著者
靑木延春
出版者
国立社会保障・人口問題研究所
雑誌
人口問題研究
巻号頁・発行日
vol.1, no.5, 1940-08
著者
福田 節也
出版者
国立社会保障・人口問題研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

近年、先進諸国では、世帯内におけるジェンダーの平等性が高いほど出生力が高いという傾向が見られつつある。日本では夫婦間の性別役割分業のあり方と出生はどのように関わっているのであろうか。当該年度における研究では、厚生労働省が実施している「21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児)」のデータを用いて、夫婦の性別役割分業と第2子出生との関連についての分析を行い、研究所のワーキングペーパー(http://www.ipss.go.jp/publication/e/WP/IPSS_WPE28.pdf)として刊行した。分析の結果、日本では第1子出生時に妻が専業主婦であった世帯の方が、共働きであった世帯よりも第2子出生確率が高いことが明らかになった。しかし、専業主婦世帯、共働き世帯ともに、夫の育児参加と第2子出生との間には正の関連がみられた。また、妻がフルタイム就業である共働き世帯では、妻の家事頻度と第2子出生との間に強い負の関連が見出され、就業女性の「セカンド・シフト」が出生に対して負の影響をもつことが示唆された。一方で、夫による家事参加は出生に対して全く影響を与えていなかった。ただし、妻が自営業者・家族従業者である場合は、夫の家事参加と第2子出生に正の関連があった。この関連は、夫婦共に自営業である場合に特有のものとみられる。自営業における就業環境、例えば、職場と住居が近接しており、就業時間が柔軟であり、仕事内容における男女差が少ないといった条件が整えば、日本でもジェンダー役割の平等性と出生との間に正の関連が見出される可能性が示唆される。政策的な含意としては、女性の就業と出生との間にみられる負の関連をいかに取り除くかが、引き続き重要な政策課題である。また、長時間労働や長時間通勤といった男性の働き方を含めた改革が日本のジェンダーと出生力の両方を改善する鍵であることが示唆される。