- 著者
-
伊藤 和憲
- 出版者
- 明治国際医療大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2006
【目的】エストロゲンが筋肉の痛みや慢性化にどのように影響しているか検討を行った。【方法】実験1:無処置のラット24匹を性周期ごとに4群(各6匹)にわけ、皮膚表面の閾値をvon Frey test [VFT]で、また筋肉の閾値をRandall-Selitto test [RST]で測定した。なお、各ラットは閾値測定終了後に血液を採取し、血中エストロゲン量も調べた。実験2:ラット12匹を卵巣摘出群(n=6)、卵巣摘出+エストロゲン(20%)補充群(n=6)に分け、運動負荷を行った時の変化を観察した。実験3:ラット12匹を卵巣摘出群(n=6)、卵巣摘出+エストロゲン補充群(n=6)に分け、運動負荷を行う腓腹筋の大腿動・静脈の血流を遮断した上で運動負荷を行った時の閾値変化を調べた。実験2・3ともに、経時的な閾値測定と、負荷を行った筋肉に鍼電極を刺入して電気刺激したときの筋電図変化を観察した。なお、運動負荷・卵巣摘出・閾値測定は昨年と同様である。【結果】実験1では性ホルモンと各閾値の関係は明確ではなかったが、血中のエストロゲン量が多いとRSTの閾値のみ低下する傾向にあった。実験2では卵巣摘出後にエストロゲンを補充した群で特にRCTの閾値が低下し、実験3ではエストロゲンを補充した群のみ他の群に比べて長く(2-3週間程度)RST閾値の低下が継続したが、卵巣摘出したのみ群は、雄ラットと同様な経時的変化を示した。一方、筋電図学的な変化に関しては、卵巣摘出群・エストロゲン補充群で違いは見られなかった。【考察】エストロゲンが血中に高濃度に存在するとき筋肉の閾値が低下する傾向があり、また筋肉痛が出現する期間が延長する傾向にあった。このことから、筋肉痛の慢性化には性ホルモン特にエストロゲンの関与が強く、線維筋痛症などの筋肉疾患の予防や治療にエストロゲンを考慮する必要があることが示唆された。