著者
大重 康雄
出版者
鹿児島女子短期大学
雑誌
鹿児島女子短期大学紀要 = Bulletin of Kagoshima Women's College (ISSN:02868970)
巻号頁・発行日
no.50, pp.27-37, 2015

第22回 APEC (アジア太平洋経済協力) 首脳宣言で 「北京アジェンダ」 を採択し 「アジア太平洋自由貿易圏 (Free Trade Area of the Asia-Pacific:FTAAP) 実現に向けたロードマップが示された. 同時に環太平洋パートナーシップ協定 (TPP:Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement) や東アジア地域包括的経済連携 (RCEP:Regional Comprehensive Economic Partnership) などの広域型の FTA/EPA が重層的に交渉を開始しておりメガ FTA の時代を迎えている. これまで日本の農水産物輸出は極めて少なく, 大幅な輸入超過となっていた. しかし FTA/EPA 交渉が加速している現状, 農林水産業も 「産業内貿易」 としての可能性を見直しグローバル・バリュー・チェーン構築するなどメガ FTA を活用した積極的な取組が望まれる. 鹿児島県は第1次産業に特化した県であるが, 豊富な食品素材の付加価値高めないままに市場に供給している現状がある. 現在取り組まれている畜産品輸出の状況や, 水産物輸出に関した先進的事業にも触れ産業の付加価値とは何かを考察し, 今後の鹿児島県産農水産物輸出の方向性について考察する.
著者
住澤 知之
出版者
鹿児島女子短期大学
雑誌
鹿児島女子短期大学紀要 (ISSN:02868970)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.1-4, 2018-02-28

In our previous report, it was suggested the daily ingestion of dried-bonito broth might increase the human serum adiponectin levels. Anserine(β-alanyl-3-methyl-L-histidine), which is water-soluble antioxidant, is present at high concentration in the muscle of migratory fish such as bonito. Therefore, we investigated whether anserine is involved in the increase of blood adiponectin. The measured amount of anserine in the dried-bonito broth ingested at one time was 12.0 mg and 12.9 mg. Fourteen healthy female subjects ingested a commercially available health food supplement of a fish peptide mixture containing 10% of anserine for 2 months. The amount of anserine taken at one time was 20 mg. Measurement of serum adiponectin concentration was performed before and after the ingestion periods. Although the amount of ingested anserine was larger than that of intake of dried-bonito broth, no significant secretion enhancement of adiponectin was observed. Therefore, anserine may not be involved in increasing adiponectin levels in human serum.
著者
高島 まり子
出版者
鹿児島女子短期大学
雑誌
鹿児島女子短期大学紀要 = BULLETIN OF KAGOSHIMA WOMEN'S COLLEGE (ISSN:02868970)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.85-95, 2014

英雄の死と再生を描く太陽神話縮図の下半円を C.G. ユングは 「夜の航海」 1 (night sea journey) と呼び, 自我が無意識の深みに下降し, 死を経た後に無意識から新たな心的エネルギーを供給されて意識面に再生するまでの精神的再生過程を象徴する元型と考えた. この過程は意識と無意識の統合を目指し, 様々なイニシエーションに死と再生の儀式として組込まれてもいる. 筆者は1850年刊行のナサニエル・ホーソーン作 『緋文字』 にこの元型的過程を見出したが 2, 時空を超えた2000年のデンマーク映画 『ダンサー・イン・ザ・ダーク』 3 にそれを見出し, その意味と 『緋文字』 との関連性を同年に論じた 4 (以後, これを拙論<Ⅰ>と記す.). ところが, 2001年に公開されて当時の我が国の映画史上最高の2,340万人もの観客動員を記録し, 2002年ベルリン国際映画祭最高賞の 「金熊賞」 と2003年米国アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞した宮崎駿監督作品 『千と千尋の神隠し』 (以下, 『千尋』 と表記する) が, 全編これ 「夜の航海」 と言ってもよい内容であることは, 日本を舞台に日本人を描いた作品であるだけに一層嬉しい発見であった. あらすじを述べ, 『緋文字』 と比較しつつヒロインの 「夜の航海」 をり, ホーソーン的な意識と無意識の統合過程が現代の我々にとって持つ意味を再考してみたい.
著者
内田 豊海
出版者
鹿児島女子短期大学
雑誌
鹿児島女子短期大学紀要 = Bulletin of Kagoshima Women's College (ISSN:02868970)
巻号頁・発行日
no.50, pp.19-26, 2015

