著者
上田 諭 大久保 善朗 舘野 周
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

レビー小体型認知症(DLB)の診断は困難を伴うことが少なくない。確実に診断できるバイオマーカー(生物学的指標)にはまだ確かなものがなく、ドパミントランスポーター(DAT)のPETイメージング(画像診断法)が期待されている。PETとは、ポジトロンエミッショントモグラフィーの略で、ポジトロンを用いた脳画像撮像ができる最新の装置である。本研究では、うつ病患者、パーキンソン症状をもつ患者にDATイメージングを行い、本イメージング手法がDLBを鑑別診断するうえで非常に有用であることを見出した。この結果は、DATイメージングがDLBのバイオマーカーとして一定の臨床的有用性を持つことを示したといえる。
著者
黒崎 剛
出版者
日本医科大学
雑誌
日本医科大学基礎科学紀要 (ISSN:0389892X)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.1-51, 2006-12

前節において私たちはヘーゲルが意識経験学の目標を「精神」と規定したのを見た。ここに『精神現象学』における最大の理論問題が生まれる。すれはすなわち、個別的意識を陶冶して真理認識の根拠である「思考と存在との同一性」の境地に達しようとする過程が、「二つの自己意識の相互承認」を達成しようとする過程と合体させられてしまうことである。では、このふたつの過程が「意識の経験」としてひとつに重ねあわされるとき、何が起こるのであろうか。彼がこの二つの過程を一つにして、自己意識を「思考」として完成させる箇所が、自己意識論の「A 自己意識の自立性と非自立性、主であることと奴であること」であり、さらに思考としての自己意識の三段階構造を示すのが「B 自由な自己意識」である。本稿ではこの二つの箇所の展開を追い、ヘーゲルがこの二過程を重ねた成果として誕生するのは決して他者との相互承認関係に配慮する成熟した理性ではなくて、むしろ「自然」と「労働」とを忘却し、「相互承認」を現実的に形成するという課題を「共同主観性」という意識の問題に還元してしまうヨーロッパの近代的理性概念の典型であることを明らかにしてみたい。
著者
濱田 知宏 佐久間 康夫
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

脳には解剖学的な性差があり、視索前野性的二型核は雄で有意に大きい神経核として有名である。本研究の目的はこの神経核を中心とする神経回路が性指向性に寄与し、その神経回路形成に思春期エストロゲンが重要であるという仮説を検証することである。結果として、思春期エストロゲンにより発情雌が雄の匂いを好むようになり、性差のある脳領域が活性化され、視索前野性的二型核ニューロンが雌の性行動中枢である視床下部腹内側核に投射していることが示され、思春期エストロゲンの性指向性に対する作用の一端が明らかとなった。
著者
大野 曜吉 仁平 信
出版者
日本医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本研究では、毒性の極めて強いアルカロイドであるアコニチンに注目し、体内での薬物動態を動物を用いて検討することを目的として課題申請した。従来このような報告が見られなかったのは、中毒レベルでの血液や体液からのアコニチンの定量が極めて困難であったためである。そこで、我々はGC-MSを用いたSelected lon Monitoring法によって微量定量分析を試みた。水柿らの報告した方法に則り、一連の抽出段階ごとに慎重に検討し、更にヒパコニチンを内部標準物質とすることでアコニチンの微量定量が可能となった。ICR雄性マウスの血液試料についてアコニチンの定量を行った結果、腹腔内0.30mg/kg投与群では、投与15分後で17.2ng/mlと最高血中濃度となり、以後ほぼ指数関数的に低下し、120分後で5.93ng/mlとなった。また、0.35mg/kg投与群では同様に投与15分後で32.1ng/mlと最高血中濃度となり、120分後で10.7ng/mlとなった。片対数グラフ上でほぼ直線となる投与後30分以降の血中濃度から薬物除去速度定数(K_<el>)を求めると、0.3mg/kg投与群で0.00718min、0.35mg/kg投与群で0.00835/minと計算され、半減期はそれぞれ、96.5min、83.0minと算出された。以上より、アコニチンの生体内における除去速度は、その血中濃度と比例することが明らかとなった。更に、同様投与量のアコニチンに対し、その非競合的拮抗物質であるテトロドトキシン0.01mg/kgを同時投与した動物実験を実施し、アコニチンの定量を行い、最終段階の検討を進めている。現在までの結果では、アコニチン0.3mg/kg群、0.35mg/kg群のいずれにおいても、死亡時間の延長効果はみられず、投与後15分前後で半数以上が死亡し、充分数の生存例から血中濃度曲線を得ることはできていない。アコニチンとテトロドトキシンとの混合投与では、予期しない効果が発現した可能性があり、それぞれの投与量を段階的に組合せた実験がなお必要であることが示唆された。
著者
五十嵐 徹
出版者
日本医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

