著者
上原 徹三 清水 由美子 荒井 秀一
出版者
武蔵工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

コンピュータによる自然言語研究で辞書とコーパス(文例集。文法情報を付加したものは特に有用)が重要である。単語辞書には読み・品詞情報の他に概念情報が望まれる。現在の日本語については、概念情報を与える単語辞書と文法情報を付加したコーパスが電子化データとして存在する。しかし、古典文に関してはそのような単語辞書もコーパスも存在しない。そこで、単語辞書とコーパスの整備とその応用に関する機能の試作と実験を行ない次の成果を得た。1.総索引からの品詞タグ付きコーパス変換作成機能の試作とそれによる古典文品詞タグ付きコーパスの試作紫式部日記などの日記文学および伊勢物語などの物語文学に関する市販の総索引から、品詞タグ付きコーパスに半自動変換を行った後、人手による修正で古典仮名文コーパスを完成した。2.品詞タグ付きコーパスによる確率的形態素解析上の古典仮名文コーパスを学習・評価データとする確率的形態素解析の実験と評価を実施した。評価においては、学習データとテストデータを順次ずらした繰返し実験により信頼度を求める等の配慮を行った。3.対訳辞書の見出し語の概念推定法訳語の概念が既知の対訳辞書を用いて、訳語からの見出し語概念の推定とその評価を実施した。本技術は、古語辞典(古典語見出しに対し現代語訳語を与える)による古典語の概念獲得の基礎技術となり得るものである。ただし、古語辞典から古語の概念を取得するという研究開始当初の目的は実現できなかった。これに関しては概念辞書の整備、概念推定法の改良など、さらに検討すべき課題がある。
著者
小林 光一
出版者
武蔵工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は「ジカチオン性二鎖型LB膜の作製とその吸着特性」を中心に系統的に行われたものである。以上研究費補助期間中に得られた結果を以下に要約する。モノジカチオン性アルキルアンモニウム塩(SAC,DAC,DSACとTSAC),ジカチオン性アルキルアンモニウム塩(XSAC)および第1級アルキルアミン(ODA)の膜形成能について検討した。これらの物質のうちで、二つあるいは三つアルキル基を持つDSAC,TSACおよびXSACは安定な単分子膜を形成することが明らかにされた。また、ODAはpH10以上で安定な単分子膜を形成することが分った。一方、MOやNO水溶液上でのπ-A等温線の測定から、TSAC,XSACおよびODAの単分子膜は下層水中のNOやMOイオンと強く相互作用することがわかった。作製されたTSAC,XSACおよびODAのLB膜はカチオン性の性質を保持しており、NOやMOなどの色素イオンに対して高い吸着特性を示した。これらの吸着挙動はLB膜中の炭化水素鎖の充填状態やpHによって影響することが分かった。また、これらの色素の吸着は静電的な相互作用によって化学量論的に起ることもわかった。さらに、カチオン性LB膜中のNOやMOの吸着状態には差異があることが明らかになった。すなわち、MO分子は膜表面に対してほぼ垂直な配置を取り、一方NO分子はLB膜表面に横たわった配置を取る。これはMOとNOの分子構造の違いに起因するものと考えられる。この研究で得られた分子配置についての情報はカチオン性LB膜へのいろいろな吸着質の吸着挙動を理解するのに役立つことが期待される。
著者
宿谷 昌則
出版者
武蔵工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究では、通風によって得られる「涼しさ」や昼光照明によって得られる「ほどよい明るさ」は、環境の物理要素がどのような変動をするときに得られるのかを被験者実験によって明らかにするとともに、人体エクセルギー収支と温冷感との対応関係を明らかにして、自然共生建築を計画するための基礎的な知見を得ることができた。以下に明らかになった内容を要約して示す。●設定温度25℃の冷房室では、空気温の変動が大きいにもかかわらず、温冷感申告の経時変化がほとんどなく、冷房室における温冷感の特徴は定常的で画一的であるのに対して、通風室では「汗をふく」などの行動が見られ、被験者の暑さへの対処方法は多様である。●「涼しさ」が得られるときの気流の振幅は、「涼しさ」が得られないときの2倍以上あり、気流の波形は、急激な上昇に引き続くゆっくりとした下降である。●ふだん昼光照明を行なうほとんどの被験者は、昼光照明を行なっている部屋で「ほどよく明るい」を申告し、窓から入ってくる光や屋外の様子から時間を把握していて、昼光照明のみの部屋では、申告した時間と実際の経過時間との差は最も小さい。●事務作業程度を行なっている人体が暑くも寒くもないような中立的な環境に置かれている場合、人体エクセルギー消費速度が最小になる。
著者
室田 昌子
出版者
武蔵工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

ドイツの社会都市に関する運用として、「地区マネージメント」に着目し、各州のモデル地域、先進州(ノルトライン・ベストファーレン州)、意欲的な取り組みを行っているベルリン市などの各地区の取り組みについて、実地調査、インタビュー調査、報告書などの資料調査を実施した。市担当者、地区マネージャー、関係者(地区団体、学校、住宅企業など)などの役割と活動を把握し、日本における地区マネージメントの可能性を考察した。
著者
向井 信彦 中川 真志
出版者
武蔵工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、血管の変形と血管を傷つけた際に発生する出血を同時に実現して性能評価を行うと共に、単体の計算機だけではなく複数の計算機をネットワーク結合した手術シミュレータシステムを構築して、処理の高速化に関する検討を行った。さらに、従来の血管モデルでは血管径を一定とした変形にしか対応できないため、血管径の変化も考慮したモデルを考案し、大動脈手術のような血管そのものの手術にも対応できるモデルと変形手法を構築した。
著者
小林 茂雄
出版者
武蔵工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

