著者
尾藤 誠司 鈴鴨 よしみ 福原 俊一
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:13456903)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.423-428, 2005-09-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
10

平成14年にわれわれが作成した入院患者用患者満足度評価尺度であるHPSQ-25は, 信頼性・妥当性に優れた評価尺度であったが, 6つの下位尺度に関する因子構造分析の結果, 因子をよりシンプルなものに変更する必要性があることが示唆されていた.今回, HPSQ-25の再構築と, より簡便な尺度への質問項目削減を試みた. 関東地区の3医療施設における入院患者386名に対し再度HPSQ-25による患者満足度評価を行い, その後, 一定のルールを用いて項目の削減を行った.その結果, 前年度で問題とされていた4つの因子はすべて “スタッフと患者の問のコミュニケーション” という1つの概念に収束し, 4つの因子における合計17の質問項目は6つの質問項目にまで収束させることが可能であった.その結果, 新たに再構築された入院患者用患者満足度評価尺度は, 13項目3下位尺度のより簡便なものとなった. 新たな尺度の信頼性・妥当性の検証も行い, 満足すべき結果を得ることができた.
著者
渡辺 明良
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:13456903)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.478-481, 2003-02-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
5

クリティカルパスの導入目的には、医療資源の最適な利用によるコスト管理という側面があることは、当初より指摘されてきたところである。このコスト管理にあたり、クリティカルパスに示された活動をコスト情報として測定することが必要になるが、その手法は、まだ十分に開発されているとは言い難い。そこで、クリティカルパスがコスト管理に利用されている事例を通して検討した結果、疾病別の標準原価計算としてのクリティカルパスの利用が想定されたことから、この手法についての考え方を整理した。また、この原価計算を実施するためには、電子カルテ情報や物流システムなど、情報技術を活用したデータの抽出が今後の課題として認識される。この原価計算を通じて、コスト管理を中心にした業務改善のアプローチが期待されるところである。
著者
池田 俊也 小林 慎
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.521-525, 2008-03-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
15

60歳男性の高コレステロール血症患者 (HL患者) の予後に関するマルコフモデルを構築し、一般的なHL患者と重症HL患者の2種類の患者に対する複数のHMG-CoA還元酵素阻害剤 (スタチン) 治療の費用対効果を評価した。一般的なHL患者に対するスタチンは、ロスバスタチン2.5mg/日、アトルバスタチン10mg/日、ピタバスタチン2mg/日、プラバスタチン10mg/日を分析対象とした。重症HL患者に対しては、ロスバスタチン5mg/日、アトルバスタチン20mg/日、ピタバスタチン4mg/日を分析対象とした。分析は、支払い者の立場で実施し、医療費と質調整生存年を推計した。一般的なHL患者を対象とした場合の質調整生存年は、アトルバスタチンが最も大きかったが、ロスバスタチンに対するアトルバスタチンの増分費用対効果比は11億円と非常に高額であった。重症HL患者を対象とした場合は、ロスバスタチンは他の2つの薬剤よりも費用が小さく、かっ質調整生存年が大きかった。一般的なHL患者及び重症HL患者ともに、費用対効果の観点からは、ロスバスタチンが最も好ましい薬物療法であると評価された。
著者
君野 孝二
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.488-494, 2009-12-01 (Released:2014-09-05)
参考文献数
3

DPC対象病院の拡大により多くの医療機関より莫大なデータが集計・公開されるようになった。その結果、様々な情報の分析が行われ医療機関の間での比較が可能となり、診療の透明性・標準化が進む方向へと展開している。DPCが出来高で行われる診療と異なる点の一つは入院目的が明確であることがあげられる。クリティカルパスも具体的な入院目的に対して作成・運用され、標準化・効率化のために見直しが行われることが要求される。クリティカルパス見直しのツールとしてDPCベンチマーク分析は有用である。
著者
鈴村 友宏
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.589-592, 2010
被引用文献数
2

当院では、2003年よりオーダリングシステムを導入し、採血スピッツは採血管準備システムにより管理されてきた。時間内の検査オーダに関してはシステム的に管理されていたが、時間外については対策が不十分であった。オーダ変更時の伝達不足による検査漏れや余剰検査の実施などのインシデント・アクシデントが月に 2 件程度発生しており、年に 1 件程度、重大なアクシデントにつながりかねない患者の取り違い事例も発生していた。<br> この問題を解決するにあたりセーフティマネジメントチーム(safety management team:以下、 SMT と略) および、 その下部組織である SMT ワーキングを中心に採血認証システムの導入計画を進めた。SMT ワーキングは看護師、コメディカル、事務から成り、医療安全に関わる組織横断的で実践的な活動を行っている。<br> 本システムの導入計画においても、看護師、コメディカル、事務からも多角的な意見を出し合いながら、 SHELL 分析による現状の問題点の抽出を行い、 システム化における目標を明確化した上で、医療安全と業務の効率化について配慮したシステムの構築を行った。<br> 結果として、システム導入後の採血に関するインシデント・アクシデントは、導入前後を各 5 ヶ月間で比較すると12件から 2 件に減少した。又、採血業務における一連の作業行程の効率化により、1 日あたり約190名の採血対象患者の準備作業が、約25名の準備作業となり業務量が約86%削減された。このことからもシステム導入によって最大限の効果が得られたと考える。