著者
関 洋子
出版者
美味技術学会
雑誌
美味技術学会誌 (ISSN:21867224)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.32-37, 2022-07-31 (Released:2023-08-25)
参考文献数
16

本研究ではハチミツを利用したスポンジケーキを製造するため,茶葉抽出液を利用してハチミツ中のα-アミラーゼを阻害し,通常の膨らみを持つスポンジケーキの焼成を検討した。α-アミラーゼは緑茶およびウーロン茶によって阻害され,これらの抽出液添加で膨らみが改善された。また,10名の被験者による官能試験において,各茶葉抽出液入りの原液ハチミツを使用したスポンジケーキは被験者の9割の人が受け入れられるという結果となった。
著者
中谷 美咲 関 洋子
出版者
ファンクショナルフード学会
雑誌
Functional Food Research (ISSN:24323357)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.FFR2020_p65-74, 2020-08-11 (Released:2020-09-10)
参考文献数
45

野菜や果物は長時間の保存が難しく,一般的には野菜はピクルスや漬物,果物はジャムに加工して保存されてきた.しかし,加工の際の酸処理や加熱によって,野菜・果物に含まれる酵素を不活性化してしまう,加熱により総ビタミンC 量が低下するという問題があった.そこで最近では果物や野菜を生のまま砂糖漬けにして発酵させることで,有用な物質の破損なしに加工・保存する方法がある.果物や野菜を砂糖漬けにすることで,数日で野菜や果物から出てきた水分で砂糖が溶け,シロップ漬けの状態となる.このシロップは酵素シロップと呼ばれ,発酵による有用成分の増加および機能性の向上,がん細胞増殖抑制作用が期待できる.そこで,本研究ではりんごを利用した酵素シロップに着目し,発酵によるがん細胞増殖抑制作用,抗酸化作用,α-グルコシダーゼ阻害作用を調査した.また,発酵に関与している微生物の同定を行った.りんごは青森県の早生ふじりんごを用い,16 分割にした後,1.1 倍の砂糖と共にガラスの容器で2 週間室温に保存し,発酵7 日目と14 日目のシロップを用いてマウス白血病細胞株P388 の細胞増殖への影響,抗酸化活性,α-グルコシダーゼ阻害活性を測定した.がん細胞増殖抑制作用を評価するため,細胞数を調整したマウス白血病細胞株P388 に発酵7 日目と14 日目の酵素シロップまたは滅菌水を添加し,37°C で7 日間5.0% CO2 環境で培養し,p388 の細胞数を比較した.酵素シロップの抗酸化作用はDPPH ラジカル消去活性を,α-グルコシダーゼ阻害作用はα-グルコシ ターゼ阻害活性を測定した.発酵に関与している微生物を同定するため,酵素シロップを適宜希釈し標準寒天培地に塗抹し,35℃で2 日間培養した.2 日後,出現したコロニーの微生物同定を行った.その結果,がん細胞増殖抑制作用の評価では,発酵7 日目および14 日目の酵素シロップでp388 細胞の増殖抑制効果が確認された.抗酸化作用の評価では,酵素シロップの抗酸化活性と比較してリンゴ自体の抗酸化活性で高い値が確認された.α-グルコシダーゼ阻害作用の評価では,発酵7 日目および14 日目の酵素シロップで高いα-グルコシダーゼ阻害活性が確認された.また,発酵に関与した微生物を同定した結果,相同値97%でMetschnikowia pulcherrima であった.以上のことからリンゴを利用した酵素シロップはがん細胞増殖抑制作用,α-グルコシダーゼ阻害作用が確認され,発酵に関与している微生物はMetschnikowia pulcherrimaであることがわかった.
著者
芳賀 麻衣子 西村 ひとみ 関 洋子 新野 靖
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.16, pp.133, 2004

【まえがき】 にがりは、最近の健康ブームで販売量を伸ばしており、豆腐製造のみならず、炊飯、調理にも用いられ、希釈されたものは飲料として販売されている。にがりは製塩において塩を採り切った残りの液であり、MgやNaなどの塩化物を主とした高塩分濃度溶液であるが、その品質規格はなく、成分表示がされていないものも多く、品質の実態は明らかでない。そこで、市販のにがり商品を収集して品質の実態調査を行った。<br>【試験方法】 にがり13点について、主成分(Cl,SO<sub>4</sub>,Ca,Mg,K)を「塩試験方法」((財)塩事業センター)により定量した。微量成分はPO<sub>4</sub>,As,Co,Cd,Cu,Hg,Mn,Mo,Ni,Pb,Ti,V,Znを対象とし、PO<sub>4</sub>はモリブデンブルー法、As,Hgは水素化物/ICP-AES法、その他の金属元素はキレートディスク濃縮/ICP-AES法で定量した。<br>【結果】にがりには、海水をそのまま濃縮したにがりと海水をイオン交換膜で濃縮したにがりがあるが、両者の間にはCa濃度に大きな差があり、後者のにがり商品に高濃度で含まれていた。各商品の全塩分濃度は26.7%から32.3%と大きな差はないが、その中のMg濃度は1.0%から5.0%、NaCl濃度は2.4%から21.9%と商品によって濃縮度がまちまちであり、同量使用した場合、調理品の仕上がりや味覚などへの影響が考えられた。微量成分では、Zn,Cu,Ni,Fe,およびMnを多く含む商品もあったが、海水からにがりへの濃縮倍率から、海水溶存成分以外が混入していると考えられた。その他、Moが海水の濃縮度に比例して含まれていた。また、海洋深層水利用商品について、その他の商品との品質差は見られなかった。
著者
関 洋子 井上 なつみ 濱田(佐藤) 奈保子
出版者
美味技術学会
雑誌
美味技術学会誌 (ISSN:21867224)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.30-36, 2018-01-31 (Released:2018-09-18)
参考文献数
28

サバ類は塩を利用して保存されることが多く,塩はうま味成分を保持する効果がある。一方,にがりも塩と同じく塩分を多く含む液体であるため,うま味成分の保持が期待される。魚肉のうま味成分はイノシン酸で,うま味を保持するにはイノシン酸分解酵素の活性を抑制する必要がある。本研究ではマサバを用いて,イノシン酸分解酵素活性におよぼす塩,にがりの影響について調査した。塩の主成分であるNaCl 5 %添加では無添加の80 %以上の酵素活性を阻害し,にがりの主成分であるMgCl2 2 %添加では約70 %酵素活性を阻害した。以上のことから,にがりは魚肉におけるうま味成分の保持効果があることが明らかになった。