著者
ミケェエヴ アレクサンダー
出版者
沖縄科学技術大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

アリ・ハチを含む膜翅目昆虫には単一の相補的性決定遺伝子座CSDが存在すると考えられている。ミツバチでは性決定カスケードの最上流に存在するCSDが特定されており、ヘテロ型なら雌、ヘミ・ホモ型なら雄になることが分かっている。 本研究では、ウメマツアリを用いて近親交配系を確立し、次世代に生じる二倍体の雄と雌を用いてQTL解析を行い、CSDの存在する領域を調べた。結果、2つの独立な染色体上にCSDの存在が示され、アリ類で初めて相補的性決定遺伝子座の複数化が生じている可能性が示唆された。CSDの複数化は近親交配で生じる不妊個体の出現頻度を従来の半分に抑える長所があり、他の種でも進化している可能性がある。
著者
Dani Keshav
出版者
沖縄科学技術大学院大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2022-06-30

Creating new sources of light with non-standard wavelengths can provide powerful tools for science and technology. The XUV region of the electromagnetic spectrum creates new opportunities in photoemission spectroscopy like the powerful technique of Angle Resolved Photoemission Spectroscopy, and industrial fields like semiconductor fabrication. We propose to build a novel table-top source of XUV radiation that will provide significantly higher flux densities, to further push the boundaries of ARPES techniques and to study the newly emerging two-dimensional semiconductor heterostructures.
著者
濱田 麻友子 BOSCH C. G. Thomas
出版者
沖縄科学技術大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究ではクロレラを体内に共生させているグリーンヒドラをモデルとして、動物―藻類共生システムにおける相互作用の実態とその共生ゲノム進化を明らかにした。共生クロレラが光合成によって糖を分泌すると、ヒドラでは窒素代謝やリン酸輸送に関わる遺伝子が発現上昇することから、ヒドラ―クロレラ間の協調的な相互作用によって、栄養供給が遺伝子レベルで調節されていることが示唆された。また、共生クロレラのゲノム解読を行ったところ、硝酸同化遺伝子群の一部とそのクラスター構造がゲノムから失われていた。このことから、共生クロレラは窒素源をヒドラに依存した結果、ゲノムからは硝酸同化システムが失われたと考えられる。
著者
岡本 美里
出版者
沖縄科学技術大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

中南米を原産地とし、現在世界中に分布を拡大しているコカミアリWasmannia auropunctataは特殊な繁殖様式が発見されており、雌(新女王)と雄が、それぞれ母親と父親のゲノムのみを受け継いで生産される。本種の女王は未交尾では産卵をせず、自身のゲノムのみを受け継いだ雌卵であっても生産しない。本研究では、幼若ホルモン類似体のメトプレンを処女女王に経皮投与し、強制的に未受精卵生産を促した。その結果、産卵開始後まもなく、コロニー内のワーカーによる処女女王への攻撃が観察された。実験では様々な条件下で処女女王にメトプレンを投与し、ワーカーが産卵を開始した処女女王だけを特異的に攻撃することを明らかにした。本種のワーカーは両親のゲノムを受け継いで有性的に生産される。2011年から今年にかけてワーカーの遺伝子発現量を解析した結果によると、父系遺伝子の方が母系遺伝子よりも強く発現していることが明らかになった。このことから、産卵を開始した処女女王に対するワーカーの攻撃性は、父系・母系遺伝子の間にみられる発現量の偏りに起因しているのではないかと考えられる。今後は、ワーカーの遺伝子発現を強制的に変化させ、産卵を行う処女女王に対する攻撃性の変化の有無を確かめる。これらの結果は、雄遺伝子による利己性が、ワーカー個体の行動に影響を与えることを示唆しており、社会性昆虫の行動に影響する血縁度以外の要因として、今後注目されると考えられる。また、本来は単為生殖でしか雌を生産しないと思われていたが、幼若ホルモン類自体により、遺伝的にはワーカーに発生する個体が女王として発生することを明らかにした。これらの結果は、カースト決定に影響する遺伝子の発現解析を行う上で、大きく役に立つと考えられる。今後は、実験的に誘導された個体のトランスクリプトーム解析を行い、コカミアリにおける、性・カースト決定に関わる遺伝子の探索を行う。
著者
中島 祐一 中村 雅子 酒井 一彦 御手洗 哲司
出版者
沖縄科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

