著者
土岐 利彦 堀口 正之 和田 裕一 矢嶋 聰 後藤 牧子 金野 多江子 伊藤 圭子 東岩井 久
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.1000-1004, 1987-11-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
18

頸部細胞診でclass IIIを呈した患者で, クラミジア感染症のスクリーニングを行いさらに, クラミジア陽性例の細胞像を検討し, 以下の結果を得た.1.380例中18例 (4.7%) が, EIA法でクラミジア陽性であった.2. 陽性例では, 細胞診上, central target formationや, 星雲状封入体など, クラミジア感染に特徴的とされていいる所見は全例で認められず, 細胞診のみでクラミジア感染を推定するのは困難と思われた.3. 陽性例の56%に, 細胞診または組織診上, human papillomavirus (HPV) 感染の徴候が認められた.4. 治療例13例の細胞異型は, 6例で消失したが, 7例では存続していた. 消失例6例の細胞異型は, 主として軽い化生異型であった. これに対して, 異型持続例7例中, 6例にHPV感染の徴候が存在し, このHPV感染による細胞異型は, 治療に関係なく持続していた.以上より, クラミジア感染時にみられる細胞異型は, 同じSTDとしてHPV感染を合併する場合に, 特に問題になってくると考えられる.
著者
真野 佳典 豊泉 長 藤井 和之 菊池 義公 永田 一郎 堂本 英治 寺畑 信太郎 玉井 誠一
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.239-243, 1999-05-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

子宮頸部扁平上皮癌のまれな一亜型である子宮頸部乳頭状扁平上皮癌の1例を経験したので, その細胞学的特徴を, ヒト乳頭腫ウイルス (HPV) の検索結果を含め報告する. 症例は36歳女性. 肉眼的には, 子宮頸部からカリフラワー状に外向性発育を示す, 易出血性な腫瘍がみられ, 強く悪性が疑われた. しかしながら細胞学的には, 高度異型成から上皮内癌程度の細胞所見で, 浸潤癌を示唆する細胞所見は得られなかった.摘出標本による組織学的検討では, 狭細な血管線維性間質を伴い, 乳頭状に外向性発育を示すとともに, 一部に間質浸潤がみられ, 乳頭状扁平上皮癌 (FIGO Stage Ib 2) と診断された. またPCR法によりHPVの検索を行ったところHPV 16型 (High-risk type) が検出された. 同症例では細胞診および生検で, 浸潤癌の術前診断が困難な例が多く, 上皮内癌とunderdiagnosisされる可能性が想定される. しかしながら肉眼像およびコルポスコピー所見で, 子宮頸部乳頭状扁平上皮癌を鑑別にあげることができれば, 細胞診における豊富な腫瘍細胞量, 細胞集塊, 個々の細胞異型などの所見と生検を併用することで, 術前に確診に至ることも可能と思われる.
著者
隅越 かつ子 上坊 敏子 新井 努 川口 美和 渡辺 純 蔵本 博行
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.521-526, 2000-11-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

背景: 子宮頸部乳頭状扁平上皮癌は, 組織学的にまれな乳頭状構造を示す扁平上皮癌であり, 生検で浸潤病変を診断することは困難なことが多いとされている.症例: 61歳, 2経妊1経産.肉眼的に子宮頸部に乳頭状に隆起した腫瘍を認め, 浸潤癌を疑う所見であった.細胞所見としては (1) 著明な腫瘍壊死性背景の中に孤立性または大小の集塊を形成して多数の異型細胞が出現していた.(2) 異型細胞は比較的小型であるが多形性に富み核大小不同もみられた.(3) 核は円形-長円形でクロマチンは増量し細顆粒状であった.(4) 核小体は余り目立たず, 小型なものが1, 2個みられる程度であった.(5) 細胞質は厚く, ライトグリーン好染性であった.(6) 一部のクラスターでは乳頭状構造が目立ち, 血管を含む間質の介在を認めた.生検組織所見では浸潤所見は明らかではなかったが, 手術標本では, 腫瘍組織は著明な乳頭状増殖を示し, 血管の増生を伴う間質組織を覆うように腫瘍細胞が認められた.また深部では非角化型扁平上皮癌が間質へ浸潤していた.結論: 細胞診では明らかな浸潤癌の所見であったが組織診では浸潤が確認できなかったことから, 本疾患における浸潤の診断においては細胞所見が有用である
著者
黒島 義克 大竹 賢太郎 楾 清美 松崎 晶子 齊尾 征直 吉見 直己
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.55-59, 2014 (Released:2014-03-13)
参考文献数
13
被引用文献数
2

