- 著者
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大村 寛
- 出版者
- 公益社団法人 砂防学会
- 雑誌
- 砂防学会誌 (ISSN:02868385)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.1, pp.17-24, 1975-07-05 (Released:2010-08-06)
- 参考文献数
- 7
1974年5月9日に発生した伊豆半島沖地震による山崩れを, 地震前後に撮影した二組の空中写真によって解析した。半島南部に生じた山崩れの8割は凝灰角礫岩からなる70°~90°の海蝕崖において, 残り2割はやや内陸側の蛇石噴出物からなる60°前後の斜面で見られた。これらの半数以上が過去の崩壊地であった。崩壊個数は震央から遠ざかるにつれて減衰する傾向にあるが明瞭ではなく, 最大振幅が27cm以下になる所で限界になる。また, 崩壊個数の方向性は非凸型斜面で北西を中心にして卓越するのに対し, 凸型斜面ではこれを90°回転した方向に卓越する。一方, 崩壊面積は西と南向き斜面で大きく, 凸型と非凸型の差は小さい。これらの事実を説明するのに傾斜やS波の震動方向は重要な因子ではない。地震 (断層) を生ぜしめた最大圧縮応力の方向に面した斜面が最も崩れやすいと考え, 地震後に確認されたN75°W方向の活断層とNS方向の共役断層からこの主応力方向を求めた。主応力を受ける面から角θ回転した斜面の崩れやすさがcosθに比例すると考えれば, 非凸型斜面での崩壊方向を説明することができる。主応力方向に振動が卓越すれば, 対応する断層に平行な割れ目群 (リニアーメント) のどれかが崩壊と結びつきやすい。また, 割れ目系に規制された地形系で凸型斜面の崩壊方向を理解でき, 割れ目で囲まれたブロックの大きさが崩壊面積の一因子になる。