- 著者
-
種村 正美
- 出版者
- 統計数理研究所
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2005
空間のある領域の中に多数の点(粒子と呼ぶ)が配置されているとき、粒子配置の統計的性質を特徴付けて配置データがもつ情報を適切に引き出し、当該分野で有用となる結論を導く手段を提供するのが「空間統計学」の重要な役割である。一方、与えられた配置図データ(粒子座標データ)にもとづいて観測領域を分割して得られるボロノイ・セルやデローネイ・セルの形状の統計分布から、空間データの性質を導き出す手法が「ボロノイ・デローネイ解析」である。しかし、従来は「ボロノイ・デローネイ解析」は「空間統計学」のいわば補助的手段にとどまっていた感がある。本研究計画はボロノイ・デローネイ解析を空間データに関する詳細な情報抽出の手段として、また多様な統計モデルの構築手段として利用することによって、空間統計学との融合を積極的に図ることを目標とした。ランダムな粒子配置の典型であるボアソン点過程に対するボロノイ・セルの統計分布の研究においては、4次元,5次元におけるボアソン・ボロノイ・セルの種々の特徴量に関する統計分布を精度良く求め、多変量の空間統計学へのプロトタイプを提出することができた。また大規模な時空間データのボロノイ・デローネイ分割計算も行った。このデータは国内の余震活動記録であって、緯度・経度・発生時刻の3次元データとなっている。データ数(粒子数)は560,000程度であり、この規模のデータの3次元ポロノイ・デローネイ分割を行うため、統計数理研究所のスーパーコンピュータ・システムAItixと本研究計画で導入したUMIXワークステーションを併用した。今回の大規模計算のためにはデローネイ・セルのリスト作成のために効率の良い計算プログラムを開発した。さらに、全地球規模の余震活動データのボロノイ・デローネイ解析を準備した。後者の計算を実行するためには、球面上のボロノィ・デローネイ分割が必要となる。われわれは、すでにそのためのコンピュータ・プログラムを開発済みである。その他、生物組織におけるランゲルハンス細胞の配置データなどのボロノイ解析を空間配置の分析に用いた。