目的 : ラオス国は開発途上国で, いまだ女性の死亡原因の一位は子宮頸がんである. しかし, その予防のための検診のみならず, 細胞診に関しても十分に実施されていない. 今回, 健常女性における子宮頸部細胞診スクリーニングを実施・検討した.方法 : ラオス国首都ビエンチャン市内の 3 つの地区に居住する 22~65 歳の健常人ボランティア女性の総数 1000 名に対して自己採取型の加藤式自己搾過法器具を使用して子宮頸がん細胞診検査を実施した.成績 : 細胞診判定はベセスダシステム 2001 に準拠した. NILM ; 893 例 (89.3%), ASC-US ; 33 例 (3.3%), LSIL ; 19 例 (1.9%), ASC-H ; 3 例 (0.3%), HSIL ; 1 例 (0.1%), SCC ; 1 例 (0.1%), 不適正標本に関しては 50 例 (0.5%) であった. また, HPV 感染を示唆する koilocytosis を呈する症例は 24 例 (2.4%) であった.結論 : LSIL 以上の要精検率に関しては, 日本と比較すると 2 倍を示し明らかに高い印象であった. koilocytosis を呈する症例数も本邦と比べて多い傾向であった.
著者
大竹 賢太郎 齊尾 征直 黒島 義克 安里 良子 吉見 直己
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.271-272, 2013 (Released:2013-08-29)
参考文献数
5

We examined how to improve the cell recovery for cell block preparations using cervical liquid-based cytology (LBC) samples. Forty cases of both NILM and LSIL, respectively, were split into three groups and three different cell block preparation methods were applied such as nylon mesh, OCT compound and cotton. The total cell number (isolated cells and cells in cell clusters) and the incidence of cases with large clusters (≥50 cells) in specimens were counted. We found that the cotton method, by which clusters were significantly recovered, was better than the others. The cotton method is a useful tool for cell recovery in block preparations from LBC samples.
著者
広川 満良
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.431-436, 1997-07-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
23
被引用文献数
1

甲状腺乳頭癌には診断的価値のある多くの細胞学的特徴があるが, それらの判定基準や診断的価値に対する評価は個人によりさまざまで必ずしも一致していない. 本稿では甲状腺乳頭癌の診断に役立つ細胞所見の判定基準や診断的価値がまとめられており, 診断の際にはそれらを十分に理解しておくことが大切である.
著者
鍵弥 朋子 中村 美砂 森 一郎 谷口 恵美子 西上 圭子 尾崎 敬 覚道 健一
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.183-188, 2008 (Released:2008-10-30)
参考文献数
7

目的: 細胞診用に採取された尿を用いての遺伝子解析が可能な保存温度条件を明らかにするため, 尿の保存温度と時間経過による尿中細胞 DNA, RNA の変性・減少と細胞形態の変化を観察し検討した.方法: 自然尿を採取時から 15 日後まで 3 種の温度条件 (−20℃, 4℃, 25℃) で保存し, DNA, RNA を抽出した. PCR 法で p53 を検出可能であったものを DNA が保存されたと判定した. RT-PCR 法でβactin を検出可能であったものを RNA が保存されたと判定した. DNA, RNA 検出の再現性の確認のため, 9 例の尿を用いて検討した. 細胞形態は 2 回遠沈法で固定塗抹, パパニコロウ染色を行い観察. 顕微鏡下で細胞数を計測した.成績: 採尿直後に処理すれば DNA, RNA とも PCR 可能な状態で抽出できた. 尿を−20℃, 4℃で保存すれば DNA は 15 日後, RNA は 11 日後に抽出したものから目的配列を PCR 法で増幅可能であった. 抽出効率は男女間で差はみられなかった. 形態的検討では, 保存期間が長くなるにつれ塗抹細胞量が減少した. 細胞形態保存は 4℃保存が最も適していた.結論: 尿の至適保存温度は, 細胞形態保存は 4℃, 核酸保存は−20℃, 4℃であり, DNA は 15 日後, RNA は 11 日後の尿から抽出可能であった.