流血中に生じた免疫複合体(IC)のほとんどは赤血球上の補体C3bレセプター(CR1)によって赤血球に捕捉され、速やかに肝・脾等の網内系に運ばれて処理されているといわれている。従って現在臨床検査として広く行われている。血清免疫複合体の測定では、この赤血球によって血清中から除かれているICについては測定されていないと考えられる。本研究ではこの問題の解決の糸口を探るのが目的である。現在までのところ、健常ヒト赤血球と同人の血清とを再構成した血液中にIC(熱凝集IgG)を加えるという実験系では、抗Clq法,抗C3d法,mRF法とも、それぞれの正常値とされる程度のICは添加物数分間ですべて血清中から消失してしまうというデータが得られている。赤血球1個あたりのCR1数は個人差が大きいためか、データにばらつきがあるものの、検体によっては正常値とされるIC量の数倍のICすら消失しまう場合もある。このことは、これまでの血清中ICの測定という臨床検査は、よほど大量のICが存在する場合にのみ陽性となることを意味し、実際の生体内におけるIC産生状況を反映しているとは言い難いことになる。現在、真の血液中ICの測定法を開発しようとしているが、単なる抗凝固剤ではCR1と1Cは解離せず、その解離を起すような処理を加えるとIC自体の抗原と抗体の解離が生じてしまうという点で更なる研究が必要である。現在種々の操作を検討中の段階である。
著者
太田 成男 大澤 郁朗
出版者
日本医科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

組織が虚血再灌流(I/R)に曝露されると、再灌流の早期段階でROSが大規模に生成され、肝、脳、心臓および腎など様々な臓器の組織に深刻な障害を引き起こす。これまで酸化ストレスによる1/R傷害は基礎研究および臨床研究の重要な焦点とされてきた。I/R誘発性臓器障害の考えられる基礎的な機序は、多くの因子が関与し、相互依存的であり、低酸素症、炎症反応およびフリーラジカル障害に関与している。I/R傷害の病因は未だ解明されていないが、酸素フリーラジカルが重要な役割を担っていることは明らかである。それゆえI/R傷害への臨床的対応としては、フリーラジカル・スカベンジャーが実用的であると考えられている。実際に、これまでにもnicaraven, MCL-186,MESNA,およびαトコフェロールとGdCl_3などの多くの薬剤が、I/R傷害を予防するためのスカベンジャーとして試みられてきた。私たちは、2007年に水素分子がラットの中脳動脈閉塞モデルを用いた研究で、水素分子が治療的抗酸化活性を呈することを報告した。また、昨年は、肝臓の虚血再灌流障害が、水素ガス吸引によって軽減されること、ヘリウムでは効果がなかったことを示した。虚血再灌流障害で、最も患者が多く、適用可能性が高いのは心筋梗塞であると予測されるので、心筋の虚血再灌流障害に対する水素ガスの吸引効果をラットモデルを用いて調べた。結果は、水素ガスを吸引させると虚血状態でも心臓内に水素が浸透しることが確認できた。また、心筋梗塞モデルラットで水素ガスを吸引させることで、梗塞層が小さくなり、心機能の低下も抑制された。分離した心臓を用いても虚血再灌流障害を水素は抑制することが明らかとなった。
著者
遠藤 陽子 清水 章 遠田 悦子 中村 元信
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

糖尿病による腎障害では線維化・尿細管萎縮(IFTA)が起こり、腎不全に至ります。IFTAが進行する原因の一つとして、血液中のマクロファージが腎臓へ浸潤し、腎臓線維化の促進に働くことが挙げられています。そこで、私たちはマクロファージの活性に関連するFROUNTと、FROUNTを抑制する処方薬のDSFに着目しました。DSFがマクロファージを抑制することで、糖尿病でのIFTAを抑制、腎不全への進行を止められると考えています。糖尿病モデル動物をDSF投与群と非投与群とに分け、その腎臓や血液・尿を検査し、マクロファージ抑制、IFTA抑制、腎機能保持が出来るのかを明らかとします。
著者
謝 国権
出版者
日本医科大学
巻号頁・発行日
1959