南西諸島には400種以上ものサンゴが生息しており、種多様性豊かなサンゴ礁を形成しているが、近年の地球規模・地域規模の撹乱の影響でサンゴ礁の減衰が懸念されている。サンゴ個体群がどのように維持されているかを評価することは、個体群動態を予測する上で必要不可欠である。本研究では集団遺伝学・ゲノム学的手法を駆使してサンゴ個体群の遺伝解析を行った。大隅諸島、琉球列島、大東諸島、小笠原諸島のアザミサンゴ属で一塩基多型(SNPs)解析を行った結果、琉球列島内では個体群間のコネクティビティが高いこと、小笠原諸島は他の解析地域間とのコネクティビティが低く長期にわたるタイムスケールでも移住がほとんどないことが示唆された。このことは、地理的距離が遺伝的なコネクティビティを維持することに重要であること、飛び石状の生息地がない場合には幼生分散や分布拡大が制限されることを示す。また、前年度までに開発したマイクロサテライトマーカーのうち9遺伝子座を用いて、屋外水槽内のハナヤサイサンゴ属の親子関係を解析した。その結果、親候補となるハナヤサイサンゴ種を複数飼育していたものの、幼サンゴ25群体は1種類のハナヤサイサンゴ種に由来し、さらに無性生殖に由来するクローンであることが判明した。ハナヤサイサンゴのクローンは物理的な破片分散だけでなく、他の地域でも報告されている無性的なプラヌラ幼生の放出でも起こりうる。一方、人工的な飼育環境によるストレスでポリプの抜け出しが起こった可能性も考えられる。さらに、同じ属でも種類によって無性生殖のプロセスに大きな違いがある可能性も示唆された。
著者
將口 栄一 ムンパッディー スタダ
出版者
沖縄科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

共生性渦鞭毛藻の褐虫藻Symbiodinium minutum (クレードB1)のプラスチドゲノムとミトコンドリアゲノムの全配列を決定し、その解析結果を論文として報告した (Mungpakdee et al., 2014; Shoguchi et al., 2015)。プラスチドゲノムは、14個のミニサークルDNA(1.8-3.3 kbp)からなり、各々のミニサークルに一つの遺伝子がコードされ、それらの全てがRNA編集を受けることを明らかにした。ミトコンドリアゲノム解析では、褐虫藻とアピコンプレクサ類マラリア原虫との間で多くのノンコーディングRNAsが保存されていることを明らかにした。
著者
杉田 征彦
出版者
沖縄科学技術大学院大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

エボラウイルスゲノムの転写・複製制御機構の分子基盤を解明する目的で、クライオ電子顕微鏡を用いたエボラウイルスNP-RNA複合体 (NP helix) の構造解析を行った。NP helixのクライオ電子顕微鏡画像を大量撮影し、コンピュータークラスタを用いて画像解析した結果、近原子分解能で詳細な三次元構造モデルを構築した。NP helix上では、隣合うNPが密に結合していた。また、C末端のαヘリックスはジッパーのように特徴的に並ぶ構造を有することが判った。これらの構造は、NP helixの形態形成およびウイルス感染環における構造変化のメカニズムを説明するための重要な知見となると考えられる。
著者
コンスタンチノフ デニス Bunkov Yu. P.
出版者
沖縄科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

強いマイクロ波による励起下では、反強磁性であるMnCo3サンプル内のアンサンブル核スピンの核磁気共鳴は非線形であることを観測した。この実験結果の信号は、核スピンがマイクロ波の励起によって、核スピンの温度が上昇するというような従来のモデルでは説明することが出来ない。実験結果と理論を比べてみると、強いマイクロ波による励起下では、核スピンの磁気モーメントの角度は大きく偏向されていることがわかる(磁気モーメントの強度は変化しない)。この事実はコヒーレントに一様に歳差運動をする核スピンによる核マグノンによるボーズ・アインシュタイン凝縮と同一視することが出来る。