平成19年度は、前年度に実施した岐阜県白川村の平瀬地区における照明実験の結果を分析すると共に、平瀬地区における屋外照明の実施計画をまとめた。すなわち、既存のポール灯による街路照明ではなく、街路に隣接する空地や建物壁面などの照明を配置した低輝度分散型の照明計画である。防犯性と周辺への見通しを高めると共に、消費エネルギー量を現状よりも小さくするという提案であり、研究成果を基にした光環境整備まで結び付けることができた。さらに横浜市中区の山手西洋館において、場所の認知を促すと共に、歩行者の安心感を高め、消費エネルギーが高くならないようなライトアップの手法を検討し、2007年12月に実施した。照明方法としては、地域の象徴となる建物ファサードの中で、場所の認知につながる部位を抽出し、そこに光を集中させることと、人の気配を醸し出すような光をファサードにつくるということである。一部の街路灯を消灯し、筆者らが提案する低輝度分散型の街路照明も実験的に提示した。地域住民へのアンケート調査を基に照明を計画し、実施後にそれらの効果を検証した。以上の様に本研究では、異なる二つの地域を対象とし、各々の街の特性に合せた照明計画を実験的に提示し、その防犯効果、歩行者への安心感に与える効果、見通し、場所の認知への貢献度、などを検証した。そして何れの提案に対しても、現状の街路照明よりも、光束量が約1/4となり、消費エネルギーを削減できることを示した。
著者
田中 康寛
出版者
武蔵工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

架橋ポリエチレン(XLPE)を絶縁材料として用いるCVケーブルは交流高電圧用の送電ケーブルとして使用され、優れた絶縁性能とメンテナンスコストが低いことから、直流送電への適用が期待されているが、直流高電圧を印加すると、予期せぬ絶縁破壊が発生することから、高電圧直流送電には用いられたことがない。この絶縁破壊は空間電荷と呼ばれる電荷の蓄積現象によるものであると考えられてきたが、これまでは絶縁破壊と空間電荷を直接関係付ける現象は報告されていなかった。しかし近年になって、XLPEの原材料である低密度ボリエチレン(LDPE)に高電界を印加することで、多量の塊状空間電荷(パケット状電荷)が試料内部に蓄積し、局部的に電界が上昇し、絶縁破壊に至る現象を確認した。この現象を解析するために高電界を試料に印加でき、空間電荷分布を簡便に測定できるシステムを開発した。平成18年度はこの測定装置を用いてLDPE中の空間電荷分布を計測し、これまでの空間電荷挙動を再確認したとともに、LDPEにナノサイズの酸化マグネシウム(MgO)を添加することにより、同条件の電圧印加でもパケット状空間電荷が発生しないことを見出した。さらに、高温・高電界で空間電荷を測定できる測定装置を開発し、LDPEおよびナノサイズのMgOを添加したLDPEに高温で高電界を印加する実験を行い、MgOを添加した試料では、高温・高電界でもパケット状電荷が発生しにくいことなどを見出した。平成19年度は、バケット状電荷の発生モデルを数値的に解析するとともに、MgOをLDPEに添加することにより電荷の注入が抑制されるメカニズムとして、MgOとLDPEの誘電率の差が電気的ポテンシャルの井戸を形成し、その井戸に電荷が捕獲されることで、それ以上電荷が注入されないというモデルを考案し、その検証のためのシミュレーションと実験を行なうことで検証した。
著者
天野 克也
出版者
武蔵工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.住宅地街路からみたマント空間の評価構造は、居住者は『開放感』『安心感』『親近感』、大学生は『安心感』『視線感』『親近感』、中学生は『親近感』『開放感』『安心感』の3因子構造で説明できること、中学生は、実質的には『親近感』の1軸構造であり、空間を自分にとって親しみを感じる空間か、感じない空間かという1つの観点から評価していること、『視線感』は大学生特有にみられる因子であり、来街者としての大学生は、画像から空間情報を認識して判断しているが、中学生は、空間情報だけでは他者の視線を意識できないこと、一方、居住者は、自分が住んでいる住宅地では、住まいの内からの視線を安心・安全の意識と結びつけて捉えていることを明らかにし、居住者、大学生、中学生ともに犯罪発生の多い地区は『親近感』の低い地区であり、親近感のある空間形成が防犯の面から重要であることを示した。2.敷地が街路に対して閉鎖的なまちは、まち全体として閉鎖的な傾向にあること、居住者は住まいを閉鎖的にして、防犯上安心であると評価する傾向がみられること、マント空間が閉鎖的になるほど犯罪発生は増加する傾向があることを明らかにし、程よく開かれたまち、即ち街路側、隣地側の閉鎖度が低く街路に対して居間の窓が面しているような住まいによって構成されるまちは犯罪者に狙われにくいことを示した。3.5つの住まいの工夫、即ち、(1)住まいと街路間の見通しを確保すること、(2)居間・食事室などの団簗の部屋と街路間で双方の気配を感じられるようにすること、(3)隣地間の見通しを確保すること、(4)住まいの駐車場を街路に対して閉鎖的にしないこと、(5)前庭の意匠を工夫して自分の敷地であることを明確にすること、はいずれも重要で取り入れてもよいと居住者に評価されたこと、街路に対する閉鎖度は30%のものが最も多く支持され、住まいのプライバシーおよび街路への開放性をそれぞれある程度確保し、しかも居住者に受け入れられる閉鎖度は30%程度であるといえること等を明らかにし、防犯環境設計の原則に加え、美しい町にすること、またその状態を維持することが重要であることを指摘した。