著者
松崎 かさね
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.387-406, 2022-12-31 (Released:2023-04-21)
参考文献数
38
被引用文献数
1

本稿が取り上げるのは、パチプロ(パチンコ・パチスロで生計を立てる人)として約20年間生活してきた経験を持つAの語りである。彼は、プレーで最も重要なことは「期待値の積み上げ」であると語った。これは、期待値が高い台で繰り返しプレーすることであり、当時の彼はプロの中で一番になることを目指し、この実践に日々励んでいたという。けれども一方で、彼はこの実践を適度に抑えることのできる人間こそレベルの高いプロであるとも語った。本稿の目的は、この一見相反する事柄——「期待値を積み上げる」こととそれを抑えること——がなぜAにおいてどちらも重視されるのかを考察することである。彼によれば、「期待値の積み上げ」で重要なのは、その都度のゲームの結果よりも、期待値を根拠に打ち続けるプロセスの方であり、この実践によって長期的には収支がプラスに上向いていくという。さらに、彼は店や他の客に配慮してその日の稼ぎを適度に抑えることが、プロを長く続けるうえで重要なことであるとも語った。つまり、その場の利益という、賭けにおいてつい注目しがちなものから一旦視点を「はずし」、長期的な見方へと転換することが彼の思考の要諦だったのである。これを踏まえて本稿は、「期待値の積み上げ」を抑えることはその積み上げを至上とするプロに相応しいプレーであったことを提示する。

言及状況

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"彼にとってパチプロとは数ある職業の中の1つではなく、社会の既成ルートからはずれた「別の道」という構図において位置づけられるものであった。" これたぶん「ロマン」ってやつ。
ほんとに上手い人は手加減できる、って話やな…/細く長く稼ぐため目立たずにいる、店や周囲に迷惑をかけないみたいなの
[パチンコ・パチスロ][あとで読む]
エスノグラフィかな
[文化][人][ネタ] 「文化人類学」の論文。パチプロA氏の語り。
面白いけど全部本人の証言のみなので本当に勝っているかどうかがわからない
麻雀漫画だとたまにいるよね。毎月の収支をプラス25万くらいにコントロールしてて一見強そうに見えないキャラ
根こそぎフランケンの初期のころの竹井もありなのね https://bit.ly/3pWsXmu 竹井は「Let's Go なまけもの」でまた修羅場に戻ってきています。 https://bit.ly/48L3Pji
[oooooo] 何かこのネタで一作漫画や小説書けそうだな(できるとは言っていない)
[論文][パチンコ・パチスロ] パチプロAの「期待値を積み上げる」プレーの論理“結果を気にするやつは勝てない~「期待値を積み上げる」という「プロセス」~収束なんかしねえから~スマートに稼ぐ~なりふり構わず期待値を積むような「下品」”
[論文][work][色川武大] 「それだけだと終わっちゃうんだよ。勝って終わっちゃうんだよ。勝ったら終わっちゃうんだよ。それじゃだめじゃん」

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“「勝ちゃあいいってわけじゃない」” https://t.co/QKG4WixfG3 「勝ちゃあいいってわけじゃない」 パチプロAの「期待値を積み上げる」プレーの論理 松崎 かさね
“「勝ちゃあいいってわけじゃない」” https://t.co/PShn5vUVC5
学問的な観点からこの論文がどうなのかはわからないけど、パチスロプロの生活史的として読んで面白かった https://t.co/m2m7nUVoUb
PDFあり。 「本稿が取り上げるのは、パチプロ(パチンコ・パチスロで生計を立てる人)として約20年間生活してきた経験を持つAの語りである」 ⇒松崎かさね 「「勝ちゃあいいってわけじゃない」 パチプロAの「期待値を積み上げる」プレーの論理」 『文化人類学』87巻3号 (2022) https://t.co/kAbuzve21b
松崎かさね「「勝ちゃあいいってわけじゃない」ーパチプロAの「期待値を積み上げる」プレーの論理」『文化人類学』87 巻 3 号、2022年12月。/https://t.co/p5T9zIOzHq
松崎 かさね(2022)「「勝ちゃあいいってわけじゃない」:パチプロAの「期待値を積み上げる」プレーの論理」文化人類学 87 (3), 387-406. https://t.co/rKhYOuaXdD 論文タイトルの引きが強すぎる

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