著者
石川 健
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.1-15,75, 2003

本稿では,体制転換後ロシアの電力・石油・ガス部門において進行している生産減と雇用増の同時進行がなぜ可能なのかについて,公式統計と簡単な推計結果を利用しつつ検討し,これらの部門が雇用増を可能とする特殊な条件(費用構造と収益性)を備えていることと,体制転換後に固有の賃金未払いが同部門で大規模に見られるということもこれと関係する要因であることを示す。
著者
薛 進軍
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会会報 (ISSN:18839797)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.83-90, 1998
被引用文献数
1

中国とアメリカとは、1979年以来経済交流や貿易通商など、両国の経済関係が緊密になり、国際貿易関係は十数年間順調であったが、90年代に入って、貿易摩擦が頻繁に発生するようになった。この問題の一部は貿易統計システムの相違により生じている。つまり、(1)米、日諸国は原産地別で貿易額を集計しているが、中国は消費国別で輸出を集計している。そのため、第三国経由の再輸出入が第三国を最終仕向国として集計されている。(2)東アジアの貿易構造の変換によって、対米貿易黒字の原因であった輸出製品の生産拠点は香港・台湾から中国大陸へ移転したので、対米黒字の大部分が中国に転嫁された。(3)第三国経由時生じた貿易の付加価値は中国側は計上してないが、米国側はこれを中国に計上している。(4)中国がFOBとCIF価格で計上している輸出入金額は米国、日本の計上金額とは差がある。この問題の解消には、中国が世界通商の共通ルールと統計のシステムに慣れることが緊急的な課題であり、先進国からの協力も必要と思われる。しかし、貿易統計を整合させれば、米国が中国の第一貿易相手国になるので、中米、中日、中国大陸と香港間の経済・貿易関係の重要性の一層の再認識が必要となると思われる。
著者
大田 英明
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.59-66, 2010

2008年秋の金融危機以降,EU に新たに加盟した欧州移行諸国は,直接投資および資金流入の激減と急速な資本流出によって打撃を受けている。こうした中,IMF による通貨制度設計、経済調査・分析能力,さらに従来の緊縮プログラムを緊急時の政策として適用することが問題点としてあらわれている。EU 新加盟国は通貨制度,自由化の見直し,資本取引の監視・監督体制の強化をEMU参加の前に再検討する必要がある。
著者
日臺 健雄
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1_19-1_31, 2015

近年,ロシアや中国など新興国の経済発展を「国家資本主義」概念を用いて分析する研究が増加しているが,そこでは理論的な検討が不十分なままに当該概念が用いられる傾向にある.本稿では「国家資本主義」概念について,経済理論として初めて用いたヒルファディングから,革命後のロシアに適用したレーニンを経て,発展途上国に適用した日本の「国家資本主義論」学派に至る理論的な系譜を,学説史的な観点から概観していく.