著者
大島 誉章 田村 匡嗣 伊坂 亜友美 小川 幸春
出版者
美味技術学会
雑誌
美味技術学会誌 (ISSN:21867224)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.22-28, 2012-12-25 (Released:2018-10-15)
参考文献数
20

米飯の食味に影響を与える米粒含有成分・含有量の炊飯過程における変化を調査,検討した。供試材料にはチヨニシキ,日本晴,コシヒカリの3品種を用いた。炊飯過程において,米粒中の還元糖は予備加熱過程以降で増加したが,アミロース含有量に顕著な増減は確認されなかった。これに対して総タンパク質は加熱75℃時以降で顕著に減少したが,その減少傾向は品種によっても,また分子量によっても異なった。これらの変化は,炊飯中での酵素反応による分解や熱変性などが原因となって生じると考えられた。
著者
関 洋子 井上 なつみ 濱田(佐藤) 奈保子
出版者
美味技術学会
雑誌
美味技術学会誌 (ISSN:21867224)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.30-36, 2018-01-31 (Released:2018-09-18)
参考文献数
28

サバ類は塩を利用して保存されることが多く,塩はうま味成分を保持する効果がある。一方,にがりも塩と同じく塩分を多く含む液体であるため,うま味成分の保持が期待される。魚肉のうま味成分はイノシン酸で,うま味を保持するにはイノシン酸分解酵素の活性を抑制する必要がある。本研究ではマサバを用いて,イノシン酸分解酵素活性におよぼす塩,にがりの影響について調査した。塩の主成分であるNaCl 5 %添加では無添加の80 %以上の酵素活性を阻害し,にがりの主成分であるMgCl2 2 %添加では約70 %酵素活性を阻害した。以上のことから,にがりは魚肉におけるうま味成分の保持効果があることが明らかになった。
著者
片山 直美 蜂谷 奈都美
出版者
美味技術学会
雑誌
美味技術研究会誌 (ISSN:13481282)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.11, pp.7-13, 2008

梅の原産地は中国と考えられており, 長江 (揚子江) 沿岸の温暖な地域で, 野生原木として生息していたと推測されている。今から7000年前の新石器時代初期の遺跡の中で, すでに炭化した梅の核 (種) が見つかっており, すでにこの頃から中国では梅の実が食べられていたとされている。このような歴史深い梅干は日本の家庭に深く根づいた伝統食であり, 梅の実自体には多くのビタミンやミネラルは含んでいないが, 梅干しになると食欲を増進させるクエン酸やコハク酸, リンゴ酸, 酒石酸などの有機酸を多く含み, ミネラルも豊かぐある。中でもクエン酸はカルシウムの吸収を良くし疲れの元になるといわれる乳酸の過剰生産を抑え活力増進につながるので, 骨の老化や骨粗しょう病予防のカルシウム摂取にも役立つ。またクエン酸の持つ殺菌効果が腐敗防止に役立っており, 梅干を食べることによって唾液が分泌され, 人間の唾液の中にも食中毒菌を殺菌する効果もあるので, 2重の殺菌効果が期待される。老化の原因は活性酸素の一つである過酸化水素にあるが, 梅干しを食べた時, 見た時に出る唾液にはアミラーゼやカタラーゼなどの酵素が含まれているが, カタラーゼには, 過酸化水素を水と分子状酸素に分解して毒性を消す作用があるため, 老化防止に良いといわれている。疲労回復について, 梅はクエン酸の多く含まれている健康食品である。このクエン酸が乳酸の大量生産を抑制し, 炭酸ガスと水に分解して体外に排出する働きを行うことにより, 疲労が蓄積されにくくなるのである。昔から夏バテに梅が効くと言われるのは梅のクエン酸の働きによるものである。このような有用な梅干は取りすぎると塩分の摂りすぎにつながる危険がある。そこで本研究は市販されている80種類の梅干しについて, 梅の実をつぶし, 塩分計 (タニタ社製) を用いて, 梅一個当りの塩分を測定し, 比較検討した。さらに市販の梅のみ80種類を健康成人10名 (年齢20.43±0.97, 女性) にて官能評価した。評価項目は「味」「見た目」「香り」「色合い」「塩味」「甘味」「酸味」「舌触り」「付属物の味」「総合」の10項目であり, 各項目について10点満点で評価した。結果今回は「南高梅うす塩白」や「南高梅あっさり110g」が各項目において最も高い評価を得た。やはり現在は「塩分の摂りすぎ」に対しての認識が高まっていることが大きく影響していると考えられる。甘みの強い梅干し (蜂蜜など) と, 酸味の強い梅干などは評価に個人差が現れることがわかった。梅干は伝統食品であり, 今後も食卓には欠かせない食品であるが, 塩分には十分に気をつけて摂取する必要がある。薄味の梅干は腐りやすい欠点を補うために様々な防腐剤が混入している可能性があるため, 表示には十分に気をつけて購入する必要がある。今後も, おいしく食べて健康になるために適量の梅干しを摂取することを推奨する。
著者
片山 直美
出版者
美味技術学会
雑誌
美味技術研究会誌 (ISSN:13481282)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.11, pp.47-51, 2008-01-31 (Released:2010-06-28)
参考文献数
8

