著者
新井 俊彦
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
健康医学 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.168-173, 1999-08-01 (Released:2012-08-27)
参考文献数
8
被引用文献数
1

肥満の指標として,肥満度,BMIおよび体脂肪率が用いられている。肥満度とBMIは相関が良いのでどちらか一方でよいが,体脂肪率は個々の体重の特徴を知るために必要であることを示した。また,肥満と高血圧,高尿酸血症,肝障害,高脂血症,糖尿病のように,それぞれの疾患の患者での集計から結論された事象は,ほとんど正常な人間ドック受診者の成績解析でも得られることが判った。更に,些細に疾患としての関係が解析されていないものについても解析できた。
著者
池谷 佳世 武藤 繁貴 若杉 早苗 池田 孝行 平野 尚美
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.66-73, 2022 (Released:2022-09-15)
参考文献数
20

目的:当センターの人間ドック食は,「おいしく楽しく学べる食育レストラン」をコンセプトに提供している.フレイル認知度向上を目指し,看護大学と人間ドック食を共同開発した活動報告と,フレイル予防食の実行実現性について探ることを目的とした.方法:2021年3月からの1ヵ月間人間ドック食を喫食した1,422名のうち,1,242名(有効回答率87.3%)を調査対象とした.フレイル予防に関する10食品群を含んだ人間ドック食を看護学生とともに考案し,対象者に食生活改善項目や,考案者の想いが伝わるよう学生の写真が掲載された「メニュー表」を配布した.人間ドック食喫食時に,フレイルの認知度および予防食の実行実現性に関するアンケート調査を行った.食事アンケートは,男女別および60歳以上,未満で比較した.結果:フレイルの認知度は約15%で,男性では女性より有意に低かった.男女ともに60歳未満,以上での差はほぼみられなかった.フレイル予防の食事の実行実現性は,「一日3食食べる」や「よく噛む」は80%程度と高かったものの,「予防の10食品群を意識する」は27.4%と低かった.フレイル予防食の満足度は90%以上と高かった.結論:人間ドック利用者のフレイルの認知度は低かったが,人間ドック食が理解度の向上や栄養改善の契機となることが示唆された.今後,全年代における認知度を上げる介入と,10食品群を意識できる保健指導の構築が課題である.
著者
加藤 大地 馬嶋 健一郎 金山 美紀 抱井 昌夫 篠田 誠 村木 洋介
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.421-425, 2021 (Released:2021-12-01)
参考文献数
3

目的:海外からの人間ドック受診者が増加している一方,その後の精検受診結果が把握しにくく,全体の精検受診率にもマイナスの影響を及ぼす懸念がある.精検受診率向上は,人間ドックの精度管理において重要な要素である.本研究は,外国人の精検受診が未把握となっている現状を分析し,受診率向上の対策を考える際の基礎資料とするため,海外からの受診者が精検受診率にどのくらいの影響があるかについて調査した.方法:2018年度1年間に人間ドックを受診した8,504名(うち外国人受診者2.5%,210名)を対象とし,検査数や要精検者における外国人割合や精検受診率において外国人の受診未把握がどのように影響しているかを調査した.本検討における外国人の定義は,日本国籍を有しない者かつ海外に居住している者とした.結果:要精検者のうち外国人の割合が高かった上位3つの検査について,全受診者の外国人割合,要精検者の外国人割合を示すと,大腸内視鏡検査で6.3%(106/1,686),7.1%(12/170,要治療者含む),乳がん検査で2.8%(68/2,414),6.5%(3/46),PSA検査では6.1%(114/1,881),4.7%(5/107)であった.精検受診率を日本人,外国人,両方合わせた全体で示すと大腸内視鏡検査で91.8%(145/158),16.7%(2/12),86.5%(147/170),乳がん検査で93.0%(40/43),0.0%(0/3),全体87.0%(40/46),PSA検査では78.4%(80/102),0.0%(0/5),74.8%(80/107)であり,3つの検査すべてにおいて日本人と外国人で有意差を認めた(p<0.001,p=0.01,p<0.001).精検受診にカウントできない者における外国人割合は大腸内視鏡検査で43.5%(10/23),乳がん検査で50.0%(3/6),PSA検査で18.5%(5/27)に及んだ.結論:外国人の精検受診状況が追跡できていないことによる未把握分が,全体の精検受診率低下に影響することが明らかとなった.外国人の精検受診を把握するためのフォローアップ方法について対策を立てる必要がある.
著者
齋藤 良範 柴田 香緒里 安達 美穂 後藤 明美 阿部 明子 庄司 久美 正野 宏樹 荒木 隆夫 齋藤 幹郎 横山 紘一 後藤 敏和 菊地 惇
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.47-53, 2020 (Released:2020-10-07)
参考文献数
10

