著者
小西 顕龍
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.125-128, 2009-12-20
著者
西山 亮
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.1237-1241, 2012-03-25

釈尊もしくは初期の仏教は,インド社会を現代にいたるまで特徴づけている階級差別を批判し,バラモン・クシャトリヤ・ヴァイシャ・シュードラという四姓が平等であることを主張したと伝えられている.その平等論は多くの研究者によって紹介され,そして仏教思想の優れた点として人々に賞賛されてきた.しかし,J. W. de Jong氏("Buddhism and the Equality of the Four Castes," 1988)やDonald S. Lopez Jr.氏(Buddhism & Science, 2008)などの幾人かの研究者によって,八世紀前半に活躍したと考えられている中観派の学匠アヴァローキタヴラタの著書Prajnapradapa-takaの中に,釈尊が説いた四姓の平等に反するような記述がみられることが指摘されている.実際そのテキストにおいて異教徒の典籍であるManusmrtiの一節が引用され,その内容はシュードラに対する差別であることが確認できる.これまでの研究者はみな一様に,このようなManusmrtiの一節をアヴァローキタヴラタが自説の教証として肯定的に引用し,そして四姓の差別を容認していると考えているのである.しかし,当該箇所をよく吟味すると,かれはむしろ伝統にのっとり四姓の差別を批判しているように読みとることができるのである.テキストを読み解く際の鍵となるのは「dbri bkol」というあまり用例の見られないチベットのことばである.

1 0 0 0 OA 善導と国家

著者
爪田 一寿
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.76-78, 2005-12-20

Traditional studies conclude that Shandao's Pure Land Buddhism has the character of State Buddhism. But when we analyze the text of the <i>Fashi zan</i> in detail, another conclusion follows inevitably from our analysis. In the text of the <i>Fashi zan</i> (T47, p. 483a), Shandao prayed for the happiness of the Crown prince and the women in the seraglio. They were suffering under the tyranny of the Empress Wu. Considering the historical situation, Shandao's words in the text of the <i>Fashi zan</i> are not to be read as depicting the character of State Buddhism but rather as his remonstrance against Empress Wu.
著者
津田 明雅
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.435-429, 2011-12-20
著者
安達 俊英
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:18840051)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.820-815, 2014-03-20
著者
多田 實道
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:18840051)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.242-248, 2014-12-20
著者
伊澤 敦子
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:18840051)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.1168-1173, 2015-03-25

upa-sthaという動詞は,黒Yajurveda-Samhitaの散文においては,(1)礼拝する,(2)仕える,そばにつき従う,という2つの意味に限定して用いられる.これらのうちで,具格を伴う例が約3分の1を占める(288例中91例).本稿ではこの用法について考察した.まず,具格を伴うupa-sthaは,全て(1)の意味で使用されており,Agnyupasthana(祭火の礼拝)の部分に57例,Agnicayana(祭火壇構築祭)の部分に27例,その他の部分に7例見出される.また,具格で示される対象を7種類((1)唱える詩節の数,(2)代名詞,(3)韻律又は韻律名,(4)唱えられるマントラが捧げられる神格やそのマントラに含まれる語,(5)マントラの名前,(6)Saman名,(7)その他(2例))に分けて調査した結果,(6)までは具格によってマントラが示されていると断定できるが,以下の(7)の2例に関しては更なる検討を要することがわかった.第1例: Kathaka-Samhita 20.5 (23,11-12) sarpasirsair upatisthate 第2例: Kathaka-Samhita 35.17 (62,18-63,1) manasopatistheta 特に前者のsarpasirsaniが何を意味するかは不明である.ただしMaitrayani Samhita 3.2.6 (23,16-18)の中のこの語に対応すると見られるsarpanamaniは特定のマントラを指すということが,Srautasutraによって知られている.これらの点を踏まえて,以下の結論を導き出した.Rgvedaなどそれ以前の文献では,upa-sthaと具格の結びつきは強くなく,また,具格によって示される語の意味が限定されることはなかった.しかし,黒Yajurveda-Samhitaの散文においては,upa-sthaが具格を伴う場合は,必ず「礼拝する」という意味で用いられ,その具格は,不明の1例((7)の第1例-sarpasirsani)を除いて全てマントラを示すことが明らかになった.従って,この例もマントラの呼称である蓋然性が高く,sarpasirsaniとsarpanamaniが同一のマントラを指す可能性も否定できない.マントラが具格によって示されるのは珍しくはないが,upa-sthaの場合,具格がそれ以外の意味で使われることがないということ,更に,Agnyupasthanaの次にAgnicayanaの部分にこの用法が多く見られるという点に注意すべきであろう.
著者
日野 慧運
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:18840051)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.1271-1275, 2015-03-25

古代インド医学の解明において,アーユルヴェーダと総称される体系が確立される以前の姿を伝えるものとして,仏教典籍における医療の描写が重要であることは,夙に指摘されてきたところである.本研究では,仏教思想史上に中期大乗経典と位置づけられる『金光明経』「除病品」に見られる医学的記述を取り上げ,アーユルヴェーダ文献との比較を試みる.『金光明経』における医学的記述は,季節(rtu)の定義,季節毎の病素(dosa)の異常,それに対するラサ(rasa)や療法を説いており,『チャラカ本集』『スシュルタ本集』などをはじめとするアーユルヴェーダ文献に共有された季節養生法の一節と対応している.しかし委細に比較すると,季節,病素,ラサの観念はアーユルヴェーダのそれと合致せず,むしろ仏教固有の季節観,身体観を反映したものであることが判明する.本研究は上の検討を通して,『金光明経』の医学的記述が,正統派アーユルヴェーダ文献とは別系統の医学伝承に属するものか,あるいはその季節養生法の形式のみを模倣しつつ仏教教義をベースに編纂されたものである可能性を指摘する.