- 著者
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佐々木 てる
- 出版者
- 関西社会学会
- 雑誌
- フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
- 巻号頁・発行日
- no.9, pp.9-19, 2010-05-29
人口減少社会を迎え従来の外国人政策の見直し、さらには移民政策に関する議論も登場している。しかし外国籍者をめぐる課題も山積している。こういった問題の背景には、これまで社会統合の視点が欠けていると同時に、統合すべき社会像が一向に見えてこないためである。つまり外国籍者をあくまで一時的な滞在者としてあつかうか、もしくは将来国民としてあつかうか、国家レベルでの方針が定まっていない。今後永住者、すなわち実質的な移民をどうあつかうかが、今まさに問われている。こういった現状を踏まえた上で、本稿では現在日本にいる外国籍者、特に永住者を将来的な国民として社会統合する立場を前提とし議論を進める。具体的には日本国籍を取得した在日コリアン、すなわちコリア系日本人の事例から考えていく。コリア系日本人は後天的に国民になった人々であり、彼らの歩んできた道を振り返ること、彼らが求めてきたことを考えることは、社会統合政策を考える上で参考になる。具体的にはコリア系日本人の歴史、国籍取得の背景、さらに現代的な課題を提示していく。そして彼らをとりまく日本社会のまなざしを考え、今後の日本の外国籍者に対する社会統合政策を考えていくことにする。結論を述べれば、コリア系日本人という試みは、日本人というネーションを内部から変容せる可能性を持つものといえる。その意味で彼らの存在は今後の日本社会の向かう国民像の一つを示しているといえる。