著者
飯田 貴次 若林 久嗣
出版者
日本魚病学会
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.77-83, 1983
被引用文献数
1 9

1. ウナギ,ニジマス,コイ,ティラピア,クロダイの新鮮血清の殺菌作用について,E. coliを用いて調べた。2. すべての魚種の新鮮血清に殺菌作用が認められ,ザイモサン処理,EDTA, EGTA添加が殺菌作用に及ぼす影響により,この殺菌作用は補体の代替経路によるものと判断された。3. しかし,各種処理が及ぼす影響に違いがみられ,魚種により代替経路活性過程が一様でないことが示唆された。4. 魚病細菌V.anguillarum, E. tardaに対する殺菌作用も調べたが,E. coliに対する結果よりもその程度は低かった。
著者
Pen Heng Chang Shu Hwae Lee Hsien Choung Chiang Ming Hwa Jong
出版者
日本魚病学会
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.209-210, 1999-12-15 (Released:2009-10-26)
参考文献数
11
被引用文献数
12 64

1995年に台湾のキンギョ養殖場において, ウイルス感染によると思われる大量死が発生した。罹患魚は主に稚魚(体長1.5-2.0cm)で, 死亡率は90%に達した。病理組織学的観察により腎臓間質などの内臓や皮膚に壊死病巣の形成がみられ, ウイルス感染細胞には肥大化した核が特徴的にみられた。病魚から検出されたウイルス粒子は, 電顕観察によりヘルペスウイルス科に属すると考えられた。本ウイルス感染症は, 日本のキンギョで報告されているヘルペスウイルス性造血器壊死症と酷似していた。
著者
Donald V. Lightner R. M. Redman
出版者
日本魚病学会
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.165-180, 1998-10-20 (Released:2009-10-26)
参考文献数
99
被引用文献数
23 55

ウイルス病は世界のエビ養殖産業に甚大な経済的被害をもたらしている。 アメリカにおいては Taura syndrome virus (TSV),Infectious hypodermal and hematopoietic necrosis virus (IHHNV) および Baculovirus penaei が重要な病原ウイルスとなっている。 これまでに多くのウイルス病対策が試みられてきたが, SPF (specific pathogen-free) あるいは SPR (specific pathogen resistant) の種または系統のエビを用いることが最良の防除対策であると考えられ, 最近アメリカでは TSV および IHHNV 耐性の Penaeus stylirostris の系統が養殖されている。
著者
松山 知正 南 隆之 福田 穣 佐野 菜採 坂井 貴光 高野 倫一 中易 千早
出版者
日本魚病学会
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.32-35, 2016
被引用文献数
5

マダイイリドウイルス(RSIV)病の感染防御における血清抗体の関与を検討するために,マダイ,ブリ,ヒラマサ,カンパチおよびイシダイについて受動免疫試験を行った。感染を耐過した個体群の血清を予め腹腔内に接種した試験区では,イシダイを除く全ての魚種で未感作な個体群の血清を接種した試験区と比較して有意に死亡率が低下した。ブリでは耐過魚血清から精製した抗体を接種した試験区でも有意に死亡率が低下した。ワクチンを投与した個体群の血清を接種した試験区では,ヒラマサとイシダイを除いて,有意に死亡率が低下あるいは生存時間が延長した。マダイとブリ類では, RSIV病に対する感染防御に血清抗体が関与する。
著者
山田 義行 加来 佳子 若林 久嗣
出版者
日本魚病学会
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.35-40, 2000-03-15 (Released:2009-10-26)
参考文献数
15
被引用文献数
7 9

非定型Aeromonas salmonicidaの系統解析を16S rDNAの塩基配列の解析により行った結果, 国内で分離された菌株は, キンギョ由来菌株, ウナギおよび海産魚(ムシガレイ, アイナメ, ヒラメ, クロソイ)由来菌株, ニシキゴイ由来菌株, マゴイ由来菌株の4グループに分類された。近年における本菌の宿主範囲の拡大はキンギョ由来菌株とは系統を別にする菌株群によると考えられた。
著者
楠田 理一 高橋 幸則
出版者
日本魚病学会
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.87-97, 1970-03-30 (Released:2010-02-10)
参考文献数
24
被引用文献数
1

(1) コイ科魚類の立鱗病の原因として細菌が関係するか否かを確かめるために,病魚の細菌学的検査を行なったところ,復元性をもつ細菌を分離することができた。(2) 分離菌の形態学的,生化学的および生物学的性状を検討した結果Aeromonas属と同定され, EDDY,SCHUBERTおよび江草らの記載と比較してAeromonas liqnsfaciensとするのが妥当であると思われた。(3) 本菌の薬剤に対する感受性はクロラムフェニコール,ナリジキシックアシッドなどが強力であるが,薬剤によってかなりの差が認められた。
著者
中野 平二 河邉 博 梅沢 敏 桃山 和夫 平岡 三登里 井上 潔 大迫 典久
出版者
日本魚病学会
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.135-139, 1994-06-15 (Released:2009-10-26)
参考文献数
4
被引用文献数
46 121

