著者
今井 信也 小川 俊夫 赤羽 学 今村 知明
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.141-149, 2014 (Released:2016-04-20)
参考文献数
12

磁気共鳴画像装置(MRI)は今日の画像診断において欠かすことのできない検査機器であるが,その採算性についてはMRIの性能や利用頻度,また周辺地域の導入状況に影響されると考えられる.そこで本稿では平成23年度に一般病院で稼働しているMRIの一台あたり年間収支差を年間費用と収入より試算し,MRI導入の採算性を性能別,病床規模別,都道府県別に分析を行った.MRIの年間収支差は,1.5テスラ以上では病床規模別,都道府県別においてばらつきはあるものの,ほぼすべて黒字であったが,1.5テスラ未満ではほぼすべて赤字であった.MRI導入による採算性の要因としては,病床規模での各種加算の取得割合の違いや,地域でのMRI一台あたりの人口および医師数が大きく関係していた.病院経営の視点から,高性能なMRIは病床規模や地域性に関わらず導入を検討できうる医療機器であると考えるが,採算面だけでなく臨床的な必要性や間接的な収支を考慮するべきである.
著者
小川 俊夫 大出 直高
出版者
一般社団法人 日本接着学会
雑誌
日本接着学会誌 (ISSN:09164812)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.225-229, 2007-06-01 (Released:2015-04-30)
参考文献数
9

漆は接着剤や塗料としての機能を有していて,しかも抗菌性があると言われているがこれについて詳細な研究例はない。そこで漆膜について大腸菌群を使って抗菌性を調べた。また漆器関連物質として数種のプラスチックおよび22種の木材について抗菌性を調べた。その結果漆膜,フェノール樹脂およびヒノキ類に抗菌性が認められた。これら材料に共通している分子構造はフェノール性の水酸基を有することであり,抗菌性は水酸基に起因すると結論した。
著者
大澤 敏 城殿 威生 小川 俊夫 附木 貴行
出版者
MATERIALS LIFE SOCIETY, JAPAN
雑誌
マテリアルライフ学会誌 (ISSN:13460633)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.73-78, 2001-04-30 (Released:2011-04-19)
参考文献数
13
被引用文献数
1

生分解性プラスチックであるポリ乳酸は, 高い力学的性質と透明性を兼ね備えており, 近年農業用シートなど屋外での用途が期待されている.実用的な視点から見ると使用中の耐候性の評価や分解予測が必要である.本研究では, ポリ乳酸 (PLA) フィルムを屋外暴露試験し, 試料の破断強度に与える日照量 (光分解) と降水量 (加水分解) の影響を重回帰分析した.その結果, 破断強度は, 降水量Wと加水分解の反応速度定数kを掛け合わせた変数雁7と, 日照時間Uと光分解の反応速度定数k'を掛け合わせた変数k'Uの関数で表すことができた.また, PLAの分解に及ぼす影響を重回帰式の標準偏回帰係数で比較したところ加水分解と光分解で約2: 3であり, 光分解の影響がかなり大きいことが明らかになった.またこの結果は実験室内で加水分解速度と光分解速度を別々に測定した結果と一致した.
著者
小川 俊夫
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.71-76, 1990-02-20 (Released:2012-11-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

中国産の生漆から透ろいろ漆, 透つや漆, 黒ろいろ漆及び黒つや漆の4種の漆を製漆し, 漆膜を作成した。これらについて熱機械分析, 熱重量分析及び示差走査熱量分析を行った。その結果, 120℃以下においては数パーセントの重量減少とともに吸熱現象が認められたが, これは漆中の残存水分によるものであった。また100~200℃では, 逆に発熱現象が認められると同時に線膨張係数の低下を示すことから, 網目構造の形成が行われていると考えられる。なお, 上記4種の漆の間には熱的に本質的な差異は認められなかったが, 透漆の方が黒漆よりも若干低温側から収縮現象が始まることが認められた。
著者
大澤 敏 馬塲 浩彰 小川 俊夫
出版者
マテリアルライフ学会
雑誌
マテリアルライフ学会誌 (ISSN:13460633)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.191-197, 2002-10-31
参考文献数
17

