- 著者
-
宮崎 由子
- 出版者
- 武庫川女子大学短期大学部
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1995
第3次健康食品ブームと言われている今日、健康維持に役立つ食品としてきのこが注目を集めている。特に最近、きのこ由来の多糖体が脂質代謝に関与したり、免疫促進作用を示すことが報告されているので、筆者はきのこに含まれる糖脂質に着目し、数種きのこの糖脂質について構造解析し、その生理活性について検討した。今回は、マイタケ(Grifora frondosa:新潟産)を用いて、Folch法に従い脂質を抽質した。抽出脂質はクロロホルム:メタノール:水(65:25:4by vol)及びクロロホルム:メタノール:酢酸(65:25:10by vol)の展開溶媒にて二次元薄層クロマトグラフィー(TLC)を行い、アントロン試薬で糖脂質を、Dittmer-Lester試薬でリン脂質を、ニンヒドリン試薬でアミノ脂質を各々検出した。総脂質をアルカリ加水分解しTLCで分画後、糖脂質を単離精製しIR分析及びFAB/MS分析により構造を同定した。総脂質の主成分は、カルジオリピン(CL),フォスファチジルエタノールアミン(PE),フォスファチジルコリン(PC),フォスファチジルセリン(PS)の各リン脂質と3種類の糖脂質(MGL-1,2,3)を検出した。単離した糖脂質について構造解析を行なった結果、MGL-1はグルコースを構成糖とし、d_<18:0>の長鎖塩基を持ち、脂肪酸として2-ヒドロキシステアリン酸を含有する質量数m/z742(M-H)^+のセラミドモノヘキソシドであることを確認した。しかし、MGL-2,MGL-3については構造を明確にはできなかった。さらに、MGL-1,2,3について生理活性を検討するために免疫の指標となるヒト好中球に対する貧食活性を調べた。ヒト末梢血よりmonopoly resolving meduimを用いて好中球を分離し、coverslip上にて90分前培養を行い、その好中球に各MGL-1,2,3をコートした黄色ブドウ球菌死菌体を加え60分培養した。その後メチレンブルーで染色し顕微鏡下で観察し、好中球内に貧食している菌数をカウントした。その結果MGL-2において貧食活性の促進が認められた。しかし、MGL-1およびMGL-3では変化はなかった。今後、MGL-2について、貧食細胞内での殺菌作用についても検討するつもりである。