著者
川名 誠司 東 直行 山岡 淳一 井村 純 片山 美玲
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、皮膚におけるCRH-POMC反応系が毛周期の制御機構に及ぼす影響を解明することにある。前年度(2003)は、心理ストレスがマウス毛周期のtelogen stageを有意に延長させ、そのメカニズムは毛包ケラチノサイト、脂腺細胞に強く発現するCRHの作用を介することを証明した。従来、毛周期の研究にはC57BL/6マウスの背部皮膚を機械的に脱毛し、直後から成長期が同調して開始する性質を利用する。我々の研究もこの性質を応用している。しかしながら、現在、成長期の強制発現がどのようなメカニズムに基づいているか不明である。本研究の遂行にあたって、このメカニズムを明らかにしておくことは必要不可欠のことと考える。特に、CRHの関与については興味深い。そこで、今年度(2004)はCRHノックアウトマウスとwildマウスにおいて、脱毛によって誘導された毛周期毎に皮膚に分布する神経線維ならびに活性化肥満細胞数の経時的変化、神経ペプチド(CRHおよびSubstance P ;SP)、神経成長因子(Nerve growth factor ; NGFおよびGlial cell line-derived neutrophilic factor ; GDNF)の発現についてELISAにて測定し、同時に免疫組織化学染色にてその局在を検討した。その結果、両マウスに共通して、成長期初期(anagen I〜III)に毛包ケラチノサイト、脂腺細胞、平滑筋細胞にNGFが急速かつ多量に発現することが一義的変化であることが明らかになった。その後、POMCの発現、SP陽性神経線維の増加、活性化肥満細胞の増加、毛包におけるTNF-αなどサイトカインの増加が続いた。CRHノックアウトマウスにおいてはCRHの発現はなかったが、α-MSH、ACTHなどPOMCの発現はwild typeと有意の差はなかった。以上の結果は、機械的脱毛によって皮膚に創傷反応をきたした結果NGFが産生され、ケラチノサイトの増殖、神経細胞の可塑化/成長、肥満細胞由来のサイトカインによる毛乳頭細胞の活性化などの反応が進展していったことを示唆した。また、CRHの存在がなくとも別のルート(例えば、NGFなどの作用)でPOMCの発現が誘導され、その後の毛周期が進行、維持されることが推測された。
著者
北村 晶
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

全身麻酔薬の作用機序の探索を目的として、ラット皮質ニューロンの初代培養標本から、パッチクランプ法をもちいて自発性抑制性および興奮性シナプス後電流(miniature IPSCおよびEPSC)を記録し、ハロタンとプロポフォールの興奮性および抑制性シナプス伝達へのmodulationについて調査した。麻酔薬はシナプス後膜への効果として抑制性GABAergicなシナプス伝達を増強する作用があり、今回の実験でもそれぞれの麻酔薬がCl^-電流を増強した。シナプス前への効果の機序として、神経伝達物質の放出への影響のメカニズムを考察するために、選択的Ca^<2+>チャンネル拮抗薬を用いて、frequencyへの効果を調査した。ハロセンはfrequencyを低下させ、ω-conotoxinおよびω-agatoxin存在下ではその低下の効果が減少した所見が得られた。すなはちハロセンはN-typeおよびP/Q-typeのCa^<2+>チャンネルをブロックすることで、細胞内カルシウム流入を減少させ、シナプス前よりの興奮性神経伝達物質の放出を抑制する可能性が示唆された。miniature IPSCへの効果において、両薬剤はdecay phaseおよびamplitudeeへの効果から、Cl^-電流の動態が一様でないことが観察された。cell-attachedモードにおいて、それぞれの麻酔薬によりコンダクタンスは変化せず、開口確率を増加させたが、ハロタンではmean open timeの延長、プロポフォールではinterburst intervalの低下が観察された。以上の結果より、薬剤によっての神経伝達物質の放出の抑制作用、Cl^-チャネルの開口確率の増加、開寿命の延長、閉寿命の短縮へ及ぼす作用に相違があり、臨床作用での相違に関連づけて考察した。
著者
平川 慶子 小池 薫 大野 曜吉 崔 范来 金涌 佳雅 佐藤 格夫 大野 曜吉 崔 范来 金涌 佳雅 佐藤 格夫 増野 智彦 栗林 秀人
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

MRI装置を用いた死後画像診断におけるスペクトルデータの活用に関する基盤研究を行なった。ラット死体の骨格筋および脳組織の死後早期の代謝物質の変化について、^1H NMRスペクトルデータをパターン認識した結果、死後経過時間の推定や死因の検索に有用な解析結果を得た。また、死体のMRI画像測定データを用いて、組織内の温度分布の時間変化を可視化することができた。