著者
加藤 裕美佳 藤井 晴代 吉田 徹 佐尾 浩 長尾 和義 二村 良博
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.527-532, 2008-09-30 (Released:2012-08-20)
参考文献数
11
被引用文献数
2

目的:ストレスを感じている受診者の生活習慣,ドック検査結果の傾向およびそれらの3年間の推移を分析し,ストレスの健康に及ぼす影響を検討した.方法:2004年1月から2006年12月までに一日人間ドックを受診した3,244名(男性2,242名,女性1,002名)において,「ストレスがたまっていると感じることがありますか?」の問いの回答により,A群:いいえ,B群:少しある,C群:かなりある・常にある,の3群に分けて検討した.結果:C群は,約15%で,A群,B群と比較し,平均年齢は低く,若い会社員,若い主婦が多い.生活習慣は,趣味は少なく,笑いが少なく,運動しない傾向にあり,さらに睡眠障害の訴えが強く,多彩な身体症状を自覚している。検査結果に異常を認めない割合は高いが,3年間の経過で,約70%に新たな異常所見を認めた.異常所見のうち,早期に出現し,一番頻度が高かったのは,脂質異常であった.慢性的なストレスと睡眠障害を訴えるC群の14.6%が不眠症を含む精神疾患の治療を受けていた.結論:若い世代では,ドックの検査結果上,特に異常を認めないことが多いが,ストレスを感じ,睡眠障害の訴えがある場合は,経過とともに異常所見が出現し,身体的,精神的疾患を生じてくる可能性が高い.睡眠障害の訴えは特に重視し,健診が,心療内科,精神神経科などへの早期受診,指導,治療へとつながってゆく架け橋となる必要がある.
著者
横山 久光 松岡 孝 佐々木 昭 斎藤 公男 姫井 孟
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
健康医学 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.234-238, 1997-10-30 (Released:2012-08-27)
参考文献数
12

高ヘマトクリット血症(血液濃縮)は脳血管障害・虚血性心臓病の一大危険因子とされているが,今回人間ドック受診者9,745名における多血症(赤血球増加症)40症例について検討した。全例男性で,0.41%の低頻度なるも,高血圧・高脂血症・耐糖能異常・肥満・心血管系病変の合併症が多彩にみられた。症例の大部分のストレス赤血球増加症ではライフスタイル改善も考慮した経年的な長期追跡が重要で,リスクファクターとしての臨床的意義が大と考えられた。
著者
村尾 敏 岡 翼 長町 展江 本多 完次 荒川 裕佳子 森 由弘 厚井 文一
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.65-70, 2010 (Released:2013-02-28)
参考文献数
9

目的:日本人のLDL-コレステロール/HDL-コレステロール(L/H)比の分布と動脈硬化危険因子との関連を検討する.方法:対象は2004年に当院人間ドックを受診した3,717名.これらから,検討1):糖尿病・高血圧・高脂血症の治療を受けていていないもの,検討2):body mass index(BMI),血圧,種々の代謝因子がすべて2008年人間ドック学会ガイドラインの基準内のもの,検討3):検討1対象者のなかでLDL-コレステロールが139mg/dL以下であるもの,を抽出しL/H比と他の動脈硬化危険因子を検討.結果:L/H比は検討1,検討2,検討3でそれぞれ2.24±0.88,1.46±0.42,1.90±0.67でありすべての群で性差(男性が高値)を認めた.検討2対象者のL/H比の90パーセンタイル値は2.02(男性2.25,女性1.77)であった.LDL値が比較的低値の集団(検討2,3)ではL/H比はLDL値よりHDL値に大きな影響を受けていた.LDL値が139mg/dL以下であってもL/H比が高値のものは低値のものより高感度CRP値が高値であった.結論:BMI,血圧,種々の代謝因子がすべて人間ドック学会ガイドライン基準内にある者のL/H比の90パーセンタイル値は2.02であった.LDL値が低値でもL/H比高値のものはL/H比低値のものより動脈硬化の危険因子が高度である可能性がある.
著者
尾上 秀彦 長谷部 靖子 渡邉 早苗 八木 完
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.478-485, 2018 (Released:2018-12-31)
参考文献数
17

