著者
長野 康之
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2031, (Released:2022-04-15)
参考文献数
99

環境省「ライチョウ保護増殖事業実施計画」の一環として実施されている中央アルプスへのライチョウ移植事業について、北米での先行事例をもとに作成されたライチョウ移植プロトコルと、 IUCN(国際自然保護連合)が発行する生物の移植のためのガイドラインに基づいて比較検討した。その結果、中央アルプスへの移植事業は北米のプロトコルや IUCNガイドラインが推奨する内容と重要な点において合致していなかった。移植先である生息地の事前評価が重要とされている中、捕食が原因で絶滅したとされる移植先の中央アルプス木曽駒ヶ岳において、事前に捕食者の現状を把握するなどの生息地評価は行われず、結果として導入後 1ヶ月のヒナの死亡率は 100%であった。また、ライチョウが属するキジ目鳥類では死亡率が高いためにヒナの移植は推奨されないが、 2019年には卵が、 2020年にはヒナが主として移植されていた。さらにできるだけ多くの個体(成鳥ペア)を移植するのが望ましいとされているが、 2019年に 6卵(移植失敗)、2020年には 8卵(移植失敗)のほか成鳥メス 3羽とヒナ 16羽の計 19羽の放鳥にとどまった。このほかライチョウの生息域内保全に関する調査や事業に関しても、日本全体のライチョウの個体数推定が不確かであること、生息域全体の生息環境の把握が不十分であること等の課題が見られ、合理的な保全策を計画するための調査になっていなかった。今後のライチョウ保全のために有効だと思われる方策について、北米のプロトコルや IUCNガイドラインが推奨する内容に沿って提言した。

言及状況

外部データベース (DOI)

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中央アルプスにおけるライチョウ移植事業の課題:北米のライチョウ移植プロトコルおよび IUCNガイドラインとの比較 (長野康之/新潟ライチョウ研究会、 NPO法人新潟ワイルドライフリサーチ) https://t.co/BMo8e8TVhX
【参考】 IUCNの保全的移植ガイドライン(pdf直リンク注意) https://t.co/yfElD4smZJ 参考文献 https://t.co/WmrvyAZxIW
>これらは生息域外個体群を活用しないため、本文書で扱う野生復帰の範囲に入らない。」としている(環境省 2011)。 https://t.co/GQ0G16jctC
@zarigani03 そこではすでに共生するなんとかの案が出てきています。「実現可能性を検討する」と書いておきながらずいぶん急だな、という印象です。 こういう突然ぐいーっとアクセルが踏まれるような事例は、ここ最近でも中央あるp( https://t.co/WmrvyBgAKW
先のこれを読む限り、実にいい加減というか程度の低い「事業」をやってきたのだなとしか言い様がないし、絶滅したはずの個体群がこの規模で今頃みつかるとか、ほんとお前ら何やってんの以外に言葉がないわ。 https://t.co/CmUy7WZJJ0
中央アルプスへの移植計画って、当該エリアでの絶滅が前提じゃなかったの? なんか雑な事してるような印象はあったのだけど。 https://t.co/CmUy7WZJJ0 中央アルプスのニホンライチョウ 40羽程度が生息 環境省|NHK 長野県のニュース https://t.co/f3Na5dQaYG
で、そのガイドラインや個別の種に対するプロトコルとの整合の問題はこないだのライチョウの論文「中央アルプスにおけるライチョウ移植事業の課題」でも指摘されていたところ。なんもかんもガバガバ過ぎるんよ。 https://t.co/XhZOz24gnB
友人の長野さんが現在のライチョウの保全活動について論文を書いております。とても大事な指摘が詰まっています。環境省が実施する中央アルプスへのライチョウ移植事業について、偏見なき眼で見ていただき、その是非を判断していただきたいたいと思います。https://t.co/1H6ks5zYtd
@EEEshimaenaga 南アルプスでのライチョウ保護の話でしたら、飼育が難しいと言うより、過去にライチョウの保護が上手くいったノウハウを生かし切れていない、という批判もあるようですね… https://t.co/vW54OzH1iu
中央アルプスにおけるライチョウ移植事業の課題:北米のライチョウ移植プロトコルおよび IUCNガイドラインとの比較。長野 2022 (日本語論文、オープンアクセス) https://t.co/ndKYa2To6S 中央アルプスへの移植の際、北米のプロトコルやIUCNガイドラインに沿っていない点があったようです。#論文紹介

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