本研究は, 国際教育開発において, 理念と実状の乖離を見ようと試みたものである. リテラシーは教育開発における重要な理念として, 様々な議論を通し発展してきた概念である. 一方, その指標となる識字率は, 数値化すべく, 学歴の有無で判断するというように単純化されている. そこで本研究では, 基礎教育無償化により, 就学率が飛躍的に上昇したマラウイ共和国において, 理念的概念としてのリテラシーを, 生徒がどこまで習得しているかを把握すべく, インタビュー調査を開発・実施した. その結果, 生徒は文章を読み書きすることはできるものの, その内容を理解するに至っていない場合が多く見受けられた. 生徒の身につけたリテラシー能力は, 表面的なものであり, 求められている理念的なものとは大きく乖離している現状が浮き彫りになった. より実態に見合った理念の再構築, および教育の質向上による乖離の解消を再考することが求められよう.
著者
竹原 小菊 福司山 エツ子 木戸 めぐみ 山崎 歌織 外西 壽鶴子 進藤 智子 徳田 和子
出版者
鹿児島女子短期大学
雑誌
鹿児島女子短期大学紀要 (ISSN:02868970)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.7-25, 2008

平成15・16年度日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学-魚介類の調理」の一環で,漁港を有し漁業が盛んな地域,農村米作地域及び都市部の中から9地域100人を対象に,各地域で食べられている魚介類の種類とその調理方法等を,アンケートと聞き取り調査によって調べたので報告する.魚の使用種類は,ほとんどの地域であじがトップを占めていたが,枕崎市はかつお,種子島の西之表市はきびなご,とびうお,鹿屋市はかんぱちであった.海に囲まれた甑島の里村では,極端に魚種が少なく,調理方法も単純であった.調理方法は,なま物(刺身)がトップを占め,次いで焼き物(塩焼き),煮物(鍋物を含む),揚げ物(フライ,てんぷら)がどの地域にも多くみられた.枕崎市には「かつおのびんた料理(頭の塩煮)」等かつおをすべて無駄なく創意工夫した多くの料理がある.また,きびなごはあご,さばに次いでよく食べられており,「きびなごときらす(おから)のおっけ」は普及したい伝承料理の一品である.さらに,豊富にとれる魚(とびうお,小あじ,いわし等)を使用し,風土に適する保存料理として考案されたつけ揚げ(さつま揚げ)など多くの魚介類料理がある.
著者
竹原 小菊 純浦 めぐみ 福司山 エツ子 児玉 むつみ 佐藤 昭人
出版者
鹿児島女子短期大学
雑誌
鹿児島女子短期大学紀要 (ISSN:02868970)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.7-26, 2009

児童生徒や保護者の食に関する実態や意識などの現状を把握し, 家庭, 学校における今後の食育推進のあり方を考察するための基礎資料を得ることを目的に調査した.今回は「朝孤食」と「朝共食」の食習慣, 健康状態等との比較を行った. 「朝孤食」は「朝食を一人で食べる」, 「朝共食」は『朝食を「家族全員」と「大人もいるが全員ではない」と「子どもだけ」』の該当者を全て加えた. 今回の調査では, 孤食を避け, 誰かと共に食卓を囲むこと「子どもだけで食べる」でも心身の健康には十分効果があることが推察でき, 一般的には「子どもだけで食べる」は孤食に分類1)されるが本調査では『共食』に値すると判断しこのような群に分け検討した.正しい食習慣の育成や食文化の伝承などは, 大人と一緒に食べる『共食』に期待したい.児童生徒の「朝孤食」の割合は, 小学生9.1%, 中学生25.7%と差がみられ, 朝食の共食状況と心身の不調との関係では, 「朝孤食」は「朝共食」に比べ「身体がだるい」, 「目覚めが悪い」, 「イライラする」等の順で割合が高かった. 今回の調査で, 「朝孤食」は就寝時刻が遅いことで, 夜食の摂取が多くなり, 朝食の欠食につながり, 身体の不調に現れていることが推察できた.また, 保護者の食意識では, 「一人で食べさせない」と回答したのは, 「朝共食」の児童生徒の保護者60.2%に比べ「朝孤食」のそれは36.5%と親の意識に大きな差がみられた.今回の調査で「朝孤食」の健康に及ぼす影響や食習慣上の問題点が明らかになり, 「朝共食」が心身の健康にとって好ましいことが分かった.