著者
植村 優衣 齊藤 奈緒 多留 ちえみ 宮脇 郁子
出版者
日本慢性看護学会
雑誌
日本慢性看護学会誌 (ISSN:18822061)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1_41-1_50, 2021-05-25 (Released:2021-05-25)
参考文献数
21

訪問看護師が訪問開始から看取り後に実践するグリーフケアを明らかにした.訪問看護師17名に半構造化面接を行い質的に分析した.訪問看護師は,訪問開始から【利用者らしく家での穏やかな時間を過ごせるように可能な限り心身の苦痛を緩和する】【家で24時間介護している家族の心身を支える】実践を行っていた.さらに,【利用者らしい生活が送れるように利用者と家族の価値観や思いを大切にして関わる】ようにしていた.その上で,【利用者と家族が納得してお別れできるように思い出を残す】【利用者と家族の心情に寄り添いながらお別れの準備ができるように関わる】を行い,【利用者と家族が望んだお別れができるように環境を整える】【遺族が新たな生活を送れるように共に故人を偲びつつ悲しみを分かち合う】に繋げていた.そして,これらの実践のために常に【利用者と家族がかけがえのない時間を過ごせるように責任と覚悟をもって全力で支える】を行っていた.本研究は,訪問看護師が実践するグリーフケアの実践を可視化できたと考える.
著者
佐藤 由佳 池田 由紀
出版者
日本慢性看護学会
雑誌
日本慢性看護学会誌 (ISSN:18822061)
巻号頁・発行日
pp.202216002, (Released:2022-07-22)
参考文献数
36

目的:中高年関節リウマチ患者(RA)の健康行動に対する自己効力感に関連する要因を明らかにする.方法:Aクリニックに通院中の40歳以上のRA患者計262名を対象に,質問紙を用いた聞き取り調査を行った.調査内容は,基本属性,RAの状態(疼痛,全般的な体の調子,疾患活動性,日常生活動作の程度),健康行動に対する自己効力感(CD-SES),不安・抑うつ,ソーシャルサポートである.結果:CD-SESの2群比較では,属性との関連においてはすべての項目で有意差はなかった.ソーシャルサポ-トの合計得点では,CD-SES低値群は高値群に比べて有意に低かった.RAの状態,不安,抑うつはCD-SES低値群は高値群に比べて有意に高かった.ロジスティック回帰分析ではCD-SESに対して,疾患活動性,日常生活動作の障害度,不安,抑うつ,ソーシャルサポートが有意に関連していた.結論:中高年RA患者の健康行動に対する自己効力感は,RAの状態,心理的・社会的要因のすべての要因が関連していた.
著者
穴井 えりも
出版者
日本慢性看護学会
雑誌
日本慢性看護学会誌 (ISSN:18822061)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.2_75-2_82, 2022-01-28 (Released:2022-01-28)
参考文献数
19

【目的】本研究の目的は,看護における「待つ」の概念の用法や特性および構造を国内文献から明らかにし,看護における「待つ」を定義することである.【方法】分析方法には,Walker & Avantの概念分析の手法(Walker&Avant2005/2008)を用い,100論文を対象論文として抽出した.【結果】本概念分析の過程をとおして,看護における「待つ」の属性は,「患者志向の待つ目的」「看護師の待ち方」の2カテゴリーに分類された.先行要件は,「時間を要する状況」「待てるかどうかの判断」であった.帰結は,「患者の変化」「看護師の変化」「患者と看護師の相互作用」の3側面があった.【結論】看護における「待つ」の概念を「時間を要する状況のなかで,待てるかどうかの判断を同時並行的に繰り返しながら行う看護実践である.待つ看護実践は,患者志向の待つ目的と看護師の待ち方を含み,患者と看護師の変化および患者と看護師の相互作用へとつながる.待つ看護実践により双方が成長し,支援関係の充実へとつながる」と定義した.