近年, 生分解性プラスチックを生ゴミなどと共に堆肥化 (コンポスト化) する試みが盛んに行われている.本研究では, 一般家庭に普及しつつある家庭用生ゴミ処理機で熟成した生ゴミ中に, ポリ乳酸 (PLA), ポリカプロラクトン (PCL), ポリブチレンサクシネート・アジペート (PBSA) を投入し, 生ゴミと共にコンポスト化処理が可能であるかどうか調べた.強度低下で評価した分解性はPLA>PCL≅PBSAであった.PLAは10日程度で強度がゼロになる形状崩壊を起こしたが, PCLとPBSAは40日以上の時間を要した.また, 分解性は生ゴミの組成に大きく依存し, 動物性と植物性の生ゴミが共存した場合に最も速く分解した.水分率も分解性に影響を与えた.処理機内の水分率を60%から70%に高めることにより生ゴミの分解性を損なうことなく生分解性プラスチックの分解を促進することができた.
著者
大澤 敏 西川 武志 小川 俊夫
出版者
MATERIALS LIFE SOCIETY, JAPAN
雑誌
マテリアルライフ (ISSN:09153594)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.118-123, 1999-07-30
被引用文献数
1

生分解性プラスチックの分解速度はその構造とそれが置かれた微生物環境によって決まるが, 後者を制御することは微生物の多様性から困難であるとされている. しかしながら, プラスチックを含む有機廃棄物処理の観点から見ると使用後は速やかに分解する微生物環境を人為的に管理する必要性がある. そこで本研究では, 従来から有機農法において用いられている, 安定な循環サイクルを有する有用微生物 (EM) 群を生分解性プラスチック (L-ポリ乳酸) の置かれた有機廃棄物中に添加してその分解促進効果について調べた. その結果, 36℃でEM菌群をコンポスト中に添加した場合にL-ポリ乳酸の分解が約40%促進されることがわかった. また, コンポスト中での分解は非晶相から進行するが50℃でEM菌群を添加した場合には, 結晶相でも速やかな分解が起こることが明らかになった.
著者
大澤 敏 西川 武志 小川 俊夫
出版者
MATERIALS LIFE SOCIETY, JAPAN
雑誌
マテリアルライフ (ISSN:09153594)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.118-123, 1999-07-30 (Released:2011-04-19)
参考文献数
17

生分解性プラスチックの分解速度はその構造とそれが置かれた微生物環境によって決まるが, 後者を制御することは微生物の多様性から困難であるとされている. しかしながら, プラスチックを含む有機廃棄物処理の観点から見ると使用後は速やかに分解する微生物環境を人為的に管理する必要性がある. そこで本研究では, 従来から有機農法において用いられている, 安定な循環サイクルを有する有用微生物 (EM) 群を生分解性プラスチック (L-ポリ乳酸) の置かれた有機廃棄物中に添加してその分解促進効果について調べた. その結果, 36℃でEM菌群をコンポスト中に添加した場合にL-ポリ乳酸の分解が約40%促進されることがわかった. また, コンポスト中での分解は非晶相から進行するが50℃でEM菌群を添加した場合には, 結晶相でも速やかな分解が起こることが明らかになった.
著者
川島 哲哉 杉本 俊彦 小川 俊夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.835-841, 2000-11-05
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

高温高湿環境下でニトリルゴム(NBR)/エポキシ樹脂系接着剤の加速寿命試験を行い, 接着剤の劣化について検討した. その結果, 接着剤のガラス転移温度(T_g)の低下や透過型電子顕微鏡(TEM)観察下におけるNBRへのオスミウム酸の染色能の低下が認められ, 接着剤の劣化はミクロ相分離構造を形成しているNBRの劣化に起因することが判明した. NBRの劣化としては主に酸化反応による炭素-炭素二重結合部の切断であるが, そのほかにニトリル基やNBR中に変性されたアクリル酸とエポキシ基との反応でできたエステル基の減少も確認された. また, NBR中の酸化防止剤が接着剤の硬化を目的とする加熱処理過程で気化してしまうことにより, この劣化は更に加速されていることが分かった.