目的:近年,非アルコール脂肪性肝疾患(Nonalcoholic Fatty Liver Disease:NAFLD)やアルコール性肝障害(Alcoholic Liver Disease:ALD)の増加に伴う肝硬変,肝細胞がんが問題になっている.そこで,腹部超音波検査で脂肪肝の評価を行い,生活習慣病関連項目との関係を検討した.対象:2015年度に健康診断にて腹部超音波検査を受検した5,436名を対象にした.脂肪肝の有無を評価し,脂肪肝をNAFLDの飲酒量である少量,中等量,ALDの飲酒量である多量の3群に分類した.結果:脂肪肝は男性の約46%,女性の約22%に認められた.BMIや腹囲,血圧,糖代謝,肝機能検査は,脂肪肝がない群と比較して3群とも有意に高値であった.また飲酒量による比較では,飲酒量が増えるにつれ,TGやHDL-C,肝酵素の上昇を認めた.生活習慣に関する検討では,性別や飲酒量に関わらず,脂肪肝では「20歳から10kg以上体重増加」が独立して影響し,男性ではNAFLDは「1回30分以上の運動を週2回以上,1年以上」のないこと,中等量やALDは「就寝前2時間以内の夕食が週に3回以上」が独立して影響していた.結論:若年時から生活習慣に対しての介入,飲酒量も加味した保健指導が重要である.
著者
佐々木 紘一 本藤 裕 岸井 利昭
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
健康医学 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.551-555, 2004-12-20 (Released:2012-08-27)
参考文献数
7

目的:人間ドックの尿定性検査について特に尿潜血反応はどこからを有意ととるべきかについて検討する方法:神奈川県労働衛生福祉協会で,平成14年10月1日~15年9月30日の間に人間ドックを受けた男性3,685人,女性1,811人,計5,496人の尿定性所見について検討した.結果:尿潜血+以上の陽性率は,男性13.1%,女性32.2%であった.また,尿潜血2+以上としたときの陽性率は,男性4.4%,女性14.4%であった.尿蛋白+以上の陽性率は,男性5.5%,女性2.3%であった.尿糖+以上の陽性率は,男性1.3%,女性0.3%であった.結論:腎機能障害は,尿潜血陽性率よりも,尿蛋白陽性率との間により関連性があると思われた.現在用いられている試験紙による方法では,尿潜血反応2+以上を有意と判定するのが妥当と思われた.尿潜血反応+の場合,まず尿沈渣を調べ,赤血球が少数のときは軽度異常とすべきである.尿中赤血球5-6/HPFが尿潜血反応+に相当するような尿試験紙があれば,最も理想的であろう.
著者
茂木 智洋 永田 浩一 藤原 正則 村岡 勝美 飯田 直央 那須 智子 増田 典子 小倉 直子 島本 武嗣 光島 徹
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.22-28, 2013 (Released:2013-09-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1

目的:大腸3D-CTを異なる一定線量あるいは自動露出機構で撮影し,適正撮影条件を被ばく線量と画質から比較検討した.方法:任意型検診として大腸3D-CTを受診した836名を対象とした.64列CTの撮影条件を一定線量のA群:50mAs,B群:75mAs,C群:100mAs,そして自動露出機構のD群:Volume EC,SD20の4群とし,各群の平均被ばく線量を算出した.各群をさらにBMI(20未満,20以上25未満,25以上30未満,30以上)別に分けて平均被ばく線量と線量不足による画質劣化の有無を評価した.結果:各群の平均被ばく線量はA群で10.7mSv,B群で16.0mSv,C群で20.7mSv,D群で5.4mSvとなり,撮影線量を一定線量としたA~C群よりも自動露出機構のD群で平均被ばく線量が低かった.A~C群の各群では,BMIが高くなるにつれ撮影範囲が長くなることにより平均被ばく線量が高くなる傾向にあった.D群ではさらに体厚に合わせて線量が自動調整されるためBMIの違いによる変化が大きくなった.線量不足による画質劣化のために読影不能となる症例は全群で認めなかった.結論:自動露出機構群は一定線量群と比べると,読影に支障を来すことなく個人に適した線量が自動調整されることにより,平均被ばく線量を抑えることができた.適切な自動露出機構を設定し撮影することは臨床上有用であると考えられた.
著者
馬嶋 健一郎 佐々木 美和 星野 絵里 島本 武嗣 村木 洋介
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.476-481, 2017 (Released:2017-12-22)
参考文献数
24

目的:健診の尿検査において,随時尿と早朝尿での尿蛋白陽性率,尿潜血陽性率および運用面での変化を検討した.方法:亀田メディカルセンターの健診受診者のうち,2012年6~10月までの随時尿群2,619名と,2013年6~10月までの早朝尿群2,512名を対象とした.主要な評価項目として随時尿群と早朝尿群の尿蛋白陽性率を比較し,尿蛋白を減少させる要因についてロジスティック回帰分析にて検討した.副次的評価項目として,尿潜血陽性率の変化を検討し,運用面の変化や受診者の流れなどを調査した.結果:尿蛋白陽性率は随時尿群3.9%(102/2,619),早朝尿群1.8%(45/2,512)であり,有意に早朝尿において低かった.また,ロジスティック回帰分析では,早朝尿は尿蛋白陽性率低下の独立した要因だった.尿潜血陽性率は随時尿群で陽性は6.2%(162/2,619),早朝尿群では1.8%(45/2,512)であり,有意に早朝尿において低かった.運用面では,早朝尿導入で看護スタッフの問診終了時間が早くなった.結論:随時尿に比べ,早朝尿検査は尿蛋白陽性率を減らすことができ,運営面では人間ドックの流れがスムーズになることが期待される.
著者
加藤 智弘 伊藤 恭子
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.7-21, 2018 (Released:2018-08-16)
参考文献数
89

