- 著者
-
片山 直美
- 出版者
- 美味技術学会
- 雑誌
- 美味技術研究会誌 (ISSN:13481282)
- 巻号頁・発行日
- vol.2008, no.11, pp.47-51, 2008-01-31 (Released:2010-06-28)
- 参考文献数
- 8
ギャバ (GABA: γ-アミノブチリル酸) は古くから哺乳類動物の脳や脊髄に多く含まれ手いることが知られており, 1950年には抽出もされ, 多くの研究がなされてきた。特に中枢神経における制御系の神経伝達物質であることがわかっている。生体内において主に, 脳内の血流を活発にし, 酸素供給量を増やし, 脳細胞の代謝を高めることがわかっているため, イライラや体調不良を防ぐ働きを持っことになる。ギャバは睡眠中の特に深い眠りのときに生成されるため, 睡眠不足の人ではギャバ不足になる可能性がある。睡眠障害や自律神経の失調, 鬱, 更年期障害や老年期の不眠といった症状の改善にも効果が期待できる。さらに血圧を下げる効果, これは腎臓の働きを活発にし, 利尿作用を促すことで血圧を下げるため, 高血圧の予防となる。またアルコール代謝を高めることも肝機能の働きを促す効果があるため期待できる。内臓の働きが活発になるため, 消費エネルギー量を高め, 血中のコレステロールや中性脂肪をコントロールして脂質代謝を促すこともわかってきた。今後糖尿病や肥満の予防に役立つ可能性がある。このように生体に有用であるギャバは, 日本茶や米類について一定の条件を決めて保存することで含量を増加させることができる。また, 大麦, カボチャ, 発酵食品 (チーズ, 味噌, 醤油など), 漬物 (しば漬け, すぐき, キムチ, ぬか漬け), ヨーグルト, 納豆, 粥, スピルリナなどの食品でのギャバ含量を増加させる様々な製造法の研究が進められている。そこで本研究はより多くのギャバを日常生活で取り入れる応用研究を行うために, ギャバを自然富化した米をもちいて, その食味について官能試験を行い, 日常的にギャバ添加米を用いることができるかどうかを検討することにした。無洗白米を基準に, ギャバを富化した無洗白米, ギャバを富化した無洗玄米, 無洗混合ギャバ米 (玄米1対白米2) において(味) (香り) (見た目)の官能試験を10点満点で行った結果, 白米 (8.2, 8.0, 8.3), 白米ギャバ (7.5, 8.7, 7.5), 玄米ギャバ (5.0, 3.5, 6.7), 混合ギャバ (6.8, 4.3, 6.3) となり, 白米ギャバの場合においては, ほぼ白米と同じ評価を得ることができた。今後日常的に取り巻く外的ストレス環境に打ち勝って, 精神的安定を保ち短時間であっても十分な睡眠と体の回復を行うために, ギャバを自然富化した米を日常生活に取り入れることは有用であると考える。