目的:心房細動(atrial fibrillation: AF)は,血栓性脳塞栓症の原因疾患であり予防には抗凝固療法が有用である.高齢者ほど有病率は増加するとされることから,健康診断受診者における有病率および治療の現状を把握し経年推移を検討した.方法:2017年度の受診者175,462(男性86,923,女性88,539)名の12誘導心電図(心電図)所見から,性・年代別のAF有病率および問診票より治療率を算出した.また,2013年から2017年度まで5年間のAF有病率の推移を検討した.結果:AF有病率は1.13(男性1.81,女性0.47)%で,加齢に伴い増加し各年代とも男性が高率であった.治療率は,60歳未満55.7%,60歳代68.8%,70歳代66.6%,80歳以上63.9%で,60歳未満で低かった.CHADS2スコアが1以上となる75歳以上では65.0%であった.AF有病率の経年推移は,2013年度1.03%,2014年度1.04%,2015年度1.10%,2016年度1.12%,2017年度1.13%と増加傾向が認められたが,男女別の年齢調整後の有病率には差を認めず受診者の高齢化が原因と考えられた.結論:AF有病率は1.13%で,男性に多く高齢になるほど増加した.60歳未満では未治療者が多く75歳以上でも35%は未治療であり,加療の必要性を啓発していく必要がある.
著者
長谷部 靖子 尾上 秀彦 松木 直子 渡邉 早苗 八木 完
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.603-611, 2020 (Released:2021-03-31)
参考文献数
15

目的:近年,我が国における急速な高齢化や生活様式の欧米化により,脳心血管病(cerebral cardiovascular disease: CVD)が増加しており,CVDへの取り組みは喫緊の課題になっている.今回,腹部超音波検査で得られた腹部血管の所見について調査し,今後の健診における課題を検討した.方法:2015年度から2017年度に健診腹部超音波検査を受検した10,594名を対象とし,腹部動脈の所見と背景因子を調査した.結果:腹部超音波検査にて指摘した所見は,腹部大動脈瘤8名(0.08%),総腸骨動脈瘤4名(0.04%),内臓動脈瘤6名(0.06%)(脾動脈2名,腎動脈3名,右胃大網動脈1名)であった.また,腹部大動脈の穿通性アテローム性潰瘍(penetrating atherosclerotic ulcer: PAU)は10名(0.09%)に認めた.粥状硬化は腹部大動脈と腸骨動脈病変で強く,内臓動脈瘤では目立たなかった.結論:健診腹部超音波検査で動脈疾患を指摘することは,CVDによる死亡率の減少と健康寿命の延伸のために意義がある.内臓動脈瘤の指摘には嚢胞と確信の持てない無エコー腫瘤に対して,カラードプラやFast Fourier Transform 解析(FFT解析)を行うことが重要である.腹部大動脈の走査では,腹腔動脈,上腸間膜動脈,腎動脈の起始部や腸骨動脈の狭窄評価,特に粥状硬化が目立つ症例では血管内膜下の低エコーの有無を確認しながら可能な限り腸骨動脈末梢まで走査することがPAUの前駆病変やPAU,動脈瘤の評価には必要である.
著者
志賀 朋子 志賀 清彦 菊池 式子 東岩井 久 米田 真美 関口 真紀 石垣 洋子 森山 紀之 小澤 信義
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.525-529, 2017 (Released:2017-12-22)
参考文献数
4

