著者
小林 一彦
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.24-32, 1998-07-10 (Released:2017-08-01)

中世では、貴族社会内部で固定された家職の継承と、それに必要な相伝文書の伝領とが家嫡決定に重要な意味を持っていた。御子左家の場合、為家没後、勅撰集を編むという最も重大な家職は為氏・為世と二条家によって継承され、京極家の為兼も一時期これを担っていた。しかし、相伝文書を伝領した冷泉家だけが、為相・為秀と代を重ねながら勅撰の家として成立するには至らない-その時、為秀にはどのような戦略があったのか。家業継承者であることの証明書としての和歌文書、そのような意義を歌論書に見出すことで、中世の偽書の問題を考えてみたい。
著者
長田 佳子 林 一彦
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

Epstein-Barr virus (EBV)はほとんどの成人に潜伏感染している。本研究で我々はEBVの潜伏先であるB細胞が、EBVの再活性化に伴い形質細胞へ分化して抗体産生を行う際に、活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)が誘導されること、そしてもともとB細胞上にあるIgMからクラススイッチしたIgG, IgEさらにはIgG4も産生されることを示した。EBV再活性化ではバセドウ病の原因自己抗体であるTSHレセプター抗体(TRAb)も産生される。我々は骨髄・胚中心を通らずにTRAbが産生され、バセドウ病の発症・増悪に関与すること、さらに診断法として利用できること(特許取得)を示した。
著者
鈴木 俊幸 齋藤 真麻理 小林 一彦 田中 大士 中嶋 隆 入口 敦志 海野 圭介 栁瀬 千穂 岩橋 清美 荒木 仁朗 粂 汐里 滝澤 みか 小林 健二
出版者
人間文化研究機構国文学研究資料館
雑誌
国文研ニューズ = NIJL News (ISSN:18831931)
巻号頁・発行日
no.54, pp.1-16, 2019-01-23

●メッセージ継承と蓄積●研究ノートホノルル美術館蔵『塵滴問答』について●エッセイ一期一会●トピックス第11回日本古典文学学術賞受賞者発表第11回日本古典文学学術賞選考講評中世日本の写本文化をめぐる研究集会肥前島原松平文庫における合同古典籍研修会日本古典籍セミナーUniversity of California, Berkeley 2018公開研究会「古典籍画像に対する文字認識と内容解析への取り組み」大学共同利用機関シンポジウム2018「福島県浜通りの歴史と文化の継承―『大字誌ふるさと請戸』という方法―」平成30年度古典の日講演会第42回国際日本文学研究集会総合研究大学院大学日本文学研究専攻の近況●表紙絵資料紹介『かみよ物語絵巻貼付屏風』六曲一隻
著者
野原 恵子 鈴木 武博 岡村 和幸 秦 健一郎 中林 一彦
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第49回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S18-3, 2022 (Released:2022-08-25)

妊娠中の環境因子曝露が、子の成長後の各種疾患リスクを増加させるばかりでなく、孫世代や、それ以降の世代にも同様の影響をおよぼすという報告が増加している。ヒ素についても、オスが成長後に肝腫瘍を発症しやすい系統であるC3Hマウスにおいて、妊娠期無機ヒ素曝露を受けたF1オスを介して孫世代(F2)で肝腫瘍が対照群と比較して増加することがみつかっている。このような世代間の影響伝搬の分子メカニズムはまだほぼ未解明であるが、父性経由、すなわち精子を介する影響の伝搬は精子のエピゲノムが担うと考えられている。 代表的なエピゲノム因子であるDNAメチル化は、ヒ素の影響をうけることが1990年代から報告されている。そこで私たちは、F2への影響伝搬のメカニズム研究として、F1精子のDNAメチル化変化の次世代シークエンス解析を行った。その結果、妊娠期ヒ素曝露を受けたマウスの仔(ヒ素群F1)の精子では対照群と比較して全染色体でDNAメチル化が低下し、特にレトロトランスポゾンのLINEとLTRで低メチル化DNAの出現頻度が増加することをみいだした。 一方、生殖細胞のDNAメチル化は受精後いったんほぼ消去され再構成を受けることから、環境因子による精子のメチル化変化が受精後の胚に伝わるのかはこれまで不明であった。そこでヒ素群と対照群のF1オスをそれぞれ対照群雌と交配してDNAメチル化再構成後のF2胚を得、同様にDNAメチル化解析を行った。その結果、ヒ素群F2胚においても、F1精子と同様のDNAメチル化変化を検出した。 DNAメチル化はレトロトランスポゾンの有害な転移を抑制する役割をもち、メチル化低下はゲノム機能のかく乱につながりうる。本研究は、妊娠期無機ヒ素曝露によってF1精子でLINEやLTRの低メチル化がおこり、この領域のDNAメチル化変化が精子から次世代の胚に受けつがれることを示した。
著者
中林 一彦 白澤 専二
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.66-72, 2010 (Released:2010-04-30)
参考文献数
27
被引用文献数
2 5