博士論文
著者
永野 昌俊 鈴木 秀典 齋藤 文仁 坂井 敦 肥後 心平 三ケ原 靖規
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

マウスを用いた行動実験系で、帝王切開によって生まれた仔マウスは自然分娩によって生まれた仔マウスと比較した場合に、社会性を含め様々な違いが確認された。行動実験のほとんどが仔の成長後に実施しているが、一部は、生後8日目という早期から確認されたものもある。つまり、帝王切開出産による生まれた仔への影響は生後の長きにわたる事が示唆された。そして、これらの影響は周産期におけるオキシトシンの単回投与で抑制できることが確認された。また、周産期にオキシトシン受容体のアンタゴニストを投与して自然分娩をさせると、生まれた仔マウスは帝王切開によって生まれた仔マウスに近い行動変化を引き起こすことも確認された。これらの研究の進行の手がかりとして大きく役立ったのは、同時進行している自閉症のモデルマウス(Nakatani et al., Cell, 2009)を用いた研究で、生後3週間に及ぶ選択的セロトニン再取り込み阻害薬のフルオキセチンの処理が、成長後の社会性行動を改善させることを見いだしたこと(Science Advances, e1603001, 2017)、及びその改善効果はセロトニン1A受容体アゴニストの投与によっても再現され、オキシトシン受容体のアンタゴニストとの同時投与でキャンセルされてしまうこと、セロトニン1A受容体アゴニスト投与はモデルマウスの血中オキシトシン濃度を上昇させることを見いだしたこと(Scientific Reports, 8:13675,2018)である。
著者
早川 清雄 成 英瀾
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

近年、生活習慣病とその基盤病態として『慢性炎症』が注目されている。申請者は、活性化されたマクロファージでは脂質代謝と炎症シグナルとが密接に連携して制御されていること、炎症刺激後に増加する脂質合成はカスパーゼ依存的であることを見いだした。炎症応答に伴うカスパーゼの活性化は従来よく知られた細胞死のシグナルとなるだけでなく、 脂質合成の亢進を介して炎症の慢性化を防ぐ生存シグナルとしても機能している可能性が高い。本研究ではカスパーゼを介する脂質代謝制御の観点から炎症慢性化の分子メカニズムを明らかにすることを目指す。
著者
高橋 秀実
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の結果、Vγ1Vδ1型のT細胞レセプター(TCR)を発現したγδT細胞株(clone 1C116)の樹立に成功し、このT細胞株がTCR特異的な抗原分子に遭遇した場合、IL-2を放出することを見出した。このシステムを利用し、天然生薬中に存在する糖質結合型フラボノイドである陳皮由来のヘスペリジン及び枸杞子由来のリナリンがVγ1Vδ1型T細胞を刺激することを発見し、これらヘスペリジンあるいはリナリンの刺激でVγ1Vδ1型γδ細胞が活性化され、IL-5並びにIL-13、及びMIP-1α、MIP-1β、RANTESが放出され、細胞内でのR5-型HIV-1の増殖が抑制されることを確認した。
著者
田中 信之
出版者
日本医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

我々は、解糖系阻害剤2-Deoxy-D-glucose (2-DG)が、解糖系の阻害ではなく、マンノース代謝からタンパクの糖鎖修飾(N-結合型鎖)を抑制することで、炎症性サイトカイン受容体の糖鎖修飾を抑制し、そのことで炎症反応が抑えられるということを明らかにした。実際に、2-DGやtunicamycin等の糖鎖修飾阻害剤を投与することで、細胞及びマウス個体でのIL-6やTNF-αの受容体への結合と応答が阻害された。更に、炎症性腸疾患、敗血症、関節リウマチ等のマウスモデルの発症を抑制する結果を得た。よって、糖鎖修飾を標的として炎症性疾患を効果的に治療することが可能であると考えられた。
著者
太田 成男 大澤 郁朗 金森 崇 麻生 定光
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