目的:当施設では2014年4月より婦人科検診の精度向上のため子宮頸部擦過細胞診をThinPrep法による液状化細胞診(liquid based cytology:以下,LBC法)に変更した.今回我々は,従来法とLBC法との検出率の比較を行い,LBC法の効用について報告する.対象と方法:当施設で実施した子宮頸部擦過細胞診について,2013年(1~12月)の20,341件従来法と2015年(1~12月)の21,690件LBC法を対象とした.不適正標本出現率と異型細胞診検出率を比較した.LBC法はThinPrep法(オートローダ―)を使用した.結果:不適正標本出現率は従来法0.39%,LBC法0.10%,異型細胞検出率はASC-US(Atypical squamous cells of undetermined significance):従来法0.84%,LBC法0.77%,ASC-H(Atypical squamous cells cannot exclude HSIL):従来法0.01%,LBC法0.03%,LSIL(Low-grade squamous intraepithelial lesion):従来法0.30%,LBC法0.60%,HSIL(High grade squamous intraepithelial lesion):従来法0.22%,LBC法0.29%であった.考察:LBC法は従来法と比べ,不適正標本出現率を軽減した.LBC法は細胞回収率を高く保ち,標本作製までの技術差を解消できたことが要因であると考えられる.鏡検過程でのスクリーナーの負担軽減やLBC法への移行に伴う細胞所見の観察に関する研修も必要であると考える.その反面デメリットは初期投資やランニングコストの増加,血液の前処理などの増加がある.結語:LBC法への移行は不適正標本の減少,異型細胞検出率の向上をもたらし,鏡検時間の短縮など,細胞検査士の負担も軽減したと考える.
著者
ルネ・ デュ・クロー 岡部 夕里
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.615-626, 2011 (Released:2012-03-28)
参考文献数
36

目的:著者らはオランダの公立病院を会場として,主に在蘭日本企業の社員とその家族を対象とした「在蘭日本人健康診断」を行っている.オランダ在住の日本人ではライフスタイルの変化により脂質値など動脈硬化性疾患リスク因子への影響が考えられる.本研究では,在蘭日本人駐在員におけるリスク因子分析およびリスク評価の結果に基づき,予防的見地からの脂質管理の重要性を明らかにする.方法:2003年1月から2010年9月までの間に実施された在蘭日本人健康診断の30歳以上の初回参加者,男性657名,女性513名の合計1,170名を対象に,性別と年齢,BMI,血圧,脂質値,空腹時血糖,喫煙,冠動脈疾患の家族歴,運動習慣,飲酒量の各データについて検討した.このデータに基づき,脂質を始めとする動脈硬化性疾患の危険因子を分析し,日本の既存のデータと統計的に比較した.結果:年齢調整後,LDLコレステロール,総コレステロール/HDLコレステロール比,空腹時血糖が本研究対象者の男性で日本のデータに比べ有意に高かった.また,高LDLコレステロール血症の有病率が他の危険因子を大きく上回った.男性の他の危険因子および女性では,本研究対象者が日本在住者より良い結果であった.結論:本研究対象者では脂質異常が動脈硬化性疾患の主な危険因子であり,他の因子の関与は少なかった.したがって,健康指導においては脂質管理に重点を置くべきである.
著者
奈良 昌治 新井 康通 小松本 悟 谷 源一
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
健康医学 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.120-124, 1996-08-30 (Released:2012-08-27)
参考文献数
10
被引用文献数
2

我々は栃木県警察管内における自宅入浴事故死と温泉入浴事故死の2群に分けて,平成5年と平成6年について統計的に考察を行うことができた。自宅入浴事故死279例,温泉入浴事故死55例を対象とした。温泉入浴事故死は男性に多く,比較的壮年層に多かった。入浴事故死はいずれも冬期に多く,夏期に少ない傾向にあった。温泉入浴では自宅入浴に比べ,基礎疾患を持たない入浴突然死の割合が有意に高かった。
著者
新 啓一郎 美並 真由美 石川 豊 首藤 真理子 松本 洋子 庄司 きぬ子 石坂 美智子 加治 清行 小﨑 進 藤間 光行 萎沢 利行
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.608-615, 2013 (Released:2014-03-28)
参考文献数
17

