著者
片岡 栄美
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.15, pp.30-43, 2002-06-01 (Released:2010-04-21)
参考文献数
28
被引用文献数
1

Why is that many sociologists say that the theory of cultural reproduction coined by Bourdieu has no applicability to Japan? I have shown that there is a structural mechanism that conceals cultural reproduction in Japanese society. Most high status men become cultural omnivores who are familiar with both popular culture and high culture, but overall men are not major consumers of high culture. Because the public field is occupied mainly by men, their patterns of cultural consumption are taken to stand for the Japanese pattern as a whole and thus Japanese culture is seen as popular and equalitarian. High culture and its reproduction receives little attention because it is largely concealed in private domains dominated by women.
著者
片岡 栄美
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1-20, 1996-07-01 (Released:2016-08-26)
参考文献数
11
被引用文献数
2

本稿は、多様な文化活動に対する文化評価の根底にある認識図式の集団的・社会学的特徴を解明した。主な知見は、以下のとおりである。(1)文化活動の序列評価は異なる社会集団間で共通性が高いが、階層上の地位が高いほど文化弁別力は大きい。(2)社会階層と文化活動のヒエラルヒーは対応し、階層上の地位か高い集団は文化による差異化戦略を採用している。(3)文化評価の構造を検討すると、階層上の地位は文化評価に影響を与え、各階層成員は自らの所属集団の文化を高く、社会的距離のある階層の文化を低く評価することにより、自らが優位となるような評価分類図式を採用する。すなわち文化弁別力の階層差は、客観的な社会経済的な条件のなかから生み出される階級のハビトゥスとなった文化の知覚分類図式である。(4)世代間地位移動が文化評価に与える効果は男女で異なり、男性には文化同化仮説があてはまるが、女性は結婚による下降移動による影響は受けず、出身階層の文化評価パターンを相続する。
著者
片岡 栄美
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.5-23, 2021-03-31 (Released:2022-04-20)
参考文献数
25

西洋スポーツが、暴力性を排除する形で発展してきたのに対し、なぜ日本の学校の体育部活動では、スポーツ選手は理不尽な体罰や暴力的支配を受容して、部活動に順応し続けるのだろうか。本稿の目的は、ブルデュ―の理論と方法を用いて、日本の体育会系ハビトゥスの特徴を、大学生への混合的手法による調査により明らかにすることである。得られた知見は、以下のとおりである。 自分を体育会系だとアイデンティティ自認する大学生は、全体の41.6%で学生の中の一つの大きなカテゴリーである。体育会系ハビトゥスの特徴は、性役割分業の肯定、勝利至上主義、権威主義への賛成傾向、伝統主義と地位の上昇志向である。 体育部活動経験者の多くが、指導者やシニアメンバーから体罰や過度の制裁をうけて、連帯責任で「理不尽な」経験をする。彼らは体育部活の1年目に「理不尽さ」を多く経験し、それを受容することで、権威に従属するハビトゥスを学習する。しかし年功序列システムにより、2年目以降は先輩としての権力を平等にもつことで、彼らの支配欲は満たされる。権力が年功によって平等に移譲される年功序列システムこそが、「理不尽さと暴力を伴う支配とそれへの服従の文化」をメンバーに伝統的慣習として継承し、体育会系ハビトゥスの再生産に寄与している。 上級生からの理不尽な要求や暴力を受容し、忍耐する理由は、そこに合理的理由として3種類の報酬があるからである。 日本的アスリートの自律性とは、管理と制裁の恐怖の中で育成された自律性であり、西洋的な意味での自己規律的な主体性とは異なる。それゆえスポーツ以外の場では、規範を破り、自律的ではなくなることも多い。スポーツ以外の体験が少ない彼らは、同質的なメンバーとの相互作用に偏り、多様な価値観を知らないまま外的権威への同調的価値を持ちやすい。
著者
片岡 栄美
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.30-44, 2009-04-30 (Released:2010-04-30)
参考文献数
20
被引用文献数
12 7

