著者
今井 一雅
出版者
高知工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

2016年7月に木星に到達したNASAの木星極軌道探査機JUNOと、アメリカにある世界最高レベルの感度を持つ低周波電波望遠鏡LWAを使った木星電波観測により、木星電波の放射機構を解明する上で重要となる電波放射源の位置やそれに関連する電波放射ビーム特性を調べ、3次元的な木星電波放射ビーム構造を明らかにすることを目的としている。LWAの観測データについては、木星電波のダイナミックスペクトラム上に見られる斜めの縞状構造のモジュレーションレーンに着目し、偏波特性を考慮したモジュレーションレーンの傾きの解析を行った。このモジュレーションレーンの測定によって、木星電波源の位置が推定でき、従来から同定されている木星電波源の衛星イオの位置に関連するIo-CとIo-Bについて、起源の異なる電波源の領域があることがわかった。それらを新たにIo-C'とIo-B'を呼ぶことにし、その電波源の領域が、衛星イオを貫く磁力線の根元で最もオーロラ発光強度が高い経度と一致するという重要な情報が得られた。特にIo-Cの領域においては、木星の北磁極側と南磁極側の両側から同時に電波が放射されていることがわかり、複雑な木星電波放射源の様相を明らかにすることができた。また、JUNOで観測された木星電波観測データの解析から、従来の木星電波放射が木星の磁力線に対して角度を持ち磁力線に軸対称に放射されているとするコニカルシート状のビーム構造を支持する結果が出始めている。つまり、JUNOから見た木星電波の緯度方向のビーム構造は、コーン状の一部を見ていることを示しており、電波放射機構を解明する上で、非常に重要な情報を得ることができたことになる。今後、さらに多くのJUNOで観測された木星電波のデータ解析を行うことにより、コニカルシート状のビーム構造が一般的であるかの統計解析も行っていく予定である。
著者
今井 一雅 冨澤 一郎
出版者
高知工業高等専門学校
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

木星からのデカメートル波領域における自然電波放射は、惑星探査機ボイジャーによる直接観測にもかかわらず、その電波放射源の位置は未だにあきらかとなっていない。これは、デカメートル波領域という電波天文学においては極めて長い波長であるために、マイクロ波領域のように簡単にアンテナの指向特性をあげて電波源の位置を測定するという技術が使えないためである。地上観測の場合には、地球の電離層がこのデカメートル波領域の電波に対して非常に大きな影響を与えることになり、さらに状況が悪くなってしまう。一方、今までの観測・研究によると木星デカメートル波放射の右旋円偏波成分と左旋円偏波成分とは、異なった位置の電波源によるものであることがいわれているので、偏波という観点から見たVLBIによる電波源の位置変動の観測は木星電波の放射機構を解明する上で非常に重要である。本研究においては、従来行われなかった右旋・左旋円偏波の独立したVLBIを同時に行うことにより、偏波特性から見た木星デカメートル波放射源の位置変動を観測しようというものである。すなわち、今までに行われてきた木星電波のVLBIは、すべて直線偏波の成分のみを扱っており、得られる情報としては木星電波源の大きさの上限のみであった。ところが、右旋・左旋の両円偏波成分を同時に観測し干渉させれば、両円偏波成分の放射源の位置が同じであれば同じ干渉出力を得ることができるし、もし違えば異なった干渉出力を得ることができるわけである。実際に開発した観測システムにより観測されたデータを解析したところ、右旋・左旋円偏波の電波源の干渉パターンの位相角の差がほとんど同じ観測例を見いだすことができた。これは、右旋・左旋円偏波の電波源は同一の場所であることを示唆しており、非常に貴重な情報を得ることができた。
著者
池田 富士雄
出版者
高知工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

分数階微分(Fractional Calculus)を用いた数理モデルである分数階微分方程式モデル(FCモデルとよぶ)に基づく制御系は、従来の整数階微分方程式モデルに基づく制御系に比べて、本質的に非線形要素に対してロバストであることが理論的に明らかにされつつあり、実験的にもその有効性が確認されている。本研究での目的は、非線形要素の種類を陽に考慮することなく設計することができ、かつ調整も容易な、FCモデルに基づく制御系設計法を提案することである。そして非線形要素の一種であるアンプの飽和や、ギアのバックラッシ、摩擦などに対してFCモデルを適用し、計算機シミュレーションおよび実験的検証により、提案した設計法の有効性を示すことである。昨年に引き続き本年度は、当初の研究計画に従い以下の研究を実施した。1.従来の制御系設計法を拡張することにより、制御対象の非線形系に対して適切なFCモデルに基づく制御器による設計法を提案し、具体的なアルゴリズム、設計手順を開発した。2.製作した実験装置に対して制御実験を行い、さらにより良い性能が得られるためのパラメータの調整等を行い、制御器の改良を進めた。3.学術論文への投稿および掲載(1件)、国際会議等での発表(2件)を行った。
著者
勇 秀憲
出版者
高知工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