目的:高齢者では,自律神経系の調節障害により起立性低血圧を来しやすいことが知られている.本研究では,仰臥位から座位への体位変換に伴う血圧の変化を調べ,年齢および高血圧との関連を検討した.方法:2010年に健診を受診した8,862人(男性5,325人,女性3,537人)を対象とした.安静仰臥位で血圧を測定し,つぎに座位への体位変換1分後に血圧を測定した.一部のものでは1分間隔で座位5分後まで測定した.1分後の血圧変化と年齢および臥位血圧との関係を調べた.全対象者を男女別に座位1分後の収縮期血圧変化量により4群に分け(Ⅰ群:≧10mmHg,Ⅱ群:9~0,Ⅲ群:-1~-9,Ⅳ群:≦-10),さらに10歳ごとの年齢層別に分けて高血圧,脂質異常症および耐糖能異常との関係を比較した.結果:血圧は体位変換1分後より低下し,5分後まで低下していた.1分後の血圧変化と年齢および臥位血圧との間には負の相関関係が認められた(年齢:男性r=-0.201,女性r=-0.180,ともにp<0.001,臥位血圧:男性r=-0.397,女性r=-0.361,ともにp<0.001).男性では40歳以上,女性では40~69歳で,Ⅳ群においてⅠ~Ⅲ群よりも高血圧を有するものの割合が多かった.結論:体位変換による血圧低下は加齢や血圧増加と関連があり,さらに,血圧低下の大きかったもので年齢が高く,高血圧を有するものの割合が多かったことより,その機序には加齢や高血圧による自律神経系の調節障害の関与が考えられる.
著者
小野寺 博義 鵜飼 克明 岩崎 隆雄 渋谷 大助 松井 昭義 小野 博美 町田 紀子 阿部 寿恵
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
健康医学 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.211-214, 2000

1991年度から1998年度までの宮城県対がん協会の腹部超音波検査を併用した成人病健診(現在はがん・生活習慣病検診)受診者を対象として,脂肪肝の頻度およびBMIと血液生化学検査結果の変化を検討した。脂肪肝の頻度は16.6%から32.6%と7年間で2倍となった。総コレステロール,中性脂肪も有意に上昇しているのが確認された。生活習慣指導に役立つ事後指導システムの開発が急務である。
著者
福田 恵津子 山本 真千子 玉腰 久美子 斉藤 由美子 赤松 曙子 高橋 宣光 飯沼 宏之 加藤 和三
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
健康医学 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.99-103, 1999

人間ドック受診者におけるトレッドミル運動負荷試験施行例の5年間経過観察例について検討した。初回から陽性のまま変化しなかった例,経過中陽性に変化した例,初回から陰性のまま変化しなかった例の3群に分類した。虚血性心疾患発症の有無については,アンケート調査例も含め検討した。上記の3群については虚血性心疾患の発症は見られなかったが,アンケート調査例の中で,発症の回答が3例に見られた。
著者
髙島 周志 竹中 博美 泉 由紀子 齋藤 伸一 住谷 哲 中村 秀次 佐藤 文三
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.44-49, 2010 (Released:2013-02-28)
参考文献数
20

目的:非アルコール性脂肪性肝障害(Nonalcoholic Fatty Liver Disease:以下,NAFLD)の患者の多くでインスリン抵抗性を示すことが報告されてきている.しかし,インスリン抵抗性がNAFLDの原因なのか結果なのか,脂質代謝に如何に関与するのか,抵抗性がインスリン作用発現機構のどのステップで生じているのか等は不明な点が多い.今回我々は人間ドック受診者を対象に,NAFLDにおけるインスリン抵抗性が生じる機構について検討した.方法:当センターを2008年に受診した3,698名の中で,アルコール飲酒の習慣がなく,糖および脂質に関する薬を服用していない男性521名,女性575名を対象とした.インスリン抵抗性の指標としては,糖代謝関係のHOMA-Rと,脂質関係のTG/HDL-Cを用いた.脂肪肝の有無は腹部超音波検査で判定した.結果:HOMA-R値上昇とともに脂肪肝の発生頻度も上昇した.一方TG/HDL-C値上昇とともに脂肪肝の発生頻度も増加し,ROC解析でTG/HDL-C値はHOMA-Rと同等の脂肪肝検出能を持っていた.結論:NAFLDの発生頻度はHOMA-R値上昇につれ増加し,インスリン抵抗性はNAFLDの病態に関与することが示唆された.また,インスリン抵抗性はレセプター以降の,糖質制御経路と脂質制御経路の分岐以降で生じていると考えられた.
著者
三上 理一郎 柳川 洋 河部 康男 宮城 隆 伊原 利和 秋山 一男
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
健康医学 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.11-14, 2000-06-01 (Released:2012-08-27)
参考文献数
12