小・中学受験をめぐる親の教育戦略について,社会階層,社会的閉鎖性,リスク,異質な他者への寛容性,文化資本,社会関係資本の概念を用いて,社会学的に検討した。子をもつ親を母集団とする質問紙調査を,関東圏で層化2段確率比例抽出法により実施し,以下の知見を得た。第1に,受験家庭と非受験家庭の階層差は大きく,受験は階層現象であるが,受験の規定要因は高学歴の母親の影響が最も大きい。第2に,受験を希望する親たちは受験先の学校に文化的同質性を求め,異質なハビトゥスの親とは交流しないという意識と態度を示した。つまり受験は,社会的閉鎖性や異質な他者への非寛容につながる現代の階層閉鎖戦略である。第3に,受験は,親たちが教育リスクを回避するための主体的な学校選択である。第4に,受験を選ぶ親ほど自らの競争的な価値観を再生産し,一方で子どもへの価値期待では寛容性を強調する。第5に,受験組の親は地域ネットワークから切り離され,生活圏が分断化する傾向にある。
著者
片岡 栄美
出版者
日本スポーツとジェンダー学会
雑誌
スポーツとジェンダー研究 (ISSN:13482157)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.49-63, 2019

本研究は,ブルデューの男性支配と象徴権力の理論を用いて,日本の大学生におけるスポーツ嗜好のアイデンティティをもつ学生の価値,態度,文化資本を,量的な調査データに基づき明らかにした.体育会系アイデンティティの保持者は男女ともに,ジェンダー役割意識に関する非民主的価値と男性支配的価値を示した.彼らのコミュニケーション能力は高く,かつ男子体育会系の大半が権力志向でもある.とくに男性の体育会系は権威主義的価値観や伝統重視の価値観をより強く持っている.かれらは政治的な無関心を示す傾向が強く,マスメディアの情報を信頼しており,また一般的他者への信頼も高い.それゆえ,かれらは現在の社会体制を疑うことはあまりなく,社会の問題や社会の矛盾に気がつきにくいナイーブな存在でもある.また体育会系学生の文化資本は,他の学生よりも相対的に低かった.これらの価値態度,いいかえれば,ハビトゥスは近い将来の日本の保守的・非民主的な階層フラクションを体現するものである.
著者
片岡 栄美
出版者
日本スポーツとジェンダー学会
雑誌
スポーツとジェンダー研究 (ISSN:13482157)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.49-63, 2019 (Released:2019-09-06)
参考文献数
25

本研究は,ブルデューの男性支配と象徴権力の理論を用いて,日本の大学生におけるスポーツ嗜好のアイデンティティをもつ学生の価値,態度,文化資本を,量的な調査データに基づき明らかにした. 体育会系アイデンティティの保持者は男女ともに,ジェンダー役割意識に関する非民主的価値と男性支配的価値を示した.彼らのコミュニケーション能力は高く,かつ男子体育会系の大半が権力志向でもある.とくに男性の体育会系は権威主義的価値観や伝統重視の価値観をより強く持っている.かれらは政治的な無関心を示す傾向が強く,マスメディアの情報を信頼しており,また一般的他者への信頼も高い.それゆえ,かれらは現在の社会体制を疑うことはあまりなく,社会の問題や社会の矛盾に気がつきにくいナイーブな存在でもある.また体育会系学生の文化資本は,他の学生よりも相対的に低かった.これらの価値態度,いいかえれば,ハビトゥスは近い将来の日本の保守的・非民主的な階層フラクションを体現するものである.
著者
片岡 栄美
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.30-44, 2009
被引用文献数
7

小・中学受験をめぐる親の教育戦略について,社会階層,社会的閉鎖性,リスク,異質な他者への寛容性,文化資本,社会関係資本の概念を用いて,社会学的に検討した。<br>子をもつ親を母集団とする質問紙調査を,関東圏で層化2段確率比例抽出法により実施し,以下の知見を得た。第1に,受験家庭と非受験家庭の階層差は大きく,受験は階層現象であるが,受験の規定要因は高学歴の母親の影響が最も大きい。第2に,受験を希望する親たちは受験先の学校に文化的同質性を求め,異質なハビトゥスの親とは交流しないという意識と態度を示した。つまり受験は,社会的閉鎖性や異質な他者への非寛容につながる現代の階層閉鎖戦略である。第3に,受験は,親たちが教育リスクを回避するための主体的な学校選択である。第4に,受験を選ぶ親ほど自らの競争的な価値観を再生産し,一方で子どもへの価値期待では寛容性を強調する。第5に,受験組の親は地域ネットワークから切り離され,生活圏が分断化する傾向にある。
著者
片岡 栄美
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.33-55, 1992-04-01 (Released:2009-03-31)
参考文献数
41
被引用文献数
2

