- 著者
-
吉田 豊
- 出版者
- 神戸市外国語大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1997
本研究では,漢字で音写されたソグド人の人名について研究した。ソグド人はイラン系の言語を話す民族で,ソグディアナを本土とする。これはほぼ現在のウズベキスタン・タジキスタンの一部に当たる。中国の唐王朝以前の時代,彼らはシルクロードの交易をほぼ独占する商業民族として活躍し,遠く中国にも多くのソグド人が来ていた。中国に居住すると彼らは名前を漢字で表記したが,その場合には,ソグド語の名前を漢字で音写して使う者と,中国風の名前を持つ者がいた。おおむね二世・三世以降は中国風の名前を名乗っている。ちなみに彼らソグド人は,出身地のオアシス国家ごとに特別の姓を持つので,文献の中から彼らの名前を見つけることは容易である。たとえば,サマルカンド出身者は康,ブハラ出身者は安という姓を持った。本研究では,これら漢字で音写されたソグド語の人名を可能な限り収集した。そして対応するソグド語に復元する試みをした。そのためにはソグド語のテキストに現れたソグド人の人名を参考にしなければならないので,発表されているテキストからソグド人名を網羅的に種集した。本報告の主要な部分はこれら2種類の人名のリストである(4・5章)。漢字で音写された人名が現れる漢文試料の簡単な解説は3章にある。別に参考のために人名以外の漢字で音写されたソグド語の要素も可能な限り集めた。(2章)。1章ではこの種の研究の歴史を概観した。リストに続く2つの章では,音写された名前を原語に復元するさいに発生する問題(6章)と,人名研究から究明される事実を概観した(7章)。