著者
今村 圭介
出版者
国立大学法人 東京医科歯科大学教養部
雑誌
東京医科歯科大学教養部研究紀要 (ISSN:03863492)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.17-31, 2017 (Released:2018-11-18)

This paper examines the generational change in the use of Japanese loanwords in Palauan. The Japanese occupation of Palau from 1914 to the end of World War II generated inevitable social change which impacted the Palauan people and their language. During this time over 850 Japanese loanwords were adopted into Palauan. Now, seventy years after the end of the Japanese rule,Japanese loanwords still constitute a considerable fraction of the Palauan language. However, the number of Japanese loanwords in use has been gradually decreasing and the meaning of some loanwords is changing. We conducted questionnaires and interviews surveying the use of the 850 plus Japanese loanwords with 6 Palauan natives of different generations. The results suggested that the use and comprehension of the Japanese loanwords vary among the speakers and decline generationally.
著者
包 敏
出版者
国立大学法人 東京医科歯科大学教養部
雑誌
東京医科歯科大学教養部研究紀要 (ISSN:03863492)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.50, pp.13-29, 2020 (Released:2020-05-09)

中国は2000年に高齢化率が7%に達し、高齢化社会を迎えた。20世紀80年代より一人っ子政策を実施し、中国の家族構成は伝統的な多子家族から核家族に変わった。初代一人っ子の親世代が高齢期に入り、伝統的な子世代による老親の家族介護モデルが持続できなくなった。中国政府は2000年以降、高齢化問題の取り組みに力を入れ、数多くの法律、政策を打ち出したが、高齢者介護サービスに関する政策が問題解決に至っていない。2016年6月に中国人力資源・社会保障部は「長期介護保険制度のパイロット事業展開に関する指導意見」を発表し、今後中国全土において介護保険を実施するには高齢者介護サービスの問題解決が不可欠である。本論文は2019年4月16日、中国国務院弁公庁により公布された「国務院弁公庁による高齢者介護サービス発展推進に関する意見」(以下、「意見」と略す)の背景を紹介し、現存の高齢者介護サービスの問題点を指摘したうえ、同「意見」の一部の内容を取り上げ、今後中国都市・農村部における高齢者介護サービスの問題解決の展望をまとめる。
著者
鵜飼 祐江
出版者
国立大学法人 東京医科歯科大学教養部
雑誌
東京医科歯科大学教養部研究紀要 (ISSN:03863492)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.50, pp.67-78, 2020

「近江の君」呼称の初出は、父内大臣の会話文中に見られ、異母姉弘徽殿女御のもとでの宮仕えを機に、女房名のようにして用いられはじめる。「内大臣家のむすめ(姫君)」から女房的な存在へと、彼女の扱いに変化が生じていることを窺わせる。同じく地名に因む呼称に明石の君の「明石」があるが、「明石」は、光源氏の流離と再起の物語を内包する呼称であり、質が異なる。出仕名には、父兄の身分が反映されることが多いが、「近江の君」は父によって、むしろ内大臣家から切り離された存在として呼ばれてゆくものと考えられる。
著者
野口 大斗
出版者
国立大学法人 東京医科歯科大学教養部
雑誌
東京医科歯科大学教養部研究紀要 (ISSN:03863492)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.50, pp.31-39, 2020 (Released:2020-05-09)

日本語の東京方言においては、句頭でピッチの上昇の起こることが広く知られている。ただし、この現象は句頭が重音節、あるいはアクセントのある音節であるときには、観察されない。そこで、本稿では、録音調査のデータにおける句頭の上昇に着目し、東京方言において、/ui/は二重母音を形成すると主張する。
著者
澤野 頼子
出版者
国立大学法人 東京医科歯科大学教養部
雑誌
東京医科歯科大学教養部研究紀要 (ISSN:03863492)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.53, pp.15-24, 2023 (Released:2023-03-24)

ブロメラインはパイナップルに含まれる主要なタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)である。本酵素は、そのタンパク質分解活性やそれに基づく薬理学的作用により、食品、化粧品、医薬品、医療分野で様々に利用されている。本総説では、ブロメラインの生化学的性質を述べるとともに、産業利用および構造機能相関解析に利用するための抽出・精製法に関する研究動向について紹介する。
著者
中島 ひかる
出版者
国立大学法人 東京医科歯科大学教養部
雑誌
東京医科歯科大学教養部研究紀要 (ISSN:03863492)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.51, pp.1-22, 2021 (Released:2021-03-19)

この論考では、フランスのマクロン政権の現在について、失敗と成功の 2 つの側面からその共通項を考察する。現在のマクロン政権に関しては批判も多く、最近では党員の離反による求心力の低下も言われているが、その一方で、コロナ禍からのヨーロッパ復興予算の成立によって、彼の当初からの主張である EU の更なる連帯と強化は現実化されつつあるように見える。これらを個別の政策や彼自身の政治手法に対する評価という観点ではなく、社会や世界に対応した政治構造の変化に対する人々の欲求という観点から考察する時、このプラス、マイナスの 2 面には共通性があるように思われる。それは、環境問題への関心の高まりである。
著者
土佐 朋子
出版者
国立大学法人 東京医科歯科大学教養部
雑誌
東京医科歯科大学教養部研究紀要 (ISSN:03863492)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.77-94, 2017

『懐風藻』所収の大津皇子臨終詩には、複数の類型詩が指摘されている。場面および詩句の構成と表現において、強い類型性が確認されるそれらの臨刑詩は、人々の想像力が生み出す稗史の中に発生し伝承されたと考えられる。個別具体的な生と死のありようが捨象されて用いられる汎用性の高さから、特定個人の臨刑詩の継承ではなく、臨刑詩すべてに先行して、刑死者の最期を飾る決まり文句が存在し、知識人の悲劇を語る口承文芸の中で繰り返し活用され、再生産されたものと推定される。