著者
筒井 清次郎 伊藤 文浩
出版者
愛知教育大学大学院・静岡大学大学院教育学研究科 共同教科開発学専攻
雑誌
教科開発学論集 (ISSN:21877327)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.129-138, 2014-03-31

本研究は、フィードバック頻度と注意の向け方が運動習得にどのように影響するかを調べるために、スポーツ課題であるサッカーの的当て課題を用いて、経験者と初心者を対象とし比較した。その結果、以下のことが明らかになった。1)練習試行において、経験者は注意の向け方に関わらず、1日目から3日目にかけて平均得点が向上した。External Focus(身体外部への注意)群の初心者は3日目に平均得点が向上したが、Internal Focus(身体への注意)群の初心者は3日間で平均得点が向上しなかった。2)保持テストにおいて、経験者と初心者の両方でExternal Focus群はInternal Focus群よりも平均得点が高かった。3)練習試行においても、保持テストにおいても、フィードバック頻度の違いはみられなかった。
著者
黒川 みどり
出版者
愛知教育大学大学院・静岡大学大学院教育学研究科 共同教科開発学専攻
雑誌
教科開発学論集 (ISSN:21877327)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.113-121, 2013-03-31

日本学術会議(Science Council of Japan)が出した提言「新しい高校地理・歴史教育創造―グローバル化に即応した時空間認識の育成」は、2006 年に発覚した世界史未履修問題に端を発し、「グローバル化」に対応すべく「歴史を考える力」をいかに育てるかということに焦点が充てられている。「提言」、そしてそれを受けて活発化している歴史教育をめぐる議論では、即自的に「思考力」の証を求める傾向が強いが、思考力をより高めるための「知」を、いかに良質かつ豊富なものにするかというところに発想を転換することも必要なのではないかと私は考える。したがって、大部かつ詳細な「提言」のなかから、それが最も批判の中心に据える「知識詰め込み型」という教授法のあり方の問題と、教授する内容―教科書の問題の主として2点に絞りながら、教員養成に携わる立場から歴史教育のありようを考え、ひいては歴史学を拠点に教科開発の意味を展望する。「知」の原点に立ち返り、「知識」と「思考力」を対置させるのではなく、両者は本来一体であることに意を払うべきであり、本稿は、その点を中心に据えて、教科開発という枠組みのなかで再度歴史教育のありようを問い直そうとする試みである。
著者
白畑 知彦 新保 淳 北山 敦康
出版者
愛知教育大学大学院・静岡大学大学院教育学研究科 共同教科開発学専攻
雑誌
教科開発学論集 (ISSN:21877327)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.181-188, 2015-03-31

本共同教科開発学専攻では、教員養成をおこなう上でこれまで別々に捉えられていた感のある3つの領域、教科専門、教科教育、教職専門を融合し、新たな学問領域を構築しようとしている。このような特色を持つ本専攻と、他大学の「博士(教育学)」課程の教育・運営方針を比較することで、本専攻の今後の方向性を考える一助とする。白畑、新保、北山の3名は、2014 年3月、アメリカ合衆国におけるDoctor of Education Program の現状を把握するために、同国カリフォルニア州の3つの大学(南カリフォルニア大学 (USC)、カリフォルニア大学ロサンジェルス校 (UCLA)、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校 (CSULB))を視察した。このうち、USC とUCLA の2校でEd.D. Program 担当者と面会し、話を聞くことができた。そのインタビュー内容を紹介する。次に、日本でEd.D.の学位を授与している唯一の大学院である名古屋大学の博士課程について、今津の2 本の論文を考察することで、1)日本における学位の授与規定について、2)日本におけるEd.D.コースの現状について情報提供する。以上の考察に基づき、本専攻の方向性についてもう一度確認することで我々の方向性を確認する。
著者
黒川 みどり
出版者
愛知教育大学大学院・静岡大学大学院教育学研究科 共同教科開発学専攻
雑誌
教科開発学論集 = Studies in subject development (ISSN:21877327)
巻号頁・発行日
no.1, pp.113-121, 2013

日本学術会議(Science Council of Japan)が出した提言「新しい高校地理・歴史教育創造―グローバル化に即応した時空間認識の育成」は、2006 年に発覚した世界史未履修問題に端を発し、「グローバル化」に対応すべく「歴史を考える力」をいかに育てるかということに焦点が充てられている。「提言」、そしてそれを受けて活発化している歴史教育をめぐる議論では、即自的に「思考力」の証を求める傾向が強いが、思考力をより高めるための「知」を、いかに良質かつ豊富なものにするかというところに発想を転換することも必要なのではないかと私は考える。したがって、大部かつ詳細な「提言」のなかから、それが最も批判の中心に据える「知識詰め込み型」という教授法のあり方の問題と、教授する内容―教科書の問題の主として2点に絞りながら、教員養成に携わる立場から歴史教育のありようを考え、ひいては歴史学を拠点に教科開発の意味を展望する。「知」の原点に立ち返り、「知識」と「思考力」を対置させるのではなく、両者は本来一体であることに意を払うべきであり、本稿は、その点を中心に据えて、教科開発という枠組みのなかで再度歴史教育のありようを問い直そうとする試みである。
著者
村山 功
出版者
愛知教育大学大学院・静岡大学大学院教育学研究科 共同教科開発学専攻
雑誌
教科開発学論集 (ISSN:21877327)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.55-64, 2013-03-31