自己免疫性甲状腺疾患(AITD)は甲状腺機能亢進症であるバセドウ病と機能低下症である橋本病に代表される,最も頻度の高い自己免疫疾患の一つである.AITDは複数の遺伝要因と環境要因が相互作用し発症に至る多因子疾患であると考えられる.これまでに同定されたAITD関連遺伝子群は,①ヒト主要組織適合遺伝子複合体(MHC)領域のHLA遺伝子,②MHC領域外の免疫関連遺伝子,③甲状腺特異的遺伝子,の三群に大別できる.ゲノム関連研究により主要なAITD関連遺伝子群を網羅的に同定することは,AITD発症機構の解明のための極めて有用な基盤情報となる.近年,複数の自己免疫疾患についてゲノムワイド関連研究が実施され,多数の疾患関連遺伝子多型が新規に同定されている.本稿では,バセドウ病を対象としたゲノムワイド解析の現状,ならびに筆者らが日本人AITD症例群を対象とした連鎖・関連解析により同定したAITD関連遺伝子ZFATの分子機能について概説する.
著者
鈴木 弘子 高梨 潤一 永沢 佳純 小林 一彦 富田 美佳 玉井 和人 河野 陽一
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.319-322, 2001-07-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1

特発性頭蓋内圧亢進症 (IIH) の小児4例について臨床的, 画像的な検討を行った.全例主訴は頭痛で3例に乳頭浮腫を認めたが, 髄液圧が106cmと高値であった1例では乳頭浮腫を認めなかった.2例は反復髄液穿刺のみにて軽快した.初発時, MRIにて全例にempty sellaを認めた.また視神経に関しては,(1) 視神経の延長・蛇行,(2) 視神経周囲髄液腔の拡大,(3) 眼球後部の平坦化の2つ以上を全例に認めた.経時的に観察し得た3例中2例で, 治療による画像所見の改善を認めた.眼底検査に加え, MRIでの下垂体・視神経の評価がIIH, 特に乳頭浮腫を欠く症例における診断上重要と思われた.
著者
林 一彦 渡邉 佳恵 大村 雅 木場 秀夫
出版者
日本身体障害者補助犬学会
雑誌
日本補助犬科学研究 (ISSN:18818978)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.40-43, 2010

一般に、歯が折れたり欠けたりすることは破折と呼ばれている。犬においては、歯の破折は比較的しばしば認められる歯牙の実質欠損である。今回、著者らは2例の介助犬の歯の破折を治療する機会を得たので、その病態と治療方法について供覧する。また、その発生機序についても若干の考察を加えた。症例は2例とも上顎第4前臼歯が斜めに破折(斜折)しており、歯髄は露出していた。治療としては生活歯髄切断術と歯髄覆罩を行なったのちに光重合型コンポジットレジンで充填した。上顎第4前臼歯の斜折は硬いものをかんだ時に生ずる典型的な破折であるため、ストレス解消のために与えた硬いチュウトイが原因と推察された。したがって、今後は硬いチュウトイの代替となるストレス解消法を模索する必要があるのではないかと思われた。
著者
所 功 川北 靖之 黒住 祥祐 小林 一彦 宮川 康子 若松 正志 海野 圭介 山口 剛史 飯塚 ひろみ 石田 俊 今江 廣道 宇野 日出生 岸本 香織 京條 寛樹 久世 奈欧 (野村 奈欧) 嵯峨井 建 笹部 昌利 篠田 孝一 宍戸 忠男 末松 剛 土橋 誠 橋本 富太郎 松本 公一 村山 弘太郎 山本 宗尚 吉野 健一 米田 裕之 若杉 準治
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