1. 1993年に西日本で発生した養殖クルマエビの大量死に関連してクルマエビ養殖を行っている17県を対象に, その発生状況を調べるとともに, 病エビを用いて感染実験を行った。2. 大量死の発生は中国産種苗の導入と密接に関連していた。3. 死亡率は発生例の約8割が80%以上であり, 死亡エビのサイズは0.01g~22.5gと範囲は広かった。4. 大量死の原因と考えられるような細菌, 真菌, 寄生虫は検出できなかった。5. 自然発症及び実験感染クルマエビの磨砕濾液の筋肉内注射によりクルマエビは容易に死亡し, 死亡エビは自然発症個体と同様の症状を呈した。6. 以上の結果より, 今回の大量死の原因としては濾過性病原体が強く疑われ, それは中国産クルマエビとともに日本に持ち込まれたものと推定された。
著者
桃山 和夫 平岡 三登里 中野 平二 河邉 博 井上 潔 大迫 典久
出版者
日本魚病学会
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.141-148, 1994-06-15 (Released:2009-10-26)
参考文献数
13
被引用文献数
21 54

1. 1993年に西日本で発生した養殖クルマエビの大量死に関連して, 自然発症個体, 実験感染個体および輸入直後の採材個体について病理組織観察を行った。2. 自然発症および実験感染個体の間で症状に差は認められず, 両者は同一の疾病であると判断された。3. 病エビの肉眼的主な異常な体色の赤変ないし褪色と外骨格における大きさ数mm以下の白点の形成であった。4. 白点は基本的には外骨格標本の薄い透明層とその直下の外骨格内のやや厚い不透明層とから構成されていた。5. 本疾病の病理組織像は皮下組織をはじめ, 中・外胚葉起源の様々な組織における種々の細胞の核の肥大と無構造化を伴う細胞の変性によって特徴づけられた。6. 本疾病はクルマエビ属エビ類の新しい疾病であると考えられ, その原因としては濾過性病原体が疑われた。7. 中国から輸入翌日に採材されたクルマエビに本疾病の特徴的病理組織像が明瞭に観察され注目された。
著者
Fernandez Roselyn D. Yoshimizu Mamoru Ezura Yoshio Kimura Takahisa
出版者
日本魚病学会
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.27-34, 1993-03

Growth responses to three different media, temperatures, and sodium chloride concentrations in the media were determined for 13 salmonid and 14 non-salmonid fish cell lines. Most cell lines showed better growth in Eagle's MEM than in Medium 199 or in Leivobitz L-15 medium. Nine salmonid cell lines grew well in the normal sodium bicarbonate buffer in Eagle's MEM, while 11 non-salmonid cell lines grew better in Eagle's MEM buffered with either HEPES-bicarbonate or Tris-bicarbonate. Optimum temperature for growth ranged from 15 to 20℃ for almost all salmonid cells and 20 to 30℃ for non-salmonid cells. Most of the cell lines showed highest growth in commercial medium preparations with the lowest concentrration of sodium chloride (0.116M) examined. However, three of the six cell lines derived from rainbow trout, Oncorhynchus mykiss, and cell lines from eels, Anguilla japonica, showed optimum growth response at a higher sodium chloride concentration of 0.171M in the medium.
著者
飯田 悦左 溝上 昭男
出版者
日本魚病学会
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.157-164, 1996-09-15 (Released:2009-10-26)
参考文献数
13
被引用文献数
36 89

天然アユおよびオイカワに体表の潰瘍形成を主徴とする病気が発生し, 病魚の体表患部および腎臓から2種類の滑走細菌が改変 Cytophaga 培地で分離された. 生化学的性状などから1種は, Cytophaga psychrophila と同定され, もう1種も Cytophaga 属に分類されたが種名は決定できなかった. 両種は血清学的にも区別可能であった. 両種の代表株はアユおよびオイカワに対して病原性を示した. Cytophaga sp. は分離頻度が低かったことなどから, C.psychrophila が今回の流行病の主要な原因菌と考えられた.
著者
永井 崇裕 坂本 崇
出版者
日本魚病学会
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.99-104, 2006 (Released:2007-05-11)
参考文献数
14
被引用文献数
2 8

冷水病感受性の低い海産交配系アユと高い累代系アユの交配系統を作出したところ, 冷水病菌に対する感受性は両系統の中間になり, この性質は遺伝する可能性が示された。これらのアユの免疫応答を比較するために, ホルマリン処理冷水病菌で浸漬免疫して有効性を検討した結果, ワクチン効果は認められるものの系統間でその効果に差は認められなかった。しかし, 冷水病菌のホルマリン死菌で免疫した際の抗体価は, 海産交配系が最も高く, これは冷水病低感受性と関連するかもしれない。