近年の大腸がんの高い罹患率により大腸がんによる死亡率も高くなり,現在のところ,がん死亡率でみると,男性では3位,女性では1位となっており,診断・治療とともに,その発見も重要な課題項目といえる.その点で大腸がん検診スクリーニングは大きな役割が期待されている.しかしながら,毎年ある程度の受診件数があるものの,精密検査対象者の受診率は他のがんと比較すると圧倒的に低い.このような背景のもと,本稿では大腸がん検診スクリーニングに関する現状と,関連する多くの検査手段について概観した.すなわち,検診のうち,対策型検診で中心となる便潜血検査法について,また,任意型検診,あるいは対策型検診の精密検査対象者への検査として,従来の検査法に加えて,新たな有力な検査法のいくつかについても概説を行った.これらの検査のメリット・デメリットを十分に理解することで,検診受診者に対しては,その情報を還元することにより,結果として,大腸がんの発見,ひいては死亡率の低下をもたらすことに繋がると思われる.
著者
海瀬 俊治 菅野 久美子 安達 清子 阿部 雅子 服部 修作 丹治 義勝 富田 健 柵木 智男 松川 明
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
健康医学 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.67-70, 1993-10-20 (Released:2012-08-27)
参考文献数
13

人間ドックにおける梅毒血清反応生物学的偽陽性(BFP)例について検討した。1989年度から1991年度までの3年間に当所人間ドックで受診した14,337名中26名(0.18%)にBFPが認められた。BFP例の検査成績や質問表を検討したところ,習慣性流産や血小板減少などより4例が抗リン脂質抗体症候群と考えられた。BFP例に遭遇した場合のこのような症候群の存在についても考慮すべきと思われた。
著者
船津 和夫 斗米 馨 栗原 浩次 本間 優 山下 毅 細合 浩司 横山 雅子 近藤 修二 中村 治雄
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.811-817, 2008-03-31 (Released:2012-08-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1

目的:医療機関受診者に比べ一般健康人により近い健診受診者を対象として,胃食道逆流症(gastroesophagealreflux disease:GERD)の実態調査を施行した.方法:上部消化器疾患で治療中の人を除いた胃内視鏡検査受診者659名(男性368名,女性291名)を対象とした.内視鏡所見とfrequency scale for the symptoms of GERD(FSSG)問診票のスコアを基に対象者をびらん性胃食道逆流症(erosive gastroesophageal reflux disease:e-GERD),非びらん性胃食道逆流症(nOn-erosivegastroesophagealreflux disease:NERD),非GERDの3群に分け,各群の性別発見頻度と血糖,血清脂質,高感度C-反応性蛋白(CRP)などの生活習慣病関連因子,血圧,ならびにメタボリックシンドロームの合併率を比較検討した.結果:NERDの頻度は男女ともe-GERDより多かった.e-GERDは女性より男性に高頻度でみられ,NERD,非GERDに比べ,血圧が高く,血糖,血清脂質,高感度CRPなどがより高値を呈し,メタボリックシンドロームの合併率が高かった.一方,NERDはやぜ気味の人に多くみられ,血糖,血清脂質,高感度CRP,血圧は非GERDよりもさらに低値を示し,メタボリックシンドロームの合併率も3群のなかで最も低かった.結論:e-GERDは肥満に起因する生活習慣病の1つと考えられたが,NERDはやぜ気味の人に多くみられ,生活習慣病関連因子の異常が少ないことから,e-GERDとは異なる病態を有することが示唆された.
著者
豊田 将之 村本 あき子 津下 一代
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.39-47, 2016 (Released:2016-09-29)
参考文献数
12

