著者
第3調査研究グループ
出版者
科学技術・学術政策研究所
巻号頁・発行日
2013-11 (Released:2014-02-13)

当研究所では、文部科学省の科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」推進事業の下で、マクロ経済モデルにより研究開発投資の経済的効果を分析し、その分析結果を政策立案へ応用していくための調査研究を実施している。 その調査研究の一環として、2013 年3 月に、EU やOECD において研究開発投資の経済効果分析及びその政策への適用等に携わる実務者を招聘し、国際ワークショップ「研究開発投資の経済効果測定モデルの政策適用に向けて」及び国際シンポジウム「研究開発投資の経済的効果の評価」を開催し、研究 開発投資の経済的効果の測定手法や政策への活用手法に対する理解を深める機会とした。 As part of the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology (MEXT) of “Science for RE-designing Science, Technology and Innovation Policy(SciREX)” project, NISTEP has been conducting macroeconomic analysis of the impact of research and development (R&D) investments to support related policymaking. On March 2013, NISTEP was holding international symposium and workshop in the presences of experts conducting similar/related R&D economic impact analyses to support policy formulation in the EU and OECD in order to provide the participants with deeper understanding of case examples for R&D economic impact analysis and their essential contribution to effective policymaking.
著者
古川 貴雄 森 薫 有野 和真 林 和弘 白川 展之 野村 稔
出版者
科学技術・学術政策研究所
巻号頁・発行日
2014-11 (Released:2015-02-05)

本調査研究では、計算機科学の中でも応用研究の傾向が顕著なウェブ関連研究を例に、当該領域における萌芽的研究の発展過程を分析する手法を提案し、その有用性について検討する。2002年から2011年に開催されたWorld-Wide Webカンファレンスのセッションを取り上げ、プロシーディングペーパーのアブストラクトを用いたテキスト分析により、セッション間を接続するネットワークを生成した。その結果、萌芽的な研究と考えられるソーシャルネットワークやマネタイゼーション研究の発展する過程が示された。さらに、カンファレンスセッションの時系列ネットワーク分析により次の知見が得られた。(1) 過去のセッションとの接続が多い収束セッションは、過去の研究トピックを統合したと考えられる。(2) その後のセッションとの接続が多い分岐セッションは、他の研究に影響を与えたセッションと考えられる。テキスト分析の安定性などの課題は残るが、提案手法は萌芽的研究の発展過程の分析に有用と考えられる。
著者
古澤 陽子 枝村 一磨 隅藏 康一
出版者
科学技術・学術政策研究所
巻号頁・発行日
2015-04 (Released:2015-05-12)

近年、規制は企業や産業ひいては経済全体のイノベーション活動に影響を与える重要な要素として認識されている。本研究では、規制が企業の研究開発活動に与える影響を定量的に捕捉することを目的として、日本の製造業に属する企業を対象に、JIPデータベースの規制指標と民研調査の個票データを用いて定量的に分析した。分析の結果、製造業全体では、研究開発のインプットの面で規制緩和は研究開発活動の外部化を促す傾向があるが、全体としては研究開発投資を抑制する(規模を縮小する)方向に作用する傾向が確認された。これは裏返せば、規制水準の強化が研究開発投資を促進する傾向を示すものである。一方の研究開発活動のアウトプットである国内特許出願や新製品投入に対しては、規制緩和はプラスに作用し、国内特許出願を増加させ、新製品の投入も促進する傾向が示された。しかし、製品特性および企業規模を考慮するため、製造業を基礎素材型産業と加工組立型産業に区分し、さらに大企業と中小企業を区分すると、規制緩和が研究開発活動に与える影響は正負両方あり、ひとくちに製造業と言っても、製品特性や企業規模により異なることが確認された。 The regulatory conditions have been identified as important factors influencing the innovation activities of companies, industries and whole economies.The paper aims to assess the impacts of regulation on innovation, taking into account the industry characteristics and the size of the firm. In order to conduct such a quantitative analysis of the impact, we differentiate between the key material industry and processing and assembly industry of the manufacturing sector, and furthermore we consider large enterprises and small and medium enterprises separately. Since our quantitative analysis covers Japanese manufacturing sector, we use individual data of “Survey on Research Activities of Private Corporations” and regulatory index of “Japan Industrial Productivity Database". In manufacturing in general, the empirical results overall confirm the two effects of regulations. First, the easing of regulations may reduce the incentives for companies to invest in R&D whereas it may promotes outsourcing of R&D and encourages open innovation. Second, a weak regulation may favours a rapid and wide diffusion of inventions, which may leads to increase in the number of patent applications and to introduce new products and services in the market.However, taking into account the industry characteristics and the size of the firm, the empirical results show that the regulation may have both positive and negative impact on R&D and innovation. Different types of the industry and firm size generate various impacts of regulation and even a single type of regulation can influence innovation in various ways depending on how the regulation is implemented.
著者
小林 淑恵 渡辺 その子
出版者
科学技術・学術政策研究所
巻号頁・発行日
2014-05 (Released:2014-06-30)

研究機関に在籍している「狭義」のポストドクターの場合、将来のキャリアパスが不透明であり、任期を繰り返しつつ不安定な雇用のままで高齢化することが問題視されている。この現状と要因について明らかにするために、本研究では文部科学省 科学技術・学術政策局 基盤政策課で実施した『ポストドクター等の雇用・進路に関する調査-大学・公的研究機関への全数調査(2009年度実績)』の個票データを用い、正規職(常勤、任期なし)への移行に関する分析を行った。ポストドクターは30-34 歳で最も多く、博士課程修了後の年数は平均4~5年である。正規職への移行率は博士修了後5~7年程度でもっとも高く、ポストドクターというトレーニング期間を経て、任期の変わり目で移行するケースが多いことが明らかになった。しかし平均移行率は6.3%と、一般大卒者の非正規職から正規職への移行率よりも著しく低い状況にある。特に女性、理学・医学系、競争的資金で雇用されている者の移行率が有意に低いことから、これらの状況を踏まえた上で、任期の変わり目である5年目辺りまでに、安定した職へ移行できるような支援が必要であることを指摘している。また今後の課題として、本データでは捕捉されていない有期の特任助教から正規職への移行についても検討する必要がある。