本研究では、文化による象徴的な支配のメカニズムが人々の日常生活の階層的リアリティを構成し、階層構造の再生産にとって重要な役割をもつことを解明する。このために文化資本を幼少時の文化的環境(相続文化資本)と現在の文化的活動(文化資本)の2つで測定する。その結果、次の知見を得た。(1) 男女で文化的活動の構造は異なる。(2) 正統文化への関与の意味は、男女で異なる。(3) 文化資本の再生産プロセスが、社会階層の再生産および教育的再生産にとって重要な媒介プロセスとなっている。さらに、LISRELの構造方程式モデルによる男性データを用いて得られた主な知見は、(4) 相続文化資本は、出身階層により差がある。(5) 相続文化資本は、階級のハビトゥスとして、学歴および成人後の「正統」文化的活動を左右する重要な要因である。すなわち家族から幼少時に相続した文化資本の効果は、成人後の文化資本を規定し、ここに文化的再生産メカニズムが存在する。(6) このメカニズムにおいて、教育は上層階層の家庭環境に由来する文化的能力を承認する役割を果たしている。
著者
片岡 栄美 村井 重樹 川崎 賢一 廣瀬 毅士 瀧川 裕貴 磯 直樹
出版者
駒澤大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

日本版の文化の差異化・卓越化(ディスタンクシオン)研究を計画に沿って推進し、平成29年度は以下の成果をえた。(1)次年度予定の本調査の予備調査として大学生調査を実施した。有効サンプルは383票で、首都圏4校と地方大学1校で実施した。音楽、ファッション、スポーツ、メディア、価値観等の各領域で分析した結果、若者の文化実践やテイストの測定方法や仮説設定に関しての知見が得られた。(2)文化実践を方向づけるハビトゥスの複数性・多次元性に関する研究を推進するため、デプス・インタビュー調査を10名に実施した。対象者が大学生の場合と社会人の場合でのインタビューの工夫を行い、実践の多様性とハビトゥスの一貫性および分化について一定の予備的知見が得られた。(3)片岡は過去に実施した調査データの再分析を行い、文化的オムニボアを理論的・実証的に再考する研究を行った。文化実践の多重対応分析(MCA)を行い、文化の差異化が生じやすい文化実践と社会的地位変数との関係性を明らかにした。文化テイストは性と年齢で大きく分化するとともに、学歴や所得の地位変数のほか、子ども時代の文化資本(家庭環境)とも強く関連する。また(4)文化実践を始めるきっかけを「文脈」概念を用いて分析し、文脈効果の時代的変容を明らかにした。これらは日本社会学会で研究発表し、また論文として活字化した。(5)グローバル化による文化の変容と文化政策の関連について、シンガポールを題材に川崎が検討し論文を発表した。(6)ヨーロッパを中心に新しい研究動向・情報を入手し、複数の海外研究者との協力関係を開始した。(7)村井と片岡は食に関する海外研究書の翻訳作業を行った。(8)新しい研究メンバーが3名(連携協力者)加わり研究組織を充実させ、分析方法や研究方法についての検討や学習会を行うことで、次年度の研究計画推進にむけての具体的な準備を進めることができた。
著者
片岡 栄美
出版者
The Kantoh Sociological Society
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.15, pp.30-43, 2002

Why is that many sociologists say that the theory of cultural reproduction coined by Bourdieu has no applicability to Japan? I have shown that there is a structural mechanism that conceals cultural reproduction in Japanese society. Most high status men become cultural omnivores who are familiar with both popular culture and high culture, but overall men are not major consumers of high culture. Because the public field is occupied mainly by men, their patterns of cultural consumption are taken to stand for the Japanese pattern as a whole and thus Japanese culture is seen as popular and equalitarian. High culture and its reproduction receives little attention because it is largely concealed in private domains dominated by women.