- 著者
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小田切 紀子
- 出版者
- 一般社団法人 日本発達心理学会
- 雑誌
- 発達心理学研究 (ISSN:09159029)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, no.3, pp.245-256, 2003
本研究の目的は,大学生男女646人を対象にして,離婚と離婚家庭に対する否定的意識の形成過程について検討することである。そのために,離婚観,結婚観,性役割観,育児観,家族の信頼感を尋ねる質問紙調査を実施した。その結果,離婚と離婚家庭に対する否定的意識の形成には,結婚と育児に対する意識が関与しており,「伝統的結婚観」,「結婚への期待」,「育児に対する拘束感」が強いほど,離婚と離婚家庭に対して否定的な判断をする傾向が明らかになった。また,離婚に対する否定的意識の形成過程には性差が認められ,性役割を受容していることが,男子の場合は「育児に対する拘束感」を介して,女子の場合は結婚,育児への肯定的意識を介して,離婚に対する否定的意識を強める傾向が明らかになった。以上から,結婚経験のない大学生は,将来の結婚や育児に対する期待や考えをもとにして,離婚に対する否定的意識を形成していることが明らかになった。このことは,離婚が思いこみや固定化されたイメージで判断されていると推測でき,離婚や離婚家庭の実情についてより深く理解することで,それらへの否定的意識が低減する可能性が示唆された。