著者
柏木 舞 髙坂 康雅
出版者
日本離婚・再婚家族と子ども研究学会
雑誌
離婚・再婚家族と子ども研究 (ISSN:24357235)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.32-46, 2022 (Released:2023-09-01)
参考文献数
35

本研究の目的は,Rowlands(2019)の片親疎外尺度(RPAS)を参考に,日本で使用できる離婚をした親を対象とした片親疎外を測定する尺度(PASPJ)を作成し,信頼性,妥当性を検証することであった。離婚経験があり,別れた相手との間に15歳以下の子どもがいる648名を対象に,PASPJ暫定項目,親子関係,人生に対する満足について調査を実施し,265名(男性73名,女性192名)を分析対象者とした。PASPJ暫定項目の因子分析を行ったところ,「親に対する肯定的な感情の欠如」「借り物のシナリオ」「もう一方の親に対する無条件で無批判なサポート」「中傷活動」「独立した思想家」の5因子が抽出された。居住形態と性による2要因分散分析を行ったところ,「親に対する肯定的な感情の欠如」「借り物のシナリオ」「もう一方の親に対する無条件で無批判なサポート」において別居親の方が同居親よりも得点が高いことが示された。またPASPJの5得点と親子関係尺度(久和・梁, 2006),人生に対する満足尺度(角野, 1994)との相関を算出したところ,「親に対する肯定的な感情の欠如」「借り物のシナリオ」「もう一方の親に対する無条件の再帰的サポート」「中傷活動」は予想された関連を示したが,「独立した思想家」は予想と反した関連を示した。これらから,「独立した思想家」を除く4下位尺度で構成されたPASPJを開発した。
著者
稲葉 昭英
出版者
日本離婚・再婚家族と子ども研究学会
雑誌
離婚・再婚家族と子ども研究 (ISSN:24357235)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.2-19, 2023 (Released:2023-09-01)
参考文献数
27

本研究の目的は,離別母子世帯における非同居父と子との交流が子にどのような影響を及ぼすのか,を検討することである.無作為抽出にもとづく確率標本データを用いて,中学校3 年生の子のいる母子世帯について,非同居父と子との会話頻度,非同居父から子へのサポートが子の自己肯定感に及ぼす影響を計量的に検討した.会話頻度,サポートどちらの項目も欠損値が過半数を占めていたが,欠損値を含めておこなった分析,欠損値を示したデータを除外して無回答傾向を統制しておこなった分析,いずれにおいても女子においては父と「友達のこと」について会話する頻度が高いほど,また父が「自分のことをわかっている」と思えるほど,有意に自己肯定感が高い傾向が示された.ただし,以上の傾向は男子には示されなかった.非同居父は女子に対して表出的なサポートの提供者として少なからぬ役割を有し ているように思われる.このことは,非同居父と子との関係の継続が子どもにとって利益となる可能性を示している.