ミトコンドリアに局在するアルデヒド脱水素酵素ALDH2は、エタノール代謝においてアセトアルデヒドから酢酸への反応を触媒する。その一塩基置換の遺伝子多型であるALDH2^*2はドミナント・ネガティブに働き、ALDH2活性を抑制する。我々は、ALDH2^*2が晩期発症型アルツハイマー病(AD)の危険因子であり、ALDH2^*2をもつ健常人集団の血清には、過酸化脂質がより多く蓄積していることを示した。過酸化脂質は、毒性の強いアルデヒド類である4-ヒドロキシ-2-ノネナール(4-HNE)に自然に変換されることから、4-HNEがALDH2の標的基質であることを想定した。すなわち、ALDH2酵素活性が低下すると4-HNEが蓄積し、毒性を発揮すると想定した。この想定を証明するために、マウス型ALDH2^*2遺伝子をPC12細胞に導入し、ALDH2活性をドミナント・ネガティブ低下させた。そして、ALDH2活性欠損株に酸化ストレスを与えると、4-HNEの蓄積と細胞死が促進されることを証明して、この仮説が正しいことを証明した。すなわち、ALDH2は酸化ストレスへの防御機構として働いていることが示唆された。次に個体レベルにおいてALDH2活性の欠失が及ぼす影響を調べるため、アクチン・プロモーター下にマウスのALDH2^*2を挿入し、トランスジェニック(Tg)マウスを作製した。3系統のTgマウスについて解析したところ、骨格筋において、過酸化脂質の分解物であるマロンジアルデヒドと4-ヒドロキシアルケナールが蓄積していた。しかも、筋繊維は生後直後正常であり、age-dependentの筋繊維の萎縮であることを見いだした。そこで、ALDH2欠損マウスでは、酸化ストレスが亢進されていることが推定された。さらに、ALDH2欠損筋繊維では、ミトコンドリア脳筋症の指標であるragged-red-fiberとミトコンドリアの凝集が認められた。このTgマウスでは、ALDH2^*2によりALDH2活性が抑制され、酸化ストレスによって生じるアルデヒド類の解毒能が低下した結果として筋萎縮が生じたものと考えられる。ragged-red fiberが出現したことから、ミトコンドリア脳筋症のモデル動物となる可能性がある。
著者
石川 源 竹下 俊行 瀧澤 俊広 磯崎 太一
出版者
日本医科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

近年、胎児型Fc受容体が、IgGだけでなくアルブミンとも結合し、生体において、その異化から保護する作用があることが示唆されている。ヒト胎盤絨毛の栄養膜には胎児型Fc受容体が発現しており、母体血を介してアルブミンならびにIgGを担体として、選択的に胎盤への物質輸送が可能である。この研究にて、胎児型Fc受容体によるトランスサイトーシス機能を介した新規胎盤治療法開発を展開するために、先ずヒト初期胎盤を用いて胎児型Fc受容体のアルブミン保護作用を検討した.IgGとアルブミンの初期胎盤絨毛組織における詳細な局在解析を進めるために、光顕レベルで電子顕微鏡の解像力に迫る、独自に開発した超高分解能蛍光顕微鏡法でさらに解析した。母体血に接する栄養膜合胞体内には、IgGの局在を示す、たくさんの大小顆粒状の蛍光を認めた。栄養膜細胞内にはIgGは観察されなかった。しかし、隣接する栄養膜細胞間にIgGの存在を示す蛍光が観察された。栄養膜を越えて絨毛内間質にもIgGが検出された。初期胎盤絨毛組織において、栄養膜細胞層は、母児間IgG輸送の物理的バリアとはなっておらず、栄養膜合胞体においてトランスサイトーシスされたIgGは、栄養膜細胞間腔を通過し、絨毛間質へ既に到達することが明らかとなった。GFP融合胎児型Fc受容体ベクターを作製、絨毛癌細胞株(BeWo等)へ導入し、バイオイメージング解析を行った。解析を効率よく進めるためのGFP発現安定株の作製、霊長目を用いたin vivo実験は課題として残された。今回の研究から、従来の定説とは異なる。初期絨毛での胎盤関門に関する新知見を得ることができた(投稿準備中)。さらに、IgGのみならずアルブミンをキャリアーとして、初期胎盤絨毛組織内へ効率よく治療薬分子を投与することが可能であることを強く示唆する結果を得た。
著者
伊藤 保彦 浜田 久光 五十嵐 徹 継 仁 福永 慶隆
出版者
日本医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

