- 著者
-
稲葉 昭英
- 出版者
- 福祉社会学会
- 雑誌
- 福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
- 巻号頁・発行日
- vol.2007, no.4, pp.61-76, 2007-06-23 (Released:2012-09-24)
- 参考文献数
- 24
ソーシャル・サポート研究の概要を紹介しつつ,その理論的な再構成を行い,社会関係資本研究にむけて提言を行うことが本稿の目的である. ソーシャル・サポートは有害なライフイベントが個人に及ぼす影響を緩衝する対入関係的要因として概念化され,経験的研究の中でそれが探索された.サポートと関連を有するニーズには受け手の想定するニーズ,送り手の想定する「受け手の」ニーズ,「受け手の福祉に貢献する」ニーズの3者が存在し,それぞれの重なりの中に従来のサポート研究を位置づけることができる.こうしたソーシャル・サポート研究は,事実上ケアの経験的研究といいうる側面を持つ.また,サポート研究において大きな効果が検証されてきた「サポートの利用可能性」は,ケアによるニーズの充足可能性と考えることが可能であり,ケアによるケイパビリティの重要性を示したものと整理することができる.ソーシャル・サポート研究は,健康やメンタルヘルスに関連した分野での対人関係資源の研究であったため,他の分野への広がりは大きくなかったが,中範囲レベルでの研究の蓄積が進んだ.分析単位を個人におく社会関係資本の概念は,ソーシャル・サポートとの接点を大きく持つ.社会関係資本研究は,分析単位を集合体レベルに置くことで様々な可能性をもちうると思われるが,マクロな事象間の関連を説明する理論として分析単位を個人に置くモデルを用いることが有効であると思われる.