近世(江戸時代)の賀茂大社(上賀茂・下鴨両社)では、世襲の社家神職たちにより、朝廷と幕府の支援をえて、葵祭や社務が運営されてきた。私共は、その実情を伝える社家の記録や祭礼の絵巻などを、朝廷の御記や公家の日記などと照合しながら、相互関係の解明に努めた。その成果は、本学日本文化研究所の紀要や所報などに発表し、また本学図書館所蔵の賀茂関係絵巻などは大半をデジタル化し詞書(ことばがき)の解読も加えて貴重書アーカイブスに公開している。
著者
栗林 一彦
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

III-V族化合物半導体の溶液成長過程においてしばしば見られる巨大ステップ(マクロステップ)はドーパントの偏析をもたらす等により、結晶の品質を著しく損なうことが指摘されている。本研究は、赤外線を観察光とする顕微干渉計を用い、III-V族半導体であるGaPの溶液成長過程をリアルタイムで観察し、マクロステップの形成に関する液相中の温度勾配、流れ等の影響から、成長面形態の安定性に関する知見を得ることを目的としている。本年度は、上記リアルタイム観察から求めたマクロステップ間隔λを拡散支配モデル及び濃度境界層モデルによる計算と比較し、液相中の流れによる撹拌の影響の検討を行なった。西永らによる拡散律速型の界面安定性理論を、液相中の流れの効果を取り入れた濃度境界層モデルに拡張すると、λは2π√<DC_<e0>τ_D/C_sR(t)><^^-λ<^^-2π√<3DC_<e0>τ_D/C_sR(t)>で与えられる。ここでC_<e0>は曲率が0の時の液相中の平衡溶質濃度、C_sは固相中の溶質濃度、τ_Dはキャピラリー定数、Dは拡散係数、R(t)は成長速度である。λ、R(t)はそれぞれ明視野像、干渉縞像から求めた。これらの実測値は上記の関係を満たした。このことは、マクロステップの拳動は西永らの界面安定性理論でかなり良く説明できることせ示すものといえよう。また上部を冷却、下部を加熱すること等により液相中に積極的に流れを生じさせた場合、λは小さくなること、さらには、ステップクーリング及びニアクーリング法のいずれの場合もマクロステップが発生・発達したのは対照的に、適当な正の温度勾配がマクロステップの発生を抑制することが確認された。この結果は、温度勾配の付加が流れの抑制及び界面の安定化をもたらすことを示すものである。
著者
赤瀬 信吾 田中 登 藤本 孝一 鈴木 元 小林 一彦 岸本 香織
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

冷泉家時雨亭文庫の蔵書のうち冷泉家時雨亭叢書(朝日新聞社刊)未収録のもの約500点を詳細に調査した。そのうち77点については『新古今和歌集 打曇表紙本 風雅和歌集 春夏』をはじめとする16巻に分けて刊行した(現在も刊行中)。また、特に注目される擬定家本私家集(定家書写本の様式をまねて作成された写本群)については、和歌文学会関西例会においてシンポジウムを催した。これは、鎌倉時代中期から後期にかけての歌書が、どのように作成されていったのかを克明に研究する方法とその意義とを明確にする画期的なシンポジウムとなった。
著者
林 一彦 渡邉 佳恵 大村 雅 木場 秀夫
出版者
日本身体障害者補助犬学会
雑誌
日本補助犬科学研究 (ISSN:18818978)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.40-43, 2010 (Released:2011-03-01)
参考文献数
4

一般に、歯が折れたり欠けたりすることは破折と呼ばれている。犬においては、歯の破折は比較的しばしば認められる歯牙の実質欠損である。今回、著者らは2例の介助犬の歯の破折を治療する機会を得たので、その病態と治療方法について供覧する。また、その発生機序についても若干の考察を加えた。症例は2例とも上顎第4前臼歯が斜めに破折(斜折)しており、歯髄は露出していた。治療としては生活歯髄切断術と歯髄覆罩を行なったのちに光重合型コンポジットレジンで充填した。上顎第4前臼歯の斜折は硬いものをかんだ時に生ずる典型的な破折であるため、ストレス解消のために与えた硬いチュウトイが原因と推察された。したがって、今後は硬いチュウトイの代替となるストレス解消法を模索する必要があるのではないかと思われた。