地域における良好な景観形成のためには,その地域特性や地域住民の意向に合致した総合的な景観評価法の確立が急務である。特に橋梁景観においては,橋を含む景観の形状と色彩がその景観イメージ・感性に大きな影響を及ぼす。本研究は,橋梁景観の形状特性と色彩特性を相互に考慮し,橋梁新設・改修時や再塗装時などでの色彩評価・選定のための合理的で定量的な工学指標を含む景観評価法・設計法の確立を目標とするものである。平成25年度は,平成24年度に提案した橋梁景観を構成する背景と橋梁の形状に着目した橋梁景観評価法に関し,背景を含む橋梁景観のカラー画像・白黒画像および背景を取り除いた橋梁のみの白黒画像の3種類の画像を対象に,それぞれSDアンケート調査と因子分析の結果から,色彩の有無と背景の有無によるイメージの変化を多変量解析により定量的に調べた。因子分析とクラスター分析を用いてイメージの変化の分類を行い,数量化II類を用いてイメージの変化の分類と景観属性(構造形式,架設場所など)との相互関連性を調べた。色彩の有無や背景の有無によるイメージの変化は,ともにその景観要素(構造形式,架設場所など)に依存することが示された。また,平成23・24年度の研究で提案した色彩評価法の適用事例として,主な世界の絶景風景を対象に,それらの「美しさ」のイメージの分析を実施した。SDアンケートを実施し因子分析から,イメージ特性,主色彩および地域との相互関係を評価し,本色彩評価法の妥当性を示した。なお,主色彩は本経費によるカラーイメージ分析ソフトウェアと色彩色差計により測色し定量化した。本研究提案の色彩評価法,カラーイメージ評価法およびフラクタル解析を連携させることで,本研究を基にして,各種景観に対し色彩特性と形状特性を総合的に配慮できる新しい定量的な景観設計システムの構築を目指すことがきるものと考える。
著者
谷澤 俊弘 増田 直紀
出版者
高知工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

次数による選択的ノード除去に対する強相関複雑ネットワーク上のパーコレーション転移を記述する解析的表式を導出し,その表式を用いてスケール・フリー・ネットワークの選択的ノード除去に対する脆弱性を著しく改善するネットワーク構造を見つけることができた。この構造はほぼ同じ次数を持つノード同士が結合し,さらにそれらの同次数ネットワークがゆるやかに相互結合するという独特な階層構造を持っている。その他にも,囚人のジレンマゲームにおいて協力者同士が形成するクラスターがパーコレーション転移を起こすことなどを含む有益な結果を数多く得ることができた。
著者
上田 真也
出版者
高知工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

○研究目的:近年フィジカル・コンピューティング、パーソナルファブリケーションなど、ユーザー主導型のイノベーションが起こりはじめている。しかし、これらの実現にはあらゆる言語や環境に対するライブラリが提供されているわけではなく、相互に連携し日常生活のあらゆるモノや空間に遍く入り込みサービスを提供するユビキタス環境ではそれに適したハードウェア・ソフトウェア開発が必要である。早い段階で実際に動作するプロトタイプを素早く製作-評価するサイクルを繰り返して行うことは、高専学生においても、万能なモノづくりに効果的であり、本研究では次の時代を担う高専学生が自ら様々なセンサを有するコンピューティング演習を通じ、創造の自由度を向上させることで世界の広がりや楽しさにつなげることを目的としている。○研究方法:1.フィジカル・コンピューティング用教材の試作マイクロコントローラArduino+ライブラリと18種類のセンサ、3種類のLED、2種類のモータなどのモジュール群を使用し、ActionScript3/Processingを組み合わせ、ブレッドボード上での演習、また安価で簡単に扱える評価ボードの試作・マニュアルの準備、電子情報工学系以外の学生でも容易にデバイスのデザインを行える環境の整備を行った。2.オープンソースハードウェアのための手軽なミドルウェア開発マイクロソフトの.NET Micro Frameworkでプログラミング可能なマイクロコントローラNetduinoとWebブラウザープラグインSilverlightのOut-Of-Browser(OOB)で動作するサンプルアプリケーションを試作し、手軽に扱うことができるミドルウェアの開発・親和性を向上させる手法について評価検討を行った。○研究成果:高専学生が自ら様々なセンサ等に触れることで、実物があるコンピューティング演習に興味を持たせることができ、自由な発想で新たなモノづくりへの期待や楽しさを向上させることができた。IEEE802.15.4を用いたワイヤレス・データ通信は特に興味を引き、楽しく取り組めたようである。専攻科・高学年生用に応用例として総務省SCOPE(戦略的情報通信研究開発推進制度)で開発製作されたマイコンボードと連携させ、複数の計測モジュールとして教材を活用して開発に参加し、実用テストを開始することができた。