平成29年度(2017年)の主要な研究成果としては、研究代表者である真田は、2017年9月に京都で開催された世界フランス語教授連盟(FIPF)アジア太平洋部会(CAP)と日本フランス語教育学会(SJDF)共同開催による国際学会において "Transformations d'esthetiques: echanges interculturels entre oeuvres litteraires japonaises et francophones" と題された研究発表を行った。その中で、20世紀初頭の日本にフランス近代詩を初めて本格的に翻訳し、日本語に大きな変容をもたらした堀口大學の訳業と、20世紀ケベックを代表する詩人の一人であるジャック・ブロー(Jacques Brault)の作品が日本の芭蕉や西行などの詩歌に大きな影響を受け、そのフランス語表現文学の芸術性に大きな変容がもたらされたことを検証した。この研究発表では、ケベックを始めとするフランス語圏の文学と日本の文学が互いに影響をもたらし合い、そのトランスナショナルな変容を通して新たな文学的価値と創造性が生み出されたことを明らかにした。なお研究分担者の岩本は、2017年9月の同国際学会にて、シンポジウムにおける招待講演として"Qu'est-ce que la litterature belge ?" と題された研究発表を行い、ベルギーの仏語圏文学における脱周縁的でトランスナショナルな動向をしめす作家や文学概念に注目し、実際のテクスト分析や作家研究を通して、国家/地域/都市レベル、仏・蘭・独の言語横断性、ラテン/ゲルマンを横断する精神性など、ベルギーの<多層的ナショナリズム>の諸相が顕著となっていることを明らかにした。