方法:2018年に岩手県予防医学協会の健康診断で心電図検査を実施した30~89歳の岩手県内住民264,029名(男性144,434名,女性119,595名)の年齢階級別心房細動有病率を算出した.2013年に心電図検査を実施した住民242,299名のうち,心房細動を有さず,2018年までの5年間に1回以上心電図検査を実施した212,433名(男性118,181名,女性94,252名)を心房細動罹患率解析対象とした.初回の健診から最初の心房細動捕捉までの期間を観察期間として人年法を用いて年齢階級別心房細動罹患率を算出した.心房細動が捕捉されなかった対象者では,初回から最終の健診までの期間を観察期間とした.結果:心房細動有病率(%)は,男性30歳代0.06,40歳代0.23,50歳代0.99,60歳代2.97,70歳代5.61,80歳代8.10であり,女性30歳代0.01,40歳代0.02,50歳代0.08,60歳代0.44,70歳代1.31,80歳代3.52であった.新規心房細動罹患を認めたのは男性1,214名(平均観察期間4.2年),女性350名(平均観察期間4.2年).心房細動罹患率(/1,000人年)は,男性30歳代0.24,40歳代0.76,50歳代2.41,60歳代4.78,70歳代7.45,80歳代10.22であり,女性30歳代0.07,40歳代0.03,50歳代0.48,60歳代1.06,70歳代3.06,80歳代7.32であった.結論:我々は健診データを利用して30歳から89歳の日本人一般住民を対象として年齢階級別心房細動有病率と罹患率を算出した.若年者の心房細動有病率と罹患率は本報告が初めてであり,若年者から高齢者までの一般住民の心房細動有病者を健診データを用いて明らかにした.心房細動有病者への医療機関への受診勧奨により脳心血管疾患発症リスク低減を図るとともに,若年中年者でも観察された心房細動を減らすための生活改善の対策を講じる必要があると考えられた.
著者
鈴木 朋子 今井 瑞香 窪田 素子 北 嘉昭 土田 知宏
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.22-29, 2015 (Released:2015-09-29)
参考文献数
15

目的:腫瘍マーカーは早期がんでは上昇しにくい,偽陽性が多いなどの理由から,スクリーニングには不適格と考えられている.今回CA19-9について,受診者への適切な情報提供・精査への案内に役立てるデータを得るために,当センターでのCA19-9陽性的中率と高値例の傾向を検討した.対象:2006年1月から2013年6月までに,当センター人間ドックでCA19-9を測定した延べ32,508例中,高値(>37.0U/mL)を呈した延べ790例のうち,人間ドック高値後に計2回以上,当院(病院もしくは当センター)でCA19-9の再検を施行した320例を検討対象とした.方法:CA19-9はARCHITECT® アナライザー i 2000SR(アボット,東京)CLIA法にて測定し,正常値:0.0~37.0U/mLとした.結果:8症例にがんを認めた.内訳は膵臓がん4例,胆嚢管がん1例,十二指腸がん2例,大腸がん1例だった.8症例のがん診断時のCA19-9値の中央値は,198.2(46.4~2,968)U/mLだった.うち5例には過去に正常値の記録があり,残る3例は初回指摘だった.陽性的中率は2.5%だった.結論:CA19-9陽性的中率は2.5%と低率のため,CA19-9高値例を全例精査するのは非効率的だが,CA19-9高値とその推移だけで要精査群の抽出は困難と思われた.今後,臓器特異性の高いmicroRNAとの併用など,より効果的ながんスクリーニングの選択肢が増えることを期待する.