ギャバ (GABA: γ-アミノブチリル酸) は古くから哺乳類動物の脳や脊髄に多く含まれ手いることが知られており, 1950年には抽出もされ, 多くの研究がなされてきた。特に中枢神経における制御系の神経伝達物質であることがわかっている。生体内において主に, 脳内の血流を活発にし, 酸素供給量を増やし, 脳細胞の代謝を高めることがわかっているため, イライラや体調不良を防ぐ働きを持っことになる。ギャバは睡眠中の特に深い眠りのときに生成されるため, 睡眠不足の人ではギャバ不足になる可能性がある。睡眠障害や自律神経の失調, 鬱, 更年期障害や老年期の不眠といった症状の改善にも効果が期待できる。さらに血圧を下げる効果, これは腎臓の働きを活発にし, 利尿作用を促すことで血圧を下げるため, 高血圧の予防となる。またアルコール代謝を高めることも肝機能の働きを促す効果があるため期待できる。内臓の働きが活発になるため, 消費エネルギー量を高め, 血中のコレステロールや中性脂肪をコントロールして脂質代謝を促すこともわかってきた。今後糖尿病や肥満の予防に役立つ可能性がある。このように生体に有用であるギャバは, 日本茶や米類について一定の条件を決めて保存することで含量を増加させることができる。また, 大麦, カボチャ, 発酵食品 (チーズ, 味噌, 醤油など), 漬物 (しば漬け, すぐき, キムチ, ぬか漬け), ヨーグルト, 納豆, 粥, スピルリナなどの食品でのギャバ含量を増加させる様々な製造法の研究が進められている。そこで本研究はより多くのギャバを日常生活で取り入れる応用研究を行うために, ギャバを自然富化した米をもちいて, その食味について官能試験を行い, 日常的にギャバ添加米を用いることができるかどうかを検討することにした。無洗白米を基準に, ギャバを富化した無洗白米, ギャバを富化した無洗玄米, 無洗混合ギャバ米 (玄米1対白米2) において(味) (香り) (見た目)の官能試験を10点満点で行った結果, 白米 (8.2, 8.0, 8.3), 白米ギャバ (7.5, 8.7, 7.5), 玄米ギャバ (5.0, 3.5, 6.7), 混合ギャバ (6.8, 4.3, 6.3) となり, 白米ギャバの場合においては, ほぼ白米と同じ評価を得ることができた。今後日常的に取り巻く外的ストレス環境に打ち勝って, 精神的安定を保ち短時間であっても十分な睡眠と体の回復を行うために, ギャバを自然富化した米を日常生活に取り入れることは有用であると考える。