著者
鈴木 雅雄 江川 雅人 矢野 忠 苗村 健治 山村 義治
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.233-240, 2000-09-20
被引用文献数
5 2

慢性閉塞性肺疾患は日常生活動作が強く制限される疾患である。本疾患に対し鍼治療を行い, 呼吸器症状が改善した一症例を経験したので報告する。症例は70歳の男性, 主訴は労作時呼吸困難。現病歴は93年8月に呼吸困難を訴えて当院内科を受診し, 肺気腫及び気管支喘息と診断された。薬物療法開始後も症状はしばしば増悪した。97年2月より在宅酸素療法(HOT)が開始された。鍼治療は, 97年8月5日より併用を開始した。所見ではHugh-Jones分類V度。%肺活量63.5%, 1秒率29.4%, PEFR:84.8l/分(朝), 93.5l/分(夜)。鍼治療は, 中府, 中〓, 関元, 尺沢, 肺兪を基本穴とし, 置鍼術は10分間とした。治療効果判定のため反復法を採用し, 呼吸器疾患日誌から症状点数を算出した。日常生活上の呼吸状態をVisual Analog Scale(VAS)により評価した。14カ月間に60回の鍼治療を行い, 治療期間中には症状の改善が認められた。無治療期間中には症状再燃が観察された。本症例では鍼治療の併用により呼吸器症状及び呼吸機能の改善がみられ, 慢性閉塞性肺疾患の進行例において鍼治療の有効性が示唆された。
著者
松本 淳 石崎 直人 苗村 健治 山村 義治 矢野 忠
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.56-67, 2005-02-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
33
被引用文献数
1

【目的】過敏性腸症候群 (IBS) を始めとする便通異常は、有病率が高い。また、心理的異常を伴うことが多く、従来の治療に抵抗するものも多い。今回、IBS患者に対し鍼灸治療を行い、反転法により臨床効果を検討した。【対象及び方法】罹病期間4年以上で半年以上の投薬によっても症状が十分に改善しなかったIBS患者4例に対し、中医学的な弁証に従い鍼灸治療を行った。治療期間 (B期間) は10回ないし20回を1クールとし、無治療期間 (A期間) と交互に繰り返した。便通異常の評価は、排便日誌をもとに、腹痛・腹部膨満感の程度、排便回数、便性状を記録した。また心理状態、quality of life (QOL) についても評価した。【結果及び考察】4例中3例において腹痛、腹部膨満感、QOLがB期間中は軽減し、2例で服薬量が減少した。心理状態には一定の傾向は見られなかった。今回の治療及び無治療期間の経過から、鍼灸治療がIBS患者の腹痛等の症状およびQOL改善に有効な治療となる可能性が示唆された。