著者
伊達 洋至 小池 薫 板東 徹 庄司 剛 陳 豊史 藤永 卓司 岡本 俊宏 佐野 由文 大藤 剛宏 山根 正修
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、京都大学(呼吸器外科および救急医学分野)と岡山大学(呼吸器外科)の共同研究により、心停止ドナーからの肺移植臨床応用をめざすものである。体外肺還流(ex-vivo lung perfusion, EVLP)の実験系を用いて、両大学で大動物実験を継続した。京都大学では、EVLP還流液としてのET-Kyoto液の有用性とEVLPによる肺水腫を来したグラフト肺修復の可能性を報告した。一方、岡山大学では、EVLP中に吸着膜を使用して炎症性サイトカイン(TNFαとIL-8)を除去する効果を検討し、サイトカイン以外の因子がグラフト肺の傷害に関与している可能性を示した。
著者
宮本 将太 高谷 悠大 奥野 善教 邑田 悟 篠塚 健 下戸 学 柚木 知之 趙 晃済 大鶴 繁 小池 薫
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

【背景】三環系抗うつ薬(TCA)は過量摂取時に強い毒性を有することが知られており、死に至ることもある。主な死因に痙攣や致死性心室性不整脈が挙げられる。今回、処方にTCAが含まれていなかったにも関わらず、痙攣と致死性心室性不整脈を発症し、不整脈の加療およびTCA中毒と判断するのに苦慮した一例を経験したため報告する。【臨床経過】双極性障害を既往に持つ39歳男性、身長163cm、体重63kg。これまで6回の薬物大量内服による救急搬送歴があった。来院2時間前に、薬物大量服用の意思を友人に電話で伝えていた。友人到着時は意識清明だったが、徐々に意識レベルが低下したため救急要請し、当院搬送となった。来院時はJCS300、血圧128/77mmHg、心拍数141/分・整、呼吸数32回/分、SpO2 90%(高濃度酸素マスク10L投与下)だった。来院直後、脈あり心室頻拍が出現したが1分以内に自然頓挫した。その後けいれん発作が出現したため、ジアゼパム、レベチラセタム、ビタミンB1を投与したが発作を繰り返し、気管挿管の上でプロポフォール持続投与開始したところ鎮痙した。しかしその後、脈なし心室頻拍も持続したため蘇生を行った。ショック遷延に対して複数の昇圧剤および炭酸水素ナトリウム投与を要した。心エコーおよび全身CTでは特記すべき器質的病変を認めなかった。尿中薬物定性検査ではベンゾジアゼピン、TCAが検出されていたが、判明していた内服薬にTCAは含まれていなかった。病歴と合わせて薬物中毒による痙攣および致死性不整脈が起こっていると考えられた。集中的な全身管理が必要と判断し、ICUに入室させた。入室時APACHE2スコアは32点、SOFAスコアは17点だった。ICU入室後は昇圧剤投与下でも血圧80mmHg前後で推移していたが、第2病日に脈なし心室頻拍出現、CPR開始した。除細動2回施行し、アドレナリン投与含む蘇生を行ったが、自己心拍は再開しなかった。来院されたご家族に状況説明したところ、V-A ECMO導入は希望されず、死亡確認を行った。後日、血液検査結果では、アミトリプチリンが2034ng/mLと致死量を超える血中濃度を示していた。以上よりTCA中毒により痙攣および致死性不整脈が生じたと考えられた。【結論】TCA処方歴のないTCA中毒を経験した。急性薬物中毒が疑われる症例では、処方歴よりも顕現している症状から原因薬物を検索すべきである。
著者
苛原 隆之 佐藤 格夫 大嶽 康介 邑田 悟 播摩 裕 柚木 知之 石原 健吾 伏木 亨 井上 和生 横田 裕行 小池 薫
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.151-156, 2017 (Released:2018-02-22)
参考文献数
8

侵襲時の栄養療法に関しては,種々のガイドラインが作成されているものの詳細はいまだ不明瞭な部分が多い.また運動介入についても近年ICUAW 予防としての意義が注目されているが,早期の運動介入が代謝や生存率に与える効果についての報告はない.本研究ではマウス敗血症モデルを用いて間接熱量測定および尿中窒素測定により栄養代謝動態の変化を調べ,敗血症の重症度・時期による糖質・脂質・タンパク質の三基質の代謝動態の変化を明らかにした.また低強度の運動介入による効果についても調べ,急性期の低強度運動によりPGC-1α(Peroxisome proliferator-activated receptor gamma coactivator 1-alpha)が活性化された結果,内因性脂肪利用が上昇して脂質代謝が改善することが転帰改善に寄与していることが示唆された.早期運動介入が病態そのものに対する治療的効果をもつ可能性があるというのは画期的な知見であり,臨床における重症患者への栄養療法にも応用が期待される.
著者
太田 好紀 松田 直之 西山 慶 大鶴 繁 小林 勝哉 瀬川 一 小池 薫
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.10, pp.836-842, 2009-10-15 (Released:2009-12-28)
参考文献数
10

症例は63歳の男性。ニセクロハツを摂取し,1時間後に嘔吐,4時間後に下痢,18時間後に全身筋肉痛,21時間後に呼吸困難感が出現し,救急外来を独歩で受診した。血行動態に変化は認めなかったが,身体所見と血液検査所見などからニセクロハツ中毒による近位筋の横紋筋融解症と診断した。急性腎不全などの臓器不全を予防するため下大静脈(IVC)径が20mm以上もしくは中心静脈圧(CVP)が8mmHgになるように初期輸液を開始した。第3病日まで晶質液を7~7.5L必要とし,その間CVPは8mmHg以上が維持され,尿量は1~2ml/kg/時以上を得た。第3病日に血清CKは46,876IU/lを最高値としたが,輸液療法により腎機能が保たれていたため血液浄化療法の適応としなかった。ニセクロハツ中毒に対してIVC 20mm以上もしくはCVP 8mmHg以上を目安として初期輸液をすることで横紋筋融解症の増悪や急性腎不全の合併を回避できた可能性がある。
著者
平川 慶子 小池 薫 大野 曜吉 崔 范来 金涌 佳雅 佐藤 格夫 大野 曜吉 崔 范来 金涌 佳雅 佐藤 格夫 増野 智彦 栗林 秀人
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

MRI装置を用いた死後画像診断におけるスペクトルデータの活用に関する基盤研究を行なった。ラット死体の骨格筋および脳組織の死後早期の代謝物質の変化について、^1H NMRスペクトルデータをパターン認識した結果、死後経過時間の推定や死因の検索に有用な解析結果を得た。また、死体のMRI画像測定データを用いて、組織内の温度分布の時間変化を可視化することができた。