これまでの検討の結果、以下のような成績を得た。1)日本医科大学付属千葉北総病院小児科外来においてprospectiveに行った調査では、明らかな基礎疾患を持たない不定愁訴患児140名のうち74名(52.4%)が抗核抗体陽性であり、健常対照群82名中わずか5名が陽性であったのに対して明らかに高率であった(P<0.0001)。2)抗核抗体陽性患児の主訴としては疲労と微熱が多く、消化器症状や起立性調節障害などの訴えは陰性患児に多かった。従って抗核抗体陽性で疲労を訴える患児について“自己免疫性疲労症候群"という疾患概念を提唱したいと考える。3)抗Sa抗体は抗核抗体陽性患児の41.3%に認められ、抗Sa抗体陽性者は陰性者と比べて抗核抗体160x以上の高力価のものが多く、また抗核抗体の蛍光パターンでも1名を除いて全員homogeneous & speckledであるという特性があった。4)抗Sa抗体およびSa抗原の分析としては以下のような性質が明らかになった。a)抗Sa抗体は少くともウシ胸腺抽出液では反応が見られないため、ヒト抗原に特異的である可能性が高い。b)HeLa,Molt 4、ヒト末梢血単核球いずれを抗原としても62kDのバンドは検出されるため、Sa抗原はヒトにおいては臓器特異性に乏しく、広分布している蛋白と考えられる。c)RNA-immunoprecipitation法ではSa抗原に付随して沈降されるRNAは見当らない。以上の様な知見をふまえ、今后再に検討を続けていく計画である。また96年度日本リウマチ学会において以上の成果を発表する予定である。
著者
鈴木 秀典 齋藤 文仁 坂井 敦 永野 昌俊
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

自閉症スペクトラム症(ASD)を含む広汎性発達障害の発症機構を研究するため、ASD患者の染色体重複を模倣した病態モデルマウス(patDp/+)を用いて、ミクログリアの役割を検討した。生後7日のpatDp/+マウスの扁桃体基底外側核でミクログリアの活性化マーカーIba1の発現が低下していた。周産期のミノサイクリン投与によってIba1の発現は対照と同程度に回復し、成熟期の不安行動も改善した。ミクログリアへの直接作用が報告されているセロトニン再取り込み阻害薬を新生仔期にpatDp/+マウスに投与すると、成熟期の社会的行動が改善した。以上の結果はミクログリアの発達障害病態への関与を示している。
著者
國保 成暁
出版者
日本医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

(背景)mTOR阻害薬(mTOR-i)は種々の悪性疾患に対して抗腫瘍効果を有する薬剤であるが、高頻度でリンパ球性胞隔炎等などの薬剤性肺障害を発症することが知られている。同薬剤は脂質代謝異常の副作用も引き起こすが、肺障害のメカニズムは未解明であるため検討した。(方法)ヒトmTOR-i肺障害2症例の肺病変を病理学的に検討した。またmTOR pathwayと脂質関連分子に着目してマウスと培養細胞(マウス肺胞上皮株MLE12)を用いてmTOR-i肺障害モデルを作製し病理および生化学的解析を行った。C57/BL6Jマウスを用いてTemsirolimus (10mg/kg/day)を3回/週で計4週間投与したモデルと、Control群としてVehicleとBLM投与モデルを作製した。MLE12ではTemsirolimusを0-20microMの濃度で投与し24時間まで観察するモデルを作製し解析した。(結果)mTOR-i肺障害2症例においては泡沫化した肺胞上皮の増生が認められた。mTOR-i投与マウスでは血清中T-choと遊離脂肪酸値が上昇し、血清とBAL中のSP-Dも高値を示した。Temsirolimus投与によりモデルマウスで肺胞上皮の増生とその細胞質内の脂肪滴貯留が認められ、MLE12においても脂肪滴貯留の所見が認められた。Temsirolimus投与により、マウス肺やMLE-12ではPPAR-γの発現が低下していた。(結語)mTOR-iは、全身性および肺胞上皮における脂質代謝ストレスを介して上皮傷害を惹起していると考えられた。mTOR pathwayの下流に位置するPPAR-γの発現変化がmTOR-iによる肺胞上皮傷害に関与する可能性が示唆された。
著者
丹 保三郎
出版者
日本医科大学
巻号頁・発行日
1959

博士論文