著者
三澤 美和 千葉 義彦 酒井 寛泰
出版者
星薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

アレルギー性気管支喘息時に発現する気道過敏性の発症機序を薬理分子生物学的に検討を行い、以下の成果を得た。1.抗原反復チャレンジラットから摘出した気管支は endothelin-1(ET-1)収縮反応性が増大していた。このET-1 収縮反応性亢進にはCa^<2+>感受性亢進現象が関与しており、CTI-17とミオシン軽鎖キナーゼのリン酸化(活性化)が亢進していることに起因していた。2.反復抗原チャレンジにより気管支の matrix metalloproteinase (MMP)-12 mRNAとタンパク質の発現と活性化が亢進しており、MMP-12 が気道過敏性に関与していることを明らかにした。3.抗原暴露後に気管支平滑筋において活性化される転写因子を核抽出液を用いて protein/DNA array にて網羅的に把握した。活性化された転写因子のうち、RhoA プロモーター領域の配列と結合する可能性がある転写として、USF-1、Sp1、NF-E1、STAT5、STAT6 をつきとめた。4.Interleukin-13 は転写因子 STAT6を介して気道過敏性を発現した。5.Statin 系薬物である lovastatin をin vivo で投与することによって、抗原反復チャレンジによって発現するラット気道過敏性を ex vivo において抑制することが判明した。その際 RhoAの細胞膜への移行もlovastatin が抑制することも明らかとなり、statin系薬物が気管支喘息における気道過敏性の改善に有効である可能性を示唆した。6.Glucocorticoids は抗原誘発時に気管支平滑筋においてみられる RhoAupregulation を抑制することにより、気管支喘息に有効性を示すことが示唆された。
著者
神保 太樹
出版者
星薬科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、我が国では認知症の治療効果をはじめとして、匂いの持つ機能性(嗅ぐことによって心身に与えられる影響)に注目が集まっています。しかし、特に脳に対する機能性についてメディア等で広く知られている状態にも関わらず、匂いが脳のどのような部位に作用するかや、個々人の体質によって効果に差があるのかははっきりと分かっていません。そこで、脳機能イメージング技術を用いて匂いが脳のどのような場所に影響を与えるかを可視化しました。さらに匂いによく触れる機会がある人について、匂いが脳に与える影響が異なることも観察しました。この結果を活かし、匂いによる機能性がより有益かつ効果的に利用される為の一助となれば幸いです。
著者
細谷 孝博
出版者
星薬科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

Pokemon(POK erythroid myeloid ontogenic factor;LRF,FBI1,ZBTB7A)は、転写抑制因子で、肺がん細胞における過剰発現が、発がんまたはがんの維持に関与していること報告された。このPokemonによるシグナル伝達を阻害することが、がん治療薬につながると考えられており、本研究では、天然資源よりシグナル伝達阻害剤を得るための評価系の構築、天然資源のスクリーニングを行なった。本期間において、細胞を用いた評価系の構築とスクリーニングが終了した。
著者
斉藤 貢一
出版者
星薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

LC/TOFMSを用いた,痩身薬α-リポ酸のキラル分析法を構築した。本分析法は痩身目的のサプリメント製品の表示違反を判定することが可能となった。DART-TOF-MSによる脱法ハーブ製品中の合成カンナビノイド系および合成カチノン系薬物の迅速スクリーニング法を検討した。本分析法は,大麻との識別も可能であった。乱用の恐れのある医療用薬物として鎮痛薬・鎮痛補助薬30種を選定し、LC/TOFMSを用いた分析法を構築した。前処理に新規に開発した固相分散抽出法を選択することで、除タンパクを必要とせずに試料精製を迅速に行えるようになった。
著者
本多 利雄
出版者
星薬科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

生体機能分子の探索・創製においては、その誘導体合成をも容易にするような簡便かつ効率的な合成法の確立が強く望まれる。古来より、イソキノリン類やインドール類を始めとするアルカロイド、さらには多くのテルペン類には興味ある種々の生理活性を示す化合物が知られている。しかしながら、それらの合成においては多段階を要したり、また複雑な試薬や反応条件等を必要とするものが多い。今年度の研究においては、我々の開発したヨウ化サマリウムによる位置選択的炭素-窒素結合開裂反応を鍵反応として用いることにより、α、α-二置換アミノ酸であるデオキシダイシベタインのキラル合成および強力な鎮痛活性を有するアファノルフィンのキラル合成に成功した。アファノルフィン誘導体の簡易合成法の確立は、今後オピオイド受容体選択的鎮痛薬の探索に有用な手段を提供するものと考えられる。また、コバルトカルボニルを反応剤とするエンイン環化を鍵反応として、潜在的鎮痛薬として期待されるインカルビリンの立体選択的合成も達成することが出来た。本合成はオピオイドとは異なったメカニズムを有する新たな鎮痛薬の開発に繋がる可能性を秘めている。上記合成は用いた試薬の特性を有効に活用したものである。一方、海洋産物の一種として単離されたウピアールはビシクロ[3.3.1]ノナン骨格を有する特異なテルペンである。本化合物の合成においては、アリルシランの分子内カルボニルーエン反応を基盤とすることにより、15工程、総収率10%以上で目的を達成することが出来た。この反応はパラトルエンスルホン酸を用いるという極めて温和かつ効率的なものであり、今後の更なる発展が期待できるものである。