断片的知識(KIP)論は、認知の文脈依存性や知識構造の獲得・移行を重視した、知識表現モデルの一種である。KIP コミュニティにおける先導的な研究者であるdiSessa は、物理に関する直観的な推論を説明するためにp-prims 理論を構築した。p-prims は小さな要素知識であり、呼び出しの優先度と信頼性の優先度によって相互に結びついている。形式的知識と素朴概念の共存、およびそれによる推論は、これらの結合の変化によって説明される。Lawler は自然な状況における自分の娘の加算の学習を、彼流のKIP 理論であるマイクロワールドによって説明した。どちらの研究者も、知識の文脈依存性やKIP間の関連付けの重要性を強調している。このことは、学習者の知識が文脈に依存しない一般的な構造であり、容易に組み合わせて新たな知識構造を作ることができるとする、教育上の仮定に対する再考を促す。
著者
尾形 和男
出版者
愛知教育大学大学院・静岡大学大学院教育学研究科 共同教科開発学専攻
雑誌
教科開発学論集 = Studies in subject development (ISSN:21877327)
巻号頁・発行日
no.1, pp.19-32, 2013

中学生における家庭の夫婦関係が家族の目標構造、生徒の達成目標志向、学習方略、学習コンピテンスに及ぼす影響に関する研究 本研究は中学生の家庭の夫婦関係が家族の目標構造、生徒の達成目標志向、学習方略、学習コンピテンスにどの様な効果を及ぼすのかと言うことについて分析を加えた。244 名の大学生に、中学時代のことについて質問紙により調査した。質問内容は中学時代の「父親と母親の関係」、「家族の目標構造」、「達成目標志向」、「学習方略」、「学習コンピテンス」からなる。パス解析の結果、夫婦関係の良好な家庭では、「学習への取り組み方の重視」する家庭の目標構造が強まり、それが達成目標志向である「マスタリー型」を増加させ学習コンピテンスの「学習の効率化」を促進させていた。また、同時に「学習への取り組み方の重視」は学習方略の「深い処理の方略」を増加させ学習コンピテンスの「学習の効率化」と「勉強と学校適応」を促進していることが示され、正の影響が多く確認された。しかし一方、夫婦関係が良くない家庭では夫婦関係が学習コンピテンスの「得意科目」を減少させることが示された。また、夫婦関係からは家庭の目標構造を形成することがなく、家庭の目標構造から負の影響が多く存在する傾向があることも示された。The purpose of this study is to investigate the effect of marital relationship on family goal structure, personal achievement goal orientations, learning strategies and learning competences in junior high school students. 244 university students completed questionnaires about their father and mother relationships, family goal structure, achievement goal structures, learning strategies and learning competences in their own junior high school course. Path analysis revealed that the good marital relationship brought influence on effective learning competences beyond the marital relationship which is not good. In especially marital relationship which is good increased the family goal structure, achievement goal structures, learning strategies and learning competences. The marital relationship which is not good didn't have effective family goal structures but had tendency to decrease learning competences.
著者
山田 智
出版者
愛知教育大学大学院・静岡大学大学院教育学研究科 共同教科開発学専攻
雑誌
教科開発学論集 = Studies in subject development (ISSN:21877327)
巻号頁・発行日
no.1, pp.123-131, 2013

近年教育を巡る議論が盛んである。中でも歴史教育を巡る議論が様々な形で深められている。成田龍一氏の『近現代日本史と歴史学』はこの分野での最も刺激的な業績のひとつである。そこで本書の検討を通じて歴史教育についての私見を述べたいと思う。成田氏は日本の近代歴史学を3 つの時期に区分し、日本の歴史教科書はそのうち最も古い部分に規定されているとする。彼はこのような現状を批判的にとらえているが、私は過去の歴史学の問題意識が現在の歴史教育にも充分に意義を持っていると考える。なぜならば、現在の日本が直面している諸問題は、60年前の日本の歴史学が直面した諸問題と様々な面で共通しているからである。歴史教育と歴史学との協力が求められている中で、歴史教育は、歴史研究が蓄積した過去の問題意識の意味を正確に理解したうえで、これを教育に反映する必要がある。そのためには、教員養成課程での学術的な経験が不可欠である。Who teaches History? - Possibility of the history research in education in history Recent days, education has been actively. Above all, discussion on historical education has been deepened. Ryuichi Narita's "KINGENDAI-NIHONSHI TO REKISHIGAKU" is one of the most thought-provoking work in this field. In this paper, I re-consider his study and state my own view about this problem. Narita divides Japan's modern history research into three periods and points out that the Japanese history textbook is specified to research of the first stage. He criticizes such present situation. However, I think that an old awareness of the issues of the first stage has a meaning still nowadays. This is because that the problems of Japan what we face now has much in common with that in 60 years ago. While cooperation with education in history and history research is called for, the education in history fully needs to understand the meaning of an old awareness of the issues which history research has accumulated, and it needs to be reflected in education. For that purpose, the academic experience in a teacher training course is indispensable.