目的:多量飲酒者に対する特定保健指導の効果を検証するため,特定保健指導の初回支援から6ヵ月後の飲酒習慣と検査データについて検討を行った.方法:同一健康保険組合の積極的支援終了者のうち,今回初めて特定保健指導に参加した男性555名を対象とした.特定保健指導の初回支援時(以下,初回支援時)に飲酒量を確認した.毎日飲酒・エタノール量40g/日以上群,毎日飲酒・エタノール量40g/日未満群,飲酒時々・なし群の3群に分け,特定健康診査時の検査データを群間比較,保健指導前後の検査データの群内比較を行った.さらに,毎日飲酒・エタノール量40g/日以上群内で,6ヵ月後のエタノール量20g/日以上減酒の有無,初回支援時の減酒計画立案の有無によりそれぞれ2群に分け,6ヵ月後までの検査データ変化量の群間比較を行った.保健指導の方法は3群で共通であり,初回はグループ支援で実施した.結果:特定健康診査時には3群間で体重,脂質,肝機能,血糖に有意差があった.保健指導前後比較において3群ともに有意な減量,検査データ改善がみられた.毎日飲酒・エタノール量40g/日以上群のうち減酒の有無2群間比較では,体重減少が減酒あり群で1.81±2.49kgであったのに対し,減酒なし群では0.33±2.46kg減少と有意差を認めた.BMI,腹囲,AST,γ-GTPの各変化量は減酒あり群で有意に大きかった.減酒計画の有無では有意差はみられなかった.結論:特定保健指導による減量および検査データ改善効果は,飲酒量が多い対象者にも一定の効果がみられた.特にエタノール量が20g/日以上減少した群で改善効果が大きかった.
著者
折津 政江 生島 壮一郎 小松 淳子 中本 弘 山本 亮二 村上 正人 桂 戴作
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
健康医学 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.152-156, 1992-07-20 (Released:2012-08-27)
参考文献数
8

人間ドック受診者を対象に,ストレスチェックリスト(以下SCL)と既存の心理テストとの相関を調べ,その有用性を検討した。CMIで神経症傾向が増大するに従いSCL得点は高くなり,SDS,KMIと良好な相関関係を認めた。SCLは自律神経失調症状を中心とした30問から成る問診表であるが,簡便に実施できることからストレスチェックの第一次スクリーニング法として有用であると考えられた。
著者
長岡 芳 鍵小野 美和 藤田 紀乃 和田 昭彦 松井 寛 大橋 儒郁 飯田 忠行
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.539-546, 2011 (Released:2012-03-27)
参考文献数
37

目的:メタボリックシンドローム(以下,MSとする)の診断基準について,腹部CTにおける内臓脂肪面積を至適基準として腹囲判定および腹囲判定後の診断基準の妥当性を検討した.対象と方法:男性194名を対象とした.検査項目は,年齢(歳),身長(cm),体重(kg),BMI,腹囲(cm),最高血圧(mmHg),最低血圧(mmHg),HDLコレステロール(mg/dL),トリグリセリド(mg/dL),空腹時血糖(mg/dL),内臓脂肪面積(cm2),皮下脂肪面積(cm2)とした.内臓脂肪面積を至適基準として腹囲判定の感度・特異度・陽性尤度比を計算し,妥当性を検討した.また,腹囲が異常でかつMS診断基準のうち2つ以上の異常値について,内臓脂肪面積を至適基準としてMS診断基準の感度・特異度・陽性尤度比を計算し,妥当性を検討した.結果:腹囲判定は見落とし率が低く,感度は高値であった.MS診断基準と内臓脂肪面積との関連は見出されなかった.結論:内臓脂肪面積とMS診断基準の関連において,腹囲判定は見落とし率が低く,感度からも有用と考えられる.腹囲判定後の診断基準については検討の必要性が示唆された.
著者
辻 裕之 遠藤 繁之 原 茂子 大本 由樹 天川 和久 謝 勲東 山本 敬 橋本 光代 小川 恭子 奥田 近夫 有元 佐多雄 加藤 久人 横尾 郁子 有賀 明子 神野 豊久 荒瀬 康司
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.563-569, 2015 (Released:2015-12-22)
参考文献数
11

目的:人間ドックにおける尿潜血の意義を検証する.方法:2011年2月からの1年間に虎の門病院付属健康管理センター(以下,当センター)人間ドックを受診した16,018例(男性10,841例,女性5,177例)について尿潜血の結果を集計し,推算糸球体濾過値(以下,eGFR)との関連を検討した.次に2008年から2011年の4年間に当センター人間ドックを受診したのべ58,337例(男性40,185例,女性18,152例)について,腹部超音波検査で腎・尿路結石,またその後の検索を含めて腎細胞がんおよび膀胱がんと診断された例について,受診時の尿潜血の結果を検討した.結果:年齢を含めた多変量解析を行うと,尿潜血とeGFR低値との間には有意な関係を認めなかった.また,超音波上腎結石を有する場合でも,尿潜血陽性を示すのはわずか18.5%に過ぎなかった.さらに,腎細胞がん例で8.3%,膀胱がんでも28.6%のみに尿潜血は陽性であった.結論:人間ドックにおいて尿潜血は従来考えられていたより陽性率が高いが,少なくとも単回の検尿における潜血陽性は,CKDや泌尿器科疾患を期待したほど有効には示唆していないと考えられた.今後,尿潜血陽性例の検索をどこまで行うのが妥当なのか,医療経済学的観点も加味した新たな指針が望まれる.