人間ドックを受診した男性2,675例のデータベース分析により,本態性低血圧の基準値を収縮期低血圧109mmHg以下と境界域低血圧110~119mmHgに分けた。低血圧群でオッズ比1以上は,検査所見;やせ,胃下垂,中性脂肪値55mg/dl以下,愁訴;疲れやすい・だるい,朝ファイトがでない,便秘,めまい・立ちくらみ,罹患疾患;広義の神経症,アレルギー性鼻炎,消化性潰瘍。以上,低血圧群の臨床的特徴と考える。
著者
船津 和夫 山下 毅 本間 優 栗原 浩次 斗米 馨 横山 雅子 細合 浩司 近藤 修二 中村 治雄
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.32-37, 2005-06-30 (Released:2012-08-20)
参考文献数
13
被引用文献数
1

目的・方法:近年,男性において,肥満者の増加に伴い生活習慣病の1つである脂肪肝罹患者数の増加が著しい.最近,非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)やC型肝炎において瀉血療法により血中ヘモグロビン(Hb)を低下さることにより,肝細胞障害の改善とともに,肝細胞内の脂肪滴貯留が改善することが報告され,肝炎や脂肪肝において肝臓に蓄積した鉄がこれらの病態に関与していることが明らかにされてきた.しかし,脂肪肝と血中ヘモグロビンとの関係についてはこれまで検討されていない.そこで,中年男性を対象として,血中ヘモグロビン値と脂肪肝との関連について調査した.結果:非肥満者,肥満者ともに脂肪肝を有する群が無い群に比べ,血中ヘモグロビン値は有意に高値であった.また,血中ヘモグロビンの高値は肥満の有無にかかわらず,脂肪肝における肝機能検査値の異常にも関係していることが示された.さらに,ロジスティック回帰分析より,血中ヘモグロビンは飲酒量,肥満度とともに,独立した脂肪肝の関連因子であることが明らかにされた.結論:以上より,血中ヘモグロビンに含まれている鉄が間接的に脂肪肝の発症とそれに伴う肝機能障害に関連していることが示唆された.
著者
小松 淳子 折津 政江
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
健康医学 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.53-56, 1998-05-30 (Released:2012-08-27)
参考文献数
8

総胆管拡張は肝胆膵の病変の早期発見に重要な所見だが,軽度拡張例の評価は難しい。ドック受診者の検討では,総胆管径には性別,年齢体格,他の超音波所見,既往歴が関与した。8mm以上は5.6%で,経過中8%に新たな超音波所見がみつかったが,ほとんどが8-9mmの軽度拡張例であった。ドックでみられる無症候性の軽度拡張例においては,他の超音波所見を見落とさないよう念入りな経過観察を行うことが重要と考える。
著者
石井 史 屋代 庫人 田中 美紀 杉山 茂樹 橋本 洋
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
健康医学 : 日本人間ドック学会誌 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.590-594, 2004-12-20
参考文献数
9

目的:炎症性腸疾患の患者は増加してきており,特に潰瘍性大腸炎は人間ドックの便潜血反応陽性を契機に発見されることがある.方法:ドックの便潜血反応陽性で発見された潰瘍性大腸炎の例を呈示し検討した.結果:ドックの便潜血反応陽性で大腸検査をした症例201人中の2例(1%)に潰瘍性大腸炎を認めた.この2症例はともに軽症例(直腸炎型,左側大腸炎型)であり,迅速に治療を開始し,治療経過は良好であった.診断後に問診を詳細に取り直してみると,潰瘍性大腸炎によると思われる症状があっても気付いていなかったり,血便は痔からによるものと自己判断していた.結論:便潜血反応検査は大腸癌のスクリーニングが主たる目的であるが,潰瘍性大腸炎症例の増加に伴い,ドックの便潜血反応陽性を契機に診断される症例が増えると予想される.潰瘍性大腸炎を無症状あるいは軽い症状で発見できることは有意義であり,ドックで行っている便潜血反応検査もその一助を担っていると思われる.
著者
大澤 千鶴 杉山 方樹 岡山 政由 岡山 義雄 佐藤 祐造
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
健康医学 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.147-151, 1988-07-30 (Released:2012-08-27)
参考文献数
8

「人間ドック」において尿中食塩濃度測定の意義を追求する目的で,人間ドック受診者と,食事指導を十分に行なっている糖尿病外来患者と比較し検討した。栄養指導の行われている糖尿病外来患者は尿中食塩濃度が低く,尿中食塩濃度の低い群は,あきらかに肥満度も低かった。「ソルトテープ」を用いた短時間で簡易に実施可能な尿中食塩濃度測定は,人間ドックにおける検査項目としてきわめて有用であると考えられる。