著者
寺沢 拓敬
出版者
東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻
雑誌
言語情報科学 (ISSN:13478931)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.159-175, 2013-03-01 (Released:2013-05-27)

本研究の目的は、戦後日本社会における英語の位置づけを、世論調査の分析によって、客観的に明らかにすることである。このテーマは、従来から注目を集めてきたもので、先行研究も多数あるが、日本社会全体を考慮に入れた客観的な検討は乏しい。こうした問題に対処するため、過去に行われた世論調査を収集し、それらの分析・経年比較を行った。収集の結果、英語に関する設問を含む、多数の世論調査が見つかったが、紙幅の関係上、本研究では、英語志向の一指標となる2設問 ―すなわち「現在の英語学習」「英語学習意欲」― に焦点化し、とくにその歴史的変化とジェンダーとの関係性を主たる検討対象とした。分析の結果、日本社会「全体」を覆うかのように言われてきた「英語ブーム」や、「女性は本質的に英語志向」のような一枚岩的なジェンダー観・英語観には、根拠が薄いことがわかった。その上で、日本社会の英語志向には、従来言われてきたものよりも、いっそう複雑な歴史的推移・ジェンダー差が見出せることを明らかにした。
著者
鴻野 知暁
出版者
東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻
雑誌
言語情報科学 (ISSN:13478931)
巻号頁・発行日
no.10, pp.19-35, 2012

本稿は連体形や体言に後接し、そこで文が終止するというコソの文末用法について考察する。この用法は10C末頃から認められる。本稿では、平安初期から中期の作品を調査し、異文を併せて考えることによって、当該用法の発生を探った。上代で文の中間に現れていたコソは、中古には文末の述語内部にも生起するようになる。それに伴い、~ニコソアレという形式が頻繁に使われるようになる。当該用法は、これを下地として、~ニコソアレから(1)アレの省略、(2)ニの脱落という二つの変化によって生じたものであると結論される。係助詞の述語位置への進出は中世でさらに進行し、ヤランやゴサンナレ、ゴサンメレといった形式がこの背景の元で成立したと見られる。
著者
小野 絵里華
出版者
東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻
雑誌
言語情報科学 (ISSN:13478931)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.233-249, 2010-03-01

本稿では、「第三の新人」作家、安岡章太郎(1920-)の文壇デビュー作「ガラスの靴」(1951年)の作品分析をおこなう。「第三の新人」という呼称が、先の「戦後派」たちの作家に比べ、難解さ・思想性・政治性がないということをさして使われたように、通常、本作品は、占領下という時代状況にも関わらず、私的世界が描かれた、どこか童話的な透明な物語として読まれてきた。しかし、本稿の分析で分かるように、そこには、確固とした、敗戦という現実へのまなざしがあるのであり、主人公は、新しいアメリカという<権威>=「第二の父」のもとで、敗戦国民という屈辱感を全面的に抱いていることが分かる。そこには、江藤淳が1970年の論考で、対米依存型の日本社会を「「ごっこ」の世界」として捉えた事態が、まさに<私>のレベルで演じられているといえる。
著者
寺沢 拓敬
出版者
東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻
雑誌
言語情報科学 (ISSN:13478931)
巻号頁・発行日
no.11, pp.159-175, 2013

本研究の目的は、戦後日本社会における英語の位置づけを、世論調査の分析によって、客観的に明らかにすることである。このテーマは、従来から注目を集めてきたもので、先行研究も多数あるが、日本社会全体を考慮に入れた客観的な検討は乏しい。こうした問題に対処するため、過去に行われた世論調査を収集し、それらの分析・経年比較を行った。収集の結果、英語に関する設問を含む、多数の世論調査が見つかったが、紙幅の関係上、本研究では、英語志向の一指標となる2設問 ―すなわち「現在の英語学習」「英語学習意欲」― に焦点化し、とくにその歴史的変化とジェンダーとの関係性を主たる検討対象とした。分析の結果、日本社会「全体」を覆うかのように言われてきた「英語ブーム」や、「女性は本質的に英語志向」のような一枚岩的なジェンダー観・英語観には、根拠が薄いことがわかった。その上で、日本社会の英語志向には、従来言われてきたものよりも、いっそう複雑な歴史的推移・ジェンダー差が見出せることを明らかにした。
著者
栗田 岳
出版者
東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻
巻号頁・発行日
2012-10-25

報告番号: ; 学位授与年月日: 2012-10-25 ; 学位の種別: 課程博士 ; 学位の種類: 博士(学術) ; 学位記番号: 博総合第1174号 ; 研究科・専攻: 総合文化研究科言語情報科学専攻
著者
大野 晃由
出版者
東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻
雑誌
言語情報科学 (ISSN:13478931)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.201-217, 2010-03-01

Comme Paul Bénichou l'a mentionné, Hugo a souligné plusieurs fois la tâche sociale du «Poète» de rendre un «écho sonore» au monde par ses oeuvres dès la première pièce des Feuilles d'automne. Plus tard, il a étendu ce rôle au domaine politique. Il a demandé au dirigeant idéal de l'État d'assumer un rôle de «porte-parole» du peuple ; le hero de Ruy Blas et l'empereur des Burgraves incarnent ce rôle. Hugo s'est cru un «génie» privilégié qui interprète la volonté générale du peuple quand il a commencé la carrière politique en 1846. L'analyse de son discours parlementaire révèle, cependant, qu'il a abandonné graduellement cette conscience de soi en tant que «Poète» et cherché un autre moyen de persuasion. Nous examinons le développement de sa pensée sur la politique sociale et sur le suffrage universel. Nous allons essayer de démontrer que Hugo s'est transformé d'un utopiste humanitaire en un penseur politique réaliste vers 1850.
著者
小嶋 美由紀
出版者
東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻
雑誌
言語情報科学 (ISSN:13478931)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.33-48, 2010-03-01

本文试图阐明上海话与广东话的处置句、话题句里出现的续指代词"伊"及"佢"的功能。以往的研究既已指出, 包含续指代词的处置式句子只能表达非现实(irrealis)事件, 但却没有解释其制约原因。笔者认为设置续指代词的主要目的是表达说话人或动作者对某一个未实现的事件要实现的强烈意志。本文讨论处置意义与主语具有意志性的关系, 并明确说话人选择续指代词的动因。
著者
大野 晃由
出版者
東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻
雑誌
言語情報科学 (ISSN:13478931)
巻号頁・発行日
no.8, pp.201-217, 2010

Comme Paul Bénichou l'a mentionné, Hugo a souligné plusieurs fois la tâche sociale du «Poète» de rendre un «écho sonore» au monde par ses oeuvres dès la première pièce des Feuilles d'automne. Plus tard, il a étendu ce rôle au domaine politique. Il a demandé au dirigeant idéal de l'État d'assumer un rôle de «porte-parole» du peuple ; le hero de Ruy Blas et l'empereur des Burgraves incarnent ce rôle. Hugo s'est cru un «génie» privilégié qui interprète la volonté générale du peuple quand il a commencé la carrière politique en 1846. L'analyse de son discours parlementaire révèle, cependant, qu'il a abandonné graduellement cette conscience de soi en tant que «Poète» et cherché un autre moyen de persuasion. Nous examinons le développement de sa pensée sur la politique sociale et sur le suffrage universel. Nous allons essayer de démontrer que Hugo s'est transformé d'un utopiste humanitaire